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クラウドファンディングとものづくりの関係

継続的にビジネスを回す仕組みをサポートする、きびだんご流クラウドファンディングの活用方法

2013年3月にリリースしたクラウドファンディングサイトの「kibidango」。10%という手数料の低さや、プロジェクトにEC機能を実装し、支援したユーザー以外も商品が購入できるなどの特徴をもつ。プロジェクトのみならず、事業としての成長までを支援するkibidangoを運営する、きびだんごの青井一暁さんに話を伺った。

クラウドファンディング型ECサイトkibidango

kibidangoを運営するきびだんご。代表取締役である松崎良太氏は、楽天に創業期より携わり、執行役員としてネットマーケティング事業長などを務めたことがある人物だ。

楽天時代からECサイトの立ち上げや運営を経験してきた松崎氏。いまやECという手法はビジネスを行う上で一つのインフラ的存在となったが、事業を持続的なものとするためのサポートを行っていきたいという思いがそこにはあったという。ECの新たな形を模索する中で、Kickstarterによって個人や小さなチームが情熱を持って生み出す製品の価値を高め、より多くの人に共感し応援してもらいたい。その一つの手段として、クラウドファンディングという手法に新たな可能性があるのではと考えたことがkibidango開発のきっかけだ。

松崎氏はKickstarterを、ユーザーの一人として利用していた。その中で、プロジェクトが掲載されて目標金額に到達するまでは大きく盛り上がるが、掲載期間終了後は祭りの後の寂しさを感じていたという。そこで、プロジェクト掲載期間以外にも支援ができる手段を作ることで、継続的な支援が生まれる仕組みができないかと考えた。そこから、目標金額に達成したプロジェクトページにEC機能を実装し、継続的に購買できる仕組みを導入することでプロジェクトとファンとのつながりを継続させ、事業としての持続性をもたせることにした。

「ビジネスを支援するひとつの形として、クラウドファンディングをやっていると考えています。肝はクラウドファンディングからECへのスムーズな接続。そのため、kibidangoを“クラウドファンディング型ECサイト”と紹介しています」(青井氏) 

何度もプロジェクトを立ち上げることで継続的な支援を作る

kibidangoの特徴は、その手数料の安さだ。日本における一般的なクラウドファンディングサイトでは20%程度を手数料として設定しているが、kibidangoの設定は10%だ。「敷居を低くし、より多くの人に使ってもらってアイデアを実現する場にしてもらいたい」と青井氏は話す。

手数料の安さやEC機能が実装されていることから、プロジェクトを何度も立ち上げるオーナーが多いという。「クラウドファンディングのプロジェクトの多くは1回で終わりがちですが、kibidangoでは継続してファンを作るために、小さなプロジェクトでいいので何度も実施することを推奨しています」(青井氏)

例えば、「シチリア島のオリーブオイル農家と直接契約!家族経営で丁寧に作ったトロトロのオリーブオイルを届けたい!」は、オーナー鎌田さんによる3回目のプロジェクトだ。1回目のプロジェクトは特殊なボトルに入れて空輸販売できるオリーブオイルで、最低ロットの目標金額を20万円に設定した「フレッシュ!フレッシュ!空気の入らない特殊ボトルで、希少シチリア産オリーブオイルを搾り立てそのままに届けたい!」。その後、オリーブオイルを使ったマヨネーズづくりなどさまざま商品を展開。実際に買って使ってくれたユーザーはその商品のクオリティを知っているから、継続して購入してくれる。加えて、口コミで広げてくれるので目標金額の達成率も伸びている。

「オリーブオイルは毎年収穫と生産を繰り返すので、ある程度の期間は継続的に次の手を打つことができるようです。クラウドファンディングで集まった需要を目安に生産し、残った分だけをECに回すので、在庫を売り切りやすく収支の目標も立てやすい。ファンもシーズンになったら新商品が出ることがわかっているので、継続的に購入しやすいという流れが生まれています」(青井氏) 

クラウドファンディングを通じて生産者とユーザーが直接つながることができ、ユーザーからの意見をフィードバックして商品に生かすなどのコミュニケーションが生まれている。ファンとなった人はECを通じて継続的に購入し、次のプロジェクトが立ち上がったら新商品を先んじて購入することができる。
ニーズを掘り起こし、ユーザーとのコミュニケーションを円滑にする手法として、クラウドファンディングはきっかけにしやすい。人とのやりとりを通じて、ビジネスを育てることができるのだ。

