Dig up the underground「プロダクト一機一会」 by 松崎順一
大人も虜にしたポップデザインのキッズ向けコンピューター 「SONY GRAPHIC COMPUTER HB-A5000(my first Sony)」
9月に入り朝晩は涼しく過ごしやすくなったけれど、今年は台風が多く、蒐集のタイミングがとても難しい日々が続いている。そんな中、先日約1週間リサーチと蒐集を兼ねてオーストラリアに行ってきた。
オーストラリアは蒐集対象の国としては全く頭になかったので、実際はどうなのか確認するのにちょうど良かったのだ。
行った都市はシドニー。広大なオーストラリアの中では大都市だ。到着すると治安もよく散策も問題無しだったが、案の定蒐集したい物は殆どなかった。
市内のアンティークショップも色々歩いてみたが、魅力的な製品は殆どなく、好みのものが無いのが分かったのが今回の唯一の収穫だった。
今回紹介するのはソニーの子ども向けお絵かきコンピューターだ。
この製品はソニーの「my first Sonyシリーズ」(編集部注:ソニーが子ども向け販売したAV機器シリーズで、科学への興味を触発する狙いを持っていた)のひとつ。1989年は、僕が初めて手に入れた「Macintosh IIci」が発売された年で、IIciはオプションを含めると100万円は下らない価格だった。そしてソニーのHB-A5000はと言えば1万8000円と物欲をそそる価格設定だった。
my first Sonyシリーズは、もともと海外向けの輸出品としてデザインされていたから製品の色は多少派手だけれども、機能は意外に充実していて乾電池でも使用可能だ。
実際、タブレットにペンで自由に絵を描きペイントして28種類のスタンプ機能でグラフィックも追加できた。そしてビデオが接続してあれば録画して画像の保存も可能と、親子でしっかり楽しめたのである。
そんなHB-A5000のコンセプトは今でも新鮮だ。ターゲットを絞った製品戦略はものの多様化の現代こそ生かせそうだと思うのである。
SONY GRAPHIC COMPUTER HB-A5000(my first Sony)
発売時期:1989年(平成元年)
1989年に起きた主な出来事
- ドイツを東西に分断していた「ベルリンの壁」が市民によって壊された
- 手塚治虫が逝去
- 消費税(税率3%)開始