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年末特集2017

億単位で資金調達しても成功するとは限らない——クラウドファンディングが目指すべき道筋とは【年末特集】

2017年もfabcrossではクラウドファンディング発のプロジェクトやスタートアップを数多く紹介した。資金調達額の記録は毎年更新される一方で、プロジェクトの失敗など良くも悪くも年々話題になることが増えているクラウドファンディング。

日本のEC最大手「楽天」を経て、クラウドファンディングサイトKibidangoを立ち上げた松崎良太氏は「いまのクラウドファンディング市場は1997年頃のEC市場に似ている」と指摘する。新たな事業者も続々と参入し、スタートアップが利用することも珍しくなくなったが、それでも市場と呼ぶには未だ十分な規模には至っていないという。今後、クラウドファンディングはどのように発展していくのか、そして消費者と作り手それぞれに、どのように受け入れられていくのか。

プライベートでも数多くのクラウドファンディングに支援している松崎氏と2017年のクラウドファンディングについて振り返る。(インタビュアー:越智岳人)

——松崎さんから見て、今年のクラウドファンディングはどのような一年だったでしょうか。

松崎氏(以下、松):まず、国内にフォーカスしてお話しすると、認知そのものが進んで拡大傾向が続いていると思います。検索エンジンにおける「クラウドファンディング」の検索数や、メディアでの露出機会、シンクタンクが発表している市場データを見ても右肩上がりで推移しています。しかし、まだまだ一つの“市場”と呼べる規模には至っていません。いい意味ではまだ伸びしろがある状況なんじゃないかと思います。

クラウドファンディングはECと違って型が決まっているものではないし、今後も内容ややり方もどんどん変えていきながら成長していくのではないでしょうか。

Kibidangoの松崎良太氏 Kibidangoの松崎良太氏

——確かにコミュニティ機能があったり、プロジェクト終了後のECがあったり、少額でもスタートできる事業者がいたりと各社の個性が際立っているようにも見えます

松:どの事業者が良いとか悪いではなくて、得意分野や力を入れているところが、2017年によりはっきりしてきて、各プラットフォームの味が出てきていますね。

そういった中でKickstarterが日本にやってきたというのはビッグニュースでした。実は2012年の初めに、創業者のペリー・チェンとヤンシー・ストリックラーの二人にKickstarter Japanをやろうよって言ったことがあったのですが、その時は「日本には興味があるけど、まだ先かな」って言われました。その当時、Kickstarter内での日本の市場規模は、トップ10には入っていたけどトップ3ではなかったんですね。

——それから5年がたって、ようやく実現したと。日本市場でもトッププレーヤーになる狙いがあるのでしょうか

松:彼らは日本に上陸したからといって、日本市場で競合と戦っていくという感覚はありません。じっくり腰を据え、クラウドファンディングというものを長期的な視野で見ていきたいというのが、日本に限らずグローバルで共通している姿勢です。

例えばビデオストリーミング配信サービスの会社を買収してライブ配信ができるようにしたり、クリエイター自身がコミュニティを運営して、ファンからのサブスクリプションで収益を得る「Drip」というサービスを2016年に買収したり、TCI(The Creative Independent)という長期的な視野でアーティストやクリエイターの活動を追うユニークで新しいメディアを運営していたりと、クラウドファンディングだけではなく、もう少し広いスケールでサービスを展開しています。

——スタートアップなどプロジェクトを立ち上げる人たちは、どのようにクラウドファンディングを捉えているのでしょうか

松:ちょうど先日(2017年12月初旬に取材)、フランスでハードウェアスタートアップのカンファレンス「ATOMS」があったのですが、「自分はクラウドファンディングを使った」「あえて使わなかった」「使ったけれどもユーザーからの反応を見て、ビジネスモデルをピボットした」と、どのセッションでもクラウドファンディングに対する言及がありました。それを見て、起業したスタートアップが成長するための一つの選択肢として、クラウドファンディングという手法が溶け込んでいると思いました。

一方で課題として、クラウドファンディングで成功したからといって、必ずしもその後も成功するわけでもない。むしろ、さまざまな課題を抱えてしまったケースがあります。

例えば自社サイトでの予約注文で3400万ドル(約40億円)を集めたドローンのスタートアップ「LILY」は、量産することができず倒産しました。同じくドローンで言えば小型空撮ドローンの「ZANO」も230万ポンド(約4億2500万円)も集めながら頓挫してしまいました。他にもSenseという、睡眠をモニタリングするデバイスのプロジェクトも2017年になって事業継続を断念しています。

手のひらサイズのドローンを開発していたZANO 手のひらサイズのドローンを開発していたZANO

松:先ほどのカンファレンスの話に戻ると、スマホで操作するロボットを開発しているスタートアップが登壇して話してくれたエピソードで面白かったのが、当初量産前にindiegogoでキャンペーンを始めようとしていたけど、直前で踏みとどまってやめたそうなんです。彼いわく、「クラウドファンディングをしなくて本当に良かった」と。なぜなら当時、製造原価を実際のコストよりもはるかに少なく見積もってしまっていて、もしクラウドファンディングでたくさんの資金を調達していたら、作れば作るほど損をする、いわゆる逆ザヤになってしまい赤字を垂れ流して潰れていたかもしれないというんですね。

それで彼は自社サイトで人数を500人に絞って予約販売する形に切り替えて、ユーザーを巻き込みながら改良を重ねて、ようやく最近になって適正な価格で量産に踏み切ることができ、一般販売できるようになったと語っていました。クラウドファンディングを使わずに製品化までこぎつけたわけですが、彼がとったプロセスはファンを作り、コミュニティを巻き込みながら製品を育てていくという面で、クラウドファンディングを使った開発プロセスに非常に似ています。

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