位置情報×IoTの最前線
3GだけでなくLoRaWANにも対応、位置情報がリアルタイムに分かるGPSトラッカー——ジーアイサプライ
位置情報を活用したIoTの提供事例をテーマとした「位置情報×IoTの最前線」。第2回は、3G/LTEやLoRaWANを使って位置情報データを取得できる「GPSトラッカー」を取り扱うジーアイサプライを紹介する。同社が開発・輸入・販売するGPSトラッカーや、それを使ったシステムについて聞くとともに、IoTでの長距離通信向け通信技術として注目されるLoRaWANの現状についても詳しく聞いた。
GPSレシーバーに通信機能を組み合わせることにより、GPSで取得した位置情報をクラウドに送信し、PCやスマートフォン上でリアルタイムに把握できる「GPSトラッカー」。これを使うことにより、人や自動車、重機などの動態管理ソリューションなどさまざまな用途に活用できる。このGPSトラッカーを提供しているのが北海道東川町に本拠を置くジーアイサプライだ。2003年に設立された同社は、海外製GPS機器の輸入・販売や、それらを使ったソリューションなどを提供しているほか、野生動物の調査や不法投棄監視を目的としたフィールド用の自動撮影カメラも扱っており、オンラインショップ「GIShop」も運営している。
同社の代表を務める北岡智氏は、同社のほかにこれまで測量用のハイエンドGPS機器を扱う会社などを立ち上げた経験があり、GPSに対する技術的なノウハウはかなり豊富だ。また、鳥獣害対策用の自動撮影カメラのシェアについても国内で約5割と高く、自動撮影カメラとGPSトラッカーを組み合わせた総合的な盗難対策ソリューションも提供している。現在では、長距離通信には携帯電話用の3G/LTE回線に対応したGPSトラッカーのほか、最近ではIoT用の次世代通信技術として話題となっている「LoRaWAN」に対応したGPSトラッカーも提供している。
低コストで運用できるSIMロックフリーのGPSトラッカー
同社がGPSトラッカーを最初に発売したのは2014年6月のこと。当時、日本ではNTTドコモやソフトバンクなどの携帯電話キャリアがGPSトラッカーを販売していたが、MVNO各社による“格安SIM”を使えるSIMロックフリーのGPSトラッカーはなかった。海外製のGPSトラッカーの並行輸入品が国内で販売されてはいたものの、日本の技適マークを取得しているものは見当たらず、日本国内で使用すると違法となってしまう。
そのような中、技適マークを取得したSIMロックフリーのGPSトラッカーとしてジーアイサプライが発売したのが「TR-313J」だ。なお、同製品は台湾GlobalSatの製品だが、日本で販売するにあたっては、ジーアイサプライの手によって細かい部分でハードウェアの仕様変更やファームウェアの調整が行われている。
SIMロックフリーのため低コストで運用できるこの製品は、NTTドコモの3G通信網を使ったMVNO各社のデータ通信サービスを利用可能で、音声通信やSMSの送受信も行える。スマートフォンからSMSでコマンドを送信して位置情報を取得することが可能で、AWS(アマゾンウェブサービス)上で動作するトラッカー用の汎用プラットフォーム「ezFinder BUSINESS」を利用することにより、GPSトラッカーの現在位置をGoogleマップで確認できる。
「ezFinder BUSINESS」はGPSトラッカー1台から契約可能で、さまざまな業種で利用できる。地図上に矩形を描いて範囲を指定し、そのエリアに入ったときや出たときにアラートを送信するジオフェンス機能も搭載している。GPSトラッカーのSOSボタンを押すことでGoogleマップ上にSOSマークを緊急表示し、ブザー音で知らせることも可能だ。なお、「ezFinder BUSINESS」は3Gトラッカーだけでなく、後述するLoRaWAN対応のGPSトラッカーも利用できる。
さまざまな業界に合わせてカスタマイズ
TR-313Jは発売以後、さまざまな自治体や企業に導入され、位置情報を使ったさまざまなIoTソリューションに活用されている。
現在では車載用の「TR-606DJ」や、2017年2月に発売した防水仕様の「GTR-388J12」など、3G/GPSトラッカーのラインアップは着実に増えている。なお、これら3製品は、SORACOMによる動作検証済みデバイスにも認定されている。
「弊社はもともとGPS機器を扱う会社としてスタートして、近年はハードウェアの販売だけでなく、地図や位置情報を利用したIoTサービスも提供しており、“モノ”から“コト”への転換を図っています。つまり、モノを売ることを主体とするのではなく、ハードウェアのファームウェアや、それを使うためのソフトウェアをカスタマイズすることで、さまざまな業界向けにカスタマイズした形で納めるというビジネスです。
数十万台という規模で大量に製造・販売するのではなく、数十台の小さなマーケットであっても、その業界に合わせるというやり方ですね」(北岡氏)
ハードウェア自体は中国または台湾のメーカーが製造したものを使用するが、中のファームウェアはジーアイサプライがカスタマイズして、納入先の企業や自治体に合わせた仕様にする。GPSトラッカーの管理ツールである「ezFinder BUSINESS」の背景地図として使っているGoogleマップについても、ジーアイサプライが年間の使用料を払っているため、GoogleマップのAPIを使って各業種に特化したアプリを開発することが可能だ。
また、同社ではGPSトラッカーを使用したB2Bアプリ開発プラットフォーム「GIConnect」も提供しており、アプリ開発を行うパートナー企業にAPIを提供している。
これまで同社の3G/GPSトラッカーを使用したソリューションは、除雪車の管理や重機盗難対策、チラシのポスティングスタッフの動態管理、ゴルフ場でのゴルフカート位置表示、営業マンや施設調査スタッフの動態管理、ドクターカーの動態管理など、さまざまな業種で採用されている。