Dig up the underground「プロダクト一機一会」 by 松崎順一
昭和の哀愁を帯びた電気釜という白物家電 TOSHIBA「電気釜 RC-10MH」
前回に引き続き、今回まで上井草で閉店した電気店で発掘した希少な家電を紹介させていただきます。
僕個人として街の電気店がひっそりと無くなっていくのは大変残念な事だと思っています。
個人商店を含めて商店街という庶民交流文化を次の世代に存続させることはとても重要な事だと考えます。
さて、話は本題に戻って電気店から出土した数ある家電の中から紹介したいのがこれ。
東芝製の電気釜なのです。
電気釜は昭和から平成に時代が変わっても、基本、不変の白物家電と言って良いと思います。
まずはデッドストック状態で残された箱に長年積もった埃を払い開梱する。
現在と過去が繋がるこの瞬間は、僕にとってすごく緊張する瞬間とともに至福の時でもあるのです。
開梱は箱の中に閉じ込められた当時の空気が解き放される儀式、この感覚は考古学者が遺跡を発見した時と同じ感覚だと思っています。
開けると目に飛び込んでくるものが薄紙に包まれたパーツ類、そしてそれらを取り外していくと釜本体がお目見えする。
丁寧に、劣化で茶色がかった薄紙をはがし、組立てると電気釜の完成。
本体のフォルムは丸みを帯び、御飯を優しく包むイメージが感じられる。そしてオフホワイトのカラーも毎日鎮座する茶の間にあって違和感がない。そんな家電がこの電気釜なのだ。
この機種は保温もできたけど、今みたいなIH的なハイテクではないので翌日には水分を失いパサパサした御飯に変身してしまう。
でもそんな些細な事も昭和の哀愁に感じてしまう家電が電気釜だったのを思い出した。あぁ、これで今晩御飯炊いてみようかな。
TOSHIBA RC-10MH
発売時期:1972年(昭和47年)
1972年に起きた主な出来事
- 札幌で冬季オリンピック開催
- 山陽新幹線が新神戸駅-相生駅間で行われた速度向上試験で当時の世界最高記録286km/hを達成
- カシオ計算機が世界初のパーソナル電卓「カシオミニ」を発売