Dig up the underground「プロダクト一機一会」 by 松崎順一
音響迷路が生む異次元の重低音に驚愕したコンポーネントオーディオ「BOSE ACOUSTIC WAVE MUSIC SYSTEM AW-1」
11月は蒐集活動が1年の中でもっとも忙しくなる時期。それには理由があって、さまざまな不用品が捨てられるのは引越しや大掃除の時期が圧倒的に多く、特に年度の切り替えの3月と年末の11月から12月にかけては廃棄物の中身が濃く、珍品が捕獲できるチャンスなのです。だから毎年この時期は気合い入れて蒐集に臨みます。
そんな11月のある日、某蒐集所に立ち寄った際に出会った家電が1980年代の名機「BOSE AW-1」だった。たまたま入荷したばかりで、聞いたところワンオーナーものとの事。大切に使われていたせいか外観も傷も無くとてもきれいだったのでさっそく購入を決め、持ち帰ることにしてしまった。
この製品は僕がまだデザイン会社にいた頃、ボーズ関連企業の「ボーズ感性工学リサーチ株式会社」という会社の営業がやってきた。それはAW-1を直販するため、企業等の休み時間や昼休みに実演視聴会を開いて実際にカセットテープに録音されたさまざまな音源を大音量で聴かせてデモンストレーションをするという仕掛けだった。その時の重低音とすごい価格に驚いたのを今も鮮明に覚えている。
当時の価格は本体が19万8000円で、アクセサリーパーツを含めると約27万円、そしてローンを組むと30万円という単体のコンポとしては破格値だったが、この製品の価値観は30万円をはるかに超えていたと思うほど国産のオーディオより魅力を感じたのだ。
BOSE AW-1の仕様はAM/FMラジオとカセットテープレコーダーで構成されており、ライン入力もありアクティブスピーカーとしても性能を発揮した。そして最大の特徴は、内部にウェーブガイドというボーズ独自の重低音を生み出す当時最新のテクノロジーが採用されていて、コンパクトオーディオの概念を超えたパワフルな音が特徴だった。その重低音は国産のオーディオの重低音とは全く異質なボーズならではの音で、新鮮さも感じた。
僕は結局購入には至らなかったが、80年代このAW-1との出会いで僕のコンポーネントオーディオの世界観が変わったのは間違いない。
このAW-1は現在も全く同じ形で現行製品(編集部注:カセットテープデッキはCDプレーヤーに変更されている)が作られており、改めてその完成度に目を見張るのである。
BOSE ACOUSTIC WAVE MUSIC SYSTEM AW-1
発売時期:1985年(昭和60年)
1985年に起きた主な出来事
- 蔵前国技館の老朽化により建て替えられた両国国技館が完成
- ロバート・ゼメキス監督/脚本による映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」が劇場公開
- 日本航空123便墜落事故、乗客/乗員520人が死亡