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Makerコンテスト「GUGEN 2020」、大賞は失った声を取り戻す口パク発声デバイス「Syrinx」

ピーバンドットコムは、実用性や商品性の高い自作ハードウェア作品を表彰するコンテスト「GUGEN 2020」の選考会・授賞式を、2020年12月5日にオンライン配信で開催した。85の応募作品のうち最終選考にノミネートされた16組の中から、東京大学大学院生らによる「Syrinx」(サイリンクス)が大賞に選ばれた。(写真提供:GUGEN、撮影:川島彩水、倉谷卓)

Syrinxは、咽頭がんや食道がんなどによって声帯を摘出したために発声ができなくなった人たち向けのウェアラブルデバイスだ。声帯摘出者がコミュニケーション時に使用する既存の機器として、EL(電気式人工咽頭)という円筒状の電子デバイスがある。ELは斜めから喉に押し当てるようにして使用するため、話す際に片手がふさがる点や、機械的で単調な音声しか出ないことから、使用者が使いたがらないという課題があった。

これに対し、Syrinxチームが開発したデバイスは首に巻き付けて使用する形状にすることでハンズフリーでの使用を可能にした。本体に備え付けられた2種類の振動子からユーザーの喉の動きをセンシングし、機械学習アルゴリズムによる発声プログラムによって、ユーザー自身の声に近い音声での再生を実現した。

Syrinxは発声しなくても音声によるコミュニケーションが可能であることから、コロナ禍における飛沫感染のリスクも低減できるとしている。

Syrinxを装着した開発陣

その他の主要な受賞作品は以下の通り。

優秀賞:coexi

自転車用ウインカーcoexi

自転車用ウインカーcoexi(コエクシ)が優秀賞を受賞した。曲がりたい方向側のペダルの外側を弾くと3秒間点滅し、後続の車両に対して曲がる方向や進路変更を伝えるウインカーとして機能する。

自転車を漕ぐことによって発電できる機構が組み込まれているため、取り付けると半永久的に使用できるとしている。開発者は法政大学デザイン工学部の外山創大氏。フードデリバリーの急速な普及や、コロナ禍で自転車による移動を選ぶ人が増えたことに伴い、路側帯に駐車された車を避ける際の車線変更による自転車の交通事故が増えていることに着目したという。

優秀賞:Ninja qPCR

久川夫妻が開発したNinja qPCR。安価な検査装置のニーズが高い発展途上国への展開を考えているという。

2つ目の優秀賞は、新型コロナウイルスを含む感染症やアレルギー検査に使用できる、原価300ドル(日本円で約3万3000円)のオープンソースPCR検査装置「Ninja qPCR」が受賞した。

開発者の久川真吾氏・まり子氏は2018年に1号機となるPCR検査装置を499ドルで発売。3号機となる今回の出展作品はPCR検査装置で主流である測定手法の「qPCR」を採用した。同手法の検査装置が1台につき2万ドル(約220万円)〜20万ドル(約2200万円)であるところを原価300ドルに抑えることに成功。今後は米国で販売する際に必要なFDAライセンスを取得の上、量産を進める予定だという。

Good アイデア賞:FULU

Goodアイデア賞を受賞したFULU(フル)は、爪に装着する拡張現実(AR)用の触覚デバイスだ。スマートフォンと連動することで、印刷物に触れると絵柄に応じた触覚がネイルチップ状のデバイスから指に伝わったり、離れた場所にいるユーザー同士で触覚を伝達し合ったりすることができる。

コロナ禍において、直接触れ合う機会が減り、遠隔によるコミュニケーションが中心となっている。しかし、デジタル体験の多くは触覚を伝達できない。開発されている触覚デバイスはサイズが大きく、VRゲームのヘビーユーザー向きのものが多い点に開発チームは着目した。「誰もが簡単に使える触覚デバイスを通じて、遠く離れた愛する人たちとつながる」をコンセプトにしたデバイスを開発したという。

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