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位置情報×IoTの最前線

準天頂衛星の高精度測位を利用したリアルタイムコーチング実証実験——アシックス スポーツ工学研究所

位置情報を活用したIoTの提供事例をテーマとした「位置情報×IoTの最前線」。第3回は、2017年内に3機の打ち上げが予定されており、2018年から4機体制がスタートする準天頂衛星「みちびき」の活用例をお送りする。“日本版GPS”と言われているみちびきは、米国のGPSを補完する機能を持つとともに、対応機器を使うことで、より高精度な測位が可能となり、位置情報を活用したハードウェアやサービスにも大きな影響を与える。今回はその一例として、スポーツ分野におけるみちびきの実証実験に取り組んでいるアシックスの事例を紹介する。同社の事例を通して、みちびきが今後、ものづくりに与える影響を考えてみたい。

2018年、「みちびき」の4機体制がスタート

2017年の6月1日に種子島宇宙センターからH-IIAロケットによって打ち上げられた、準天頂衛星(Quasi-Zenith Satellite System:QZSS)「みちびき」の2号機。このあと2017年内に3号機と4号機も打ち上げが予定されている「みちびき」は、カーナビゲーションやスマートフォンなどにおいて、衛星からの電波を使って位置情報を割り出すことができる“全球測位航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)”の一種である。

測位衛星システムとして最もよく知られているGPS(Global Positioning System)は、米国によって運用されているGNSSで、ほかにもロシアの「GLONASS」や欧州の「Galileo」、中国の「北斗」など世界各国でさまざまな衛星システムの導入が進んでいる。“日本版GPS”とも呼ばれているみちびきは、GPSとの互換性を持つシステムであり、日本を中心としたアジア・オセアニアのエリアにおいて、GPS衛星を補う役割を持っている。

衛星測位は、複数の衛星から電波で送信された信号を受信して、時刻情報をもとに受信機と衛星との距離を割り出し、それをもとに地上における受信機の位置を計算する。位置を特定するためには、測位衛星が少なくとも4機は必要で、受信機と4つの衛星とを結ぶ線がひとつに交わる点が、受信機を持つ人の「現在地」として推定される。安定した位置情報を得るためには8機以上の衛星が見えることが必要とされているが、GPS衛星はどの地点からも概ね6機程度しか見ることができない。

現在稼働中のみちびきは2010年に打ち上げられた1号機のみだが、2017年内に2号機、3号機、4号機の3機が打ち上げられ、2018年からは4機体制の運用がスタートする。さらに、2023年度をめどに7機体制となる予定だ。みちびきの軌道は、日本の上空に長時間留まるように、地球を止めた状態で見たときに8の字を描くように飛ぶ「準天頂軌道」となっている(3号機のみ静止軌道)。

みちびきが4機体制になることで、少なくとも1機以上の衛星が常に仰角70度以上の天頂付近に位置することになり、これによって、GNSSの電波が山やビルなどに反射する「マルチパス」による誤差が改善されることを期待されている。

準天頂衛星 (出典:準天頂衛星システムWebサイト) 準天頂衛星 (出典:準天頂衛星システムWebサイト
マルチパスによる誤差を改善 (出典:準天頂衛星システムWebサイト) マルチパスによる誤差を改善 (出典:準天頂衛星システムWebサイト

衛星測位技術をスポーツ分野に活用

みちびきは、GPSによる測位を補完するだけでなく、GPSの誤差を大幅に軽減する機能も搭載している。現在、スマートフォンやカーナビのGPSによる衛星測位では誤差は約10mだが、みちびきの高精度測位に対応した受信機を使うことにより、誤差が1m以下となる「サブメーター級測位」や、誤差わずか数cmで測位を行える「センチメーター級」測位が可能となる。さらに、災害時に、対応受信機に対して災害情報などのメッセージを送信する「災危通報」サービスや、避難所からの安否情報を防災機関に中継する「Q-ANPI」サービスなどの提供も検討されている。

なお、現在のところ、みちびきのGPS補完機能に対応したGPS機器(スマートフォンやカーナビゲーション、GPSウォッチなど)は幅広く普及しているが、サブメーター級測位やセンチメーター級測位、災危通報サービスなどに対応した機器は市場ではほとんど出回っておらず、まだ本格的には利用されていない状況だ。みちびきの4機体制スタートを目前に控えて、現在さまざまな研究組織や企業が、公的機関から貸与された実証実験用の専用受信機を使って、高精度測位や災危通報サービスの実証実験などに取り組んでいる。

 

それらの企業の中でも、とくにスポーツ分野での取り組みを模索しているのが、アシックスの研究機関であるスポーツ工学研究所だ。同研究所において、測位技術のスポーツへの活用を担当しているIoT担当マネジャーの坂本賢志氏は、スポーツ分野におけるGPSの活用法として、「ランナーの走行軌跡を記録する」「球技において選手の動きを記録する」という2種類を挙げている。

ランニングへの活用については、アシックスはスマートフォンが普及し始めたころから「MY ASICS」というランニングトレーニングアプリをリリースしており、現在に至るまでさまざまな機能の追加が行われている。MY ASICSでは、マラソンのタイムを入力することでトレーニングプランを作成したり、スマートフォンやスマートウォッチ、ランニングウォッチなどと連携して走行軌跡を記録、管理したりできる。ランニングウォッチのラインアップの中にGPS搭載ウォッチも含まれている。また、2016年には、世界的に高いシェアを誇るランニングアプリ「Runkeeper」を運営する米国のFitnessKeeperを買収した。最近はSIMカードを装着することによって自律的に使用できるGPS搭載スマートウォッチが市場に増えてきたので、これらランニングアプリは、スマートフォンを携帯する事無く、スマートウォッチのみで使用可能になってきた。

アシックスの坂本賢志氏 アシックスの坂本賢志氏
「MY ASICS」スマートフォンアプリとスマートウォッチ仕様 「MY ASICS」スマートフォンアプリとスマートウォッチ仕様
「Runkeeper」のスマートウォッチ仕様 「Runkeeper」のスマートウォッチ仕様

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