リワードは等価交換性を重視

クラウドファンディングサイトでは、寄付型モデルや投資型モデルなどさまざまな形がある。kibidangoは購入型サイトとして、出資の見返りであるリワードは等価交換を原則としている。プロジェクトオーナーに対して「ユーザーにとって価値のあるものを提供する場にしたいため、オーナーにはなにかしらの専門性を持ち、それをもとに商品を提供できるかどうかを掲載の条件にしている」と青井氏。

事業に継続性が生まれることを大切にするkibidango。たとえNPOであっても、事業性やビジネスを踏まえたプロジェクトは積極的に支援している。NPO法人ピースウィンズ・ジャパンによるプロジェクト「人を育て、国を応援しながら究極に美味しい東ティモールピースコーヒーを飲もう」では、現地の人たちが事業性をもって自活することを支援。そのために、コーヒーの管理ができるソムリエを育成し、自分たちでクオリティの高いコーヒーが生産できる体制づくりをするプロジェクトを開始。今ではEC機能によって、現地で作ったコーヒー豆を購入できるページも開設。継続的にコーヒー豆が購入でき、現地の支援と専門家育成を両立させた仕組みになりつつあるという。 

「ECページには支援者限定で、通常よりも割引された価格で商品を購入できる仕組みも入れています。これによって、支援者には継続したメリットが生まれ、支援時の動機にもなるのです。この支援者限定機能もプロジェクトオーナーに好評です」(青井氏)

等価交換とはいえ、リワードは必ずしも商品だけではない。例えば筋電義手を開発するexiiiは、handiiiの実用化に向けて、開発協力者の2人に実用レベルのhandiiiを届ける「筋電義手handiii(ハンディ)をまず二人の協力者に届けたい!」を立ち上げた。一般的に、ものづくりでは商品そのものを送る傾向にあるが、筋電義手を送るのでは出資は募りにくい。そこで、Tシャツや手模型を送ったり、展示用handiiiに出資者のロゴや名前を印字することをリワードとした。結果、メディア芸術祭で展示されることとなり、想定外の価値が特典に生まれました。

「単純に寄付を募るではなく、アプローチを変え、プロジェクトオーナーは気付かないけれど一般の人からすると価値があるものはなにかを、事前のプロジェクト設計の際に一緒に議論しています」(青井氏) 

リワードの商品性をどれだけ考えられるか

プロジェクトの審査も特定の分野に限定することなく、一定の条件をクリアしたものは掲載するという。代りに、リワードとしての商品性を見出すためのやりとりには、事前に時間をかけている。相談をきっかけにアイデアが閃いたり、自分自身がやりたいことがよりクリアになったりする人も多いという。ブラッシュアップを通じてプロジェクトオーナーのやりたいことが明確になれば、「画像やテキストのうまい見せ方などよりも、その思いをうまくプロジェクトページで表現してもらうことが一番」で、積極的にアドバイスなどはするものの細かな修正には手を入れない方針だ。

すでにファンを抱えているなど、事前にコミュニティを持っている人もプロジェクトは成功しやすい。プロジェクトをローンチする前に周囲との関係性を構築し、うまくプロジェクトを広めてくれる仲間意識を醸成することが必要だと青井氏は話す。

「クラウドファンディング全般に通じるものかもしれませんが、まだこの世の中にないものを買ってもらうからこそ、強い思いをもった作り手とそれを受け取るユーザーとの濃い関係性をどう作り上げるかが大事。熱意をもってプロジェクトに取り組み、なにがなんでも成功させる強い信念があれば、自然と人は集まってくる」(青井氏) 

プロジェクト中の活動報告でファンを獲得する

プロジェクトが進む中での活動報告も必ず行うよう、プロジェクトオーナーに徹底している。徐々に形になっていくものに出資するからこそ、支援者に対する説明責任がプロジェクトオーナーに求められる。また、活動報告を通じて今ぶち当たっている壁や失敗を支援者と共有し、協力を仰ぐことがコミュニケーションにつながる。

「ブログ感覚で普段の様子を見せることが重要です。活動報告のページの横に支援ボタンを用意しているので、活動報告のクオリティを上げることで支援者とよりつながる場になる」(青井氏)

活動報告をうまく運用することは、プロジェクト全体のブランディングにもつながる。普段の様子から人間味を知ってもらい、応援してくれる人を増やすことでプロジェクトオーナーが描いている夢やビジネスの成長の途中を共有することができる、と青井氏。ビジネスの根幹は人だからこそ、自身の熱意を込めた製品と、それを応援してくれる人を大切にすることが必要だ。 

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