Dig up the underground「プロダクト一機一会」 by 松崎順一
通信技術発達のはざまに存在したコミュニケーションツール 「SONY PERSONAL RADIO SPR-6 Skycircuit」
少し前にCB無線(市民無線)トランシーバーを紹介したが、CB無線が全盛だった1970年代後半から80年代にかけて違法CBという社会問題が勃発した。今回紹介する製品は、その問題解決のために誕生したパーソナル無線機と呼ばれた製品で、CB全盛時代から、携帯電話が登場するまでのはざまに生まれた無線方式だ。
ちなみに違法CBというのは、当時に使われていた市民無線機ではなく、出力の大きい外国製(主にアメリカ製)の無線機を車両に取り付け交信する行為だった。日本の市民無線機は最大出力が0.5Wだが、違法な無線機は何十Wもの出力だったため違法無線機を積んだ車が走る道路に近い家のラジオやテレビ、そしてその他のさまざまな電子機器に影響を与えた。実際私も当時家でFMラジオをエアチェック中に突然知らない男の声が入ってきた記憶がある。
さて今回入手したSPR-6を見てみよう。あまり使われていなかったらしくかなり奇麗な状態だ。
1980年代のオーディオ製品のデザインと同じ銀色を基調に、昭和らしいスタイリッシュなデザインだ。
アンテナもデザインが凝っていて先端のオレンジがアクセントになっている。箱の中には残念ながら取扱説明書は入ってなかったが、箱の裏面にポップなイラストで活用シーンがいくつか紹介されている。
本体の正面の、銀&青の配色がこの頃のソニーらしい。
表示は液晶画面で周波数はテンキーで選べるようになっている。SPR-6はソニーのパーソナル無線機としては2代目で、インターフェースは初代よりもかなり洗練されている。
そして本体には折りたたみのスタンドが付いており、机の上では程よい角度で使用できる。ちなみに角度は調節できない。
そしてアンテナは本体横に取り付けられており好きな角度に調整可能だ。ソニーのロゴがちょっと誇らしげだ。
本体下部にはスピーカーも内蔵されている。家で使用するときは寝かせて使用し、屋外では専用のホルダーに入れて肩から掛けて使用した。
パーソナル無線は当時のCB無線に足りなかった多くの機能を盛り込んで華々しく登場したが、実際にはここでも改造による違法無線局が多発して問題になったり1987年の携帯電話の登場により活躍の場を奪われたりして、徐々に市場が衰退していった悲運の無線機だった。ただ一時代を築いたのは確かだ。
「SONY PERSONAL RADIO SPR-6 Skycircuit」
発売時期: 1984年
1984年に起きた主な出来事
- 米アップルコンピュータがMacintoshを発表。
- 3機目のスペースシャトル「ディスカバリー」1回目の打ち上げ。
- 映画『グレムリン』公開。