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位置情報×IoTの最前線

“落し物の専門家”が作った世界最小クラスの紛失物追跡タグ——MAMORIO

最適なタイミングで通知するための自動調整機能

MAMORIOのサービスにおいて、BLEタグと並んで重要なのがスマートフォンアプリである。MAMORIOアプリの機能は大きく2つに分けられる。1つはBLEタグがスマートフォンから離れた場合に通知する機能、そしてもう1つが、紛失したタグが発する電波を他のスマートフォンユーザーが受信した際に、その位置情報を持ち主のアプリに通知する「クラウドトラッキング」機能だ。アプリの開発にあたっては、どのような点に苦労したのだろうか。

「Bluetooth関連のアプリ開発は、まだ事例が少ないこともあり、手探りの状態です。特に電池の消費を抑えながらBluetoothを動作させるのは難易度が高く、例えば感度をよくしてタグを置き忘れたときに正確に通知しようとすればするほど電池の消費量は大きくなります。逆に検知を緩くしようとすると、離れても通知されなくなってしまうので、レンジング(距離測定)などにおいていかにバランスの良いロジックを見つけるかがポイントになります」(増木氏)

このようなバランスは、ユーザーがアプリを使ってある程度、調整できるが、デフォルトでどのような定義にするかも重要となる。例えばオフィスで会議をする場合、財布をデスクの中にしまったまま席を離れると、ユーザーは紛失したという認識はなくても、スマートフォンはタグの電波を受信できずに、紛失したと判断されてしまう。このような誤作動の発生を無くすため、MAMORIOには過去の紛失通知の頻度やタイミングの履歴をもとに自動調整する機能も搭載している。

「『少しでも離れたら通知してほしい』というもいれば、あまり鳴らさなくてもいいという人もいるので、すべての人に最適なタイミングで通知するのは不可能だと思います。それならば、使う人の癖や好みを学習して、それぞれにベストなタイミングで通知を出すことが大事だと考えました。現在は各ユーザーに合わせて自動調整していますが、いずれはさまざまなユーザーの調整データを集約することで、例えば財布であればこのタイミング、鍵であればこのタイミングと、取り付けるものによってあらかじめ最適なタイミングで通知をして紛失を未然に防ぐ機能を提供できればと考えています」(増木氏)

MAMORIOアプリ MAMORIOアプリ
取り付けるもののカテゴリを選択 取り付けるもののカテゴリを選択
通知のタイミングを調整できる 通知のタイミングを調整できる
スマートフォンからタグが離れると通知される スマートフォンからタグが離れると通知される

鉄道会社の遺失物センターにMAMORIOの受信機を常時設置

クラウドトラッキングについては、とにかくユーザーを増やし、アプリのインストール数を増やすことが一番の課題となるが、MAMORIOではひと味違った取り組みも行っている。

「現在、東急電鉄や相鉄グループと連携して、一部の駅の遺失物取扱所にMAMORIOの受信機を置かせてもらっています。これにより、毎日何千と運ばれてくる遺失物の中に、もしMAMORIOのタグがあれば、すぐに持ち主に通知されます。また、このような常時設置用の受信専用アプリとして、『MAMORIOアンテナ』というアプリも提供しています。いらなくなった古いスマートフォンにこのアプリをインストールすることで、その端末を、MAMORIOを探知するための専用の基地局にすることができます。これを家の中や工場、店舗などに設置することで、さまざまな使い方が可能となります」(増木氏)

最近では、MAMORIOのユーザー向けに、紛失時のカスタマーサポートを提供する「MAMORIOあんしんプラン」の提供も開始した。同サービスは1デバイスにつき年間1000円(税抜)で利用可能で、万が一の盗難・紛失に備える盗難保険も付帯している。

「クラウドトラッキングのサービスの中で、鉄道会社との連携サービスや盗難保険などを提供しているのはおそらく当社だけだと思います。当社はもともとはハードウェアの会社ではなく、“落し物を見つける”という価値を提供するところからモノ作りに入っていったので、今後もさまざまなアプローチから落し物に関する課題を解決していきたいと思います」(増木氏)

クラウドトラッキングという新しいサービスを切り開いてきた増木氏に、位置情報を活用したIoTサービスについて、どのように考えているのか聞いてみた。

「位置情報というのは、ただ機械的に緯度・経度の数字を提示するだけではあまり役には立たない場合があります。どのようなサービスを提供するかによって必要な出し方は変わります。例えば紛失物を探すための小型デバイスであれば、消費電力を考えれば、リアルタイムに追跡するよりも、『1時間前まではこの地点にあった』という断片的な情報のほうが役に立つ場合もあります。MAMORIOについては普段から手軽に持ち物に着けてもらうために小型・軽量化・長寿命を追求し電池交換を断念したので、最初は買ってもらえないのではないかと不安に思いましたが、実際に発売してみると、それはあまり重要ではありませんでした。今後もMAMORIOは様々な形状のバリエーションやサービスを増やすなど、もっと幅広い用途に使っていただけるようなアプローチを考えていきたいと思います」(増木氏)

MAMORIOアンテナ MAMORIOアンテナ

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