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GROOVE X 林要ロングインタビュー

ギリギリを見極め実現するのがスタートアップ——林要が語る起業家の責任

ソフトバンクでのPepperの開発を経て、情緒に訴えるロボットの必要性に気づいたというGROOVE Xの林要さん。インタビューの前半では開発の経緯や「イノベーションのジレンマ」を超えて、さまざまな企業とタッグを組んで、今までにないロボットを生み出そうとする現状をお話しいただいた。後半では起業家として、メンバーのマネジメントやハードウェアスタートアップに必要な人材から資金調達方法まで伺った。

前編はこちらから

Stay hungry. Stay foolish.でもStay richにはならない

——現在、外部のパートナーも含め20人近いメンバーで開発しているそうですね。失敗できない教育を受けてきたにも関わらず何かしらの可能性を感じて、GROOVE Xの門を叩いていると

どの時代でもマジョリティではなく、エッジにいたいと思う人はいますよね。大企業の優秀な人がベンチャーに来たら給料なんてだいぶ減ってしまう。それでもなぜ来るかといえば「面白そうだから」に尽きます。

スティーブ・ジョブズが言った“Stay hungry. Stay foolish.”というのは、そういうことなんだと思います。彼は決して“Stay rich“とは言わないわけです。
彼はApple IIで偶発的に大金持ちになったと僕は思っていますが、そういうアクシデンタルビリオネアと呼ばれる金持ちの大半がそのまま駄目になる。でも、彼は“Stay rich“にこだわらなかった。Apple III、Lisa、Macintosh 128Kと、Apple II以降はことごとく商業的に失敗して、会社を追い出された後もNeXTで商業的に失敗して、延々と資産と名声をすり減らしながら、それでも自分のアイデアと世の中の接点のギリギリのところを模索し続けた。やらなきゃ安全なのに、あえて名声を傷つけ、お金も減らし、それでも人と違う経験をし続けてチャレンジしてきた。まさに大金を投じて“Stay hungry. Stay foolish.”を続けた。
最終的にはiMacが出たことで再び成功できましたが、それまでの間、彼は現実と自分の想像力のギャップを埋めるトライをし続けたんだと思うんです。

大企業で働く人たちの中にも、弊社のプロジェクトにすごく期待を持っていて自らとても(GROOVE Xに)来たいと考えているのに、なぜか転職に踏み出せない人たちがいます。彼らには自分でも飛び出せない理由が分からないんです。

大企業は水が合えば最高ですけど、水が合わないと、どこかずっと疑問を持ちながら仕事を続けて、しかも、そういう疑問を持ちながら20年とか30年とか務めた先輩がどうなるか、だいたいみんな見えているわけです。だから、その違和感に対する鋭敏なセンスを持っている人たちは、やっぱり弊社のようなスタートアップに魅力を感じるんですよね。だけど、飛び出して来られないんです。

だって、学生時代も受験でも社会人になってからもずっと、ひたすら失敗しないようにと言われて、危ないことリストを浴びて成長してきた人にとって、脳はリスクを避けるようにトレーニングされてしまっている。今さらそんな、「やってみ」って言われて、理屈ではやりたいと思っても、それに適応できるだけの大脳辺縁系を持っていないので、怖くて動けなくなってしまうんです。意識ではやりたいと思っても、実際に行動に移そうとしたときに大脳辺縁系が全力で止めに入るので、実際の意思決定にたどり着かないわけです。

だからこそ、僕は大企業から飛び出して来れる人というのは、かなりすごいと思っています。弊社にもそういう人がいますが、例外なく優秀です。大企業に勤める=イノベーションできない、じゃなくて、普通は飛び出すようなチャレンジができない大脳辺縁系を育ててしまったので、結果としてイノベーションもできない、ということだと思っています。逆に言えば、「面白そうだから」という感覚を信じて飛び出せるチャレンジャーは、その性質ゆえに得られる経験が豊富で、結果的に優秀に育つんだと思うんです。

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