Dig up the underground「プロダクト一機一会」 by 松崎順一
茶の間テレビからの独立を宣言したパーソナルテレビ「SONY TRINITRON COLOR TV CITATION KV-1375A」
ここのところ箱入りのデッドストックが多かったけど、箱入りはそう簡単にはお目にかかれない。じっくり活動を続けてたまに出会うのが醍醐味だ。
さて、8月に入るとかなりの猛暑で実際のところ蒐集活動は通常の月より減りがち。こんなときは物で溢れたファクトリーの整理が適しているという訳で、久しぶりに奥の奥の棚の整理をしたときに見つけたのが、今回紹介する1977年誕生のパーソナルテレビ、SONYのサイテーションだ。英文字だとCITATIONとなる。
70年代のテレビは茶の間の中心にどんと構える家具調が主だったがそんななか、当時としてはかなりエッジの効いたデザインで、テレビの新たな方向性を示した製品だ。
その理由のひとつは、デザインされた取っ手に収納されるWロッドアンテナだ。まず、取っ手が付いたことにより家の中を自由に移動でき、アンテナ付きだからわざわざアンテナ線を接続しないでも好きな場所でテレビを見られるのだ。今では 当たり前だがポータブルではないテレビが場所を選ばず視聴できたのは画期的なことだった。
そしてもうひとつが背面に現れたオーディオ出力端子だ。この端子の登場によってテレビの音声をHi-Fiで楽しむことができるようになる。家庭用ビデオの登場はまだ先になるが、SONYの映像とオーディオが一体化するオーディオビジュアル戦略の先駆け的な製品だ。
そのサイテーションはブラウン管テレビとして今見ても独創的なデザインで気に入っている。
ブラウン管テレビといえば海外でも好きな作品が色々ある。そのひとつがフィリップ・スタルクのSabaというテレビ。こちらもとてもユニークな発想のデザインで、ブラウン管テレビのデザインの多様性に思わず唸ってしまうのだ。
SONY TRINITRON COLOR TV CITATION KV-1375A
発売時期:1977年(昭和52年)
1977年に起きた主な出来事
- 国民栄誉賞が創設。同年にホームラン世界新記録を樹立した王貞治が受賞
- 小学館が「コロコロコミック」を創刊
- 「スター・ウォーズ」(エピソード4/新たなる希望)がアメリカで公開。日本公開は翌年。