誰でも使えるプロ仕様の3Dプリンターを——Formlabs躍進の原点
3Dプリンターを使いたいがアイデアがないというユーザーが増えている
——この数年で、3Dプリンターやレーザーカッターなどデジタル加工機の低価格化が進みました。ただ、メイカースペースの運営者に聞くと「機械を使うことには興味があるが、何を作っていいのか分からない」という一般ユーザーからの声もあるようです。このようなユーザーに対してどのようにアプローチしますか?
Lakatos:2種類のユーザーがいると考えています。1つは、コア市場であるプロフェッショナルユーザーで、作るべき自分のモデルというものを持っているユーザーです。もう1つはホビースト。作りたいという意思はあるが、作るべきモデルを持っていないユーザーです。こうしたホビーユーザーのために、Pinshapeを買収しました。Pinshapeは多くの3Dモデルを保有しており、ここを探すことで作りたいモデルを見つけることができます。難しい技術を知らなくても、モデルを選ぶだけで造形することができます。これが、ユーザーのすそ野を広げるために必要だと考えています。
——Fuse 1以降の今後の製品展開スケジュールを教えてください。
Lakatos:まずは製品を市場に届けることが重要です。Form WashもForm CureもFuse 1も、アナウンスしましたがまだ出荷には至っていません。これらを市場に届けることを最優先に考えています。次に、Form Cellを量産製造に使うことを考えています。スポーツシューズメーカーのNew Balanceとのパートナーシップを進めているもので、シューズのソールを3Dプリンターで製造するプロジェクトです。これは将来的な3Dプリンターを利用したマスカスタマイゼーションに備えるためのものです。
フィロソフィーは高機能を誰でも使いやすく
——プロフェッショナルユーザーとホビーユーザーとの中間に、例えばFabLabやMakerスペースを利用するユーザーがいると思います。メーカーではないが日常的にものづくりに携わっているMakerに向けての取り組みをお聞かせください。
Lakatos:弊社には明確なフィロソフィーがあります。それは、異なるセグメントごとに異なる3Dプリンターを用意することはしない、ということです。プロフェッショナルユーザーにとって簡単で使い易いマシンであれば、ローエンドユーザーでも使いやすいはずです。もちろんForm 2の60万円という価格は個人の手が届かない金額ではありませんが、気軽に買えるものでもありません。FabLabやMakerスペースに対しては特別なプログラムを検討しています。
——3Dプリンター業界をみると、Formlabsの成功は抜きんでていると思います。
Lakatos:我々にとって良かったのは、タイミングとプロダクトだと考えます。Form 1をKickstarterに出したのは2012年のことで、多くの会社が後に続こうとしましたが、2~3年は遅れていると思います。またプロダクトとしても、FFF方式のような一般化してしまった技術を使い、低価格という点だけで差別化しようとしていますが、あまり良い戦略とは思いません。個人的には、FFF方式の3Dプリンターを新たに作ろうと考えているエンジニアがいれば、それよりも弊社に来て私たちの新製品開発を手伝ってほしいと思っています(笑)
日本での拡大と今後について
——では、最後に日本のユーザーに向けてメッセージをお願いします。
Lakatos:私たちはまだ日本に進出したばかりですが、今年になってユーザー数は飛躍的に増え、1000台以上の販売実績があります。これはワンダーフェスティバルやデザイン・フェスタ、Maker Faireなどのイベントで、実際に弊社の製品を見て使っていただく機会が増えたからだと思います。そして、既存のお客様から新規のお客様をご紹介いただくというサイクルが回り始めていますが、日本市場で支持されているのはお客様の抱える課題や希望に応えていることが大きな要因だと考えています。これからも「Formlabsなら何とかしてくれる」と言っていただけるよう、ご納得、ご満足いただける製品やカスタマーサービスを提供いたします。