Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
ラジオをレシーバーに変えた電波ハンティングの名機「SONY FM/MW/SW 3BAND RECEIVER ICF-5500 Skysensor」
BCL( Broadcasting Listening)の名機は今まで何度となく紹介してきたが、今回某所から出土したソニーの「ICF-5500」は、BCLという言葉がまだ無かった時代に登場しBCLブームを牽引する役割を担ったラジオだった。1972年頃のラジオは音の良さを売りにしたものが多く、短波というバンドを楽しむラジオという発想は、まだ一部のマニアを除いてはほぼ無かった。そんな中ICF-5500が発売されたことをきっかけに情報に飢えていた若者たちを一気にBCLという趣味に誘引する起爆剤になったと思われる。
ICF-5500は同時期に発売された「ICF-5400」と共に“スカイセンサー”という称号が付いた初めての製品でもある。スカイセンサーはBCLブームの中で、ナショナルの“クーガ”シリーズと一緒に憧れのラジオになっていった。今回ゲットしたICF-5500はラジカセを探しに埼玉を周回している最中、某リサイクルショップの店頭に運ぶ前に発見したものだ。半世紀近く前の製品だが比較的コンディションが良く、色褪せも少ないため購入した。それでは具体的に本体を見てみよう。
正面は縦に長く精悍なスタイルだ。実はこのころのラジオは横長のデザインが多くICF-5400も横型で、縦型のラジオとしてはICF-5500が初だった。そしてこのICF-5500のヒットにより各メーカーから登場するラジオも縦型が多くなっていくのである。
ICF-5500は下半分がスピーカー、上半分が操作パネルになっている。正面左がフィルム巻き上げ式のチューニングスケール、そしてその下に見える緑色のボタンを押しながらスピーカーに向かって話すと、FMで電波が飛びワイヤレスマイクとして使えるのである。そんなギミックも男心をくすぐったのである。
上部には使う頻度が少ないメーターと受信感度の切り替えスイッチが並んでいる。ただどちらも便利な機能だ。
そしてもう一つ、長いロッドアンテナは手前のボタンを押すとポンと飛び出すポップアップ式で、とても楽しい機構である。
チューニングダイヤルは横に配置されており、早く回すときはダイヤルの穴に指を入れて回すことができる。またダイヤルは従来のラジオよりも大型のため短波のチューニングがしやすいのが特徴だ。
そして上面の端にさりげなく「SSH」という表記があるが、これはSingle Super Heterodyneという超高感度受信回路を採用していることを意味する。ICF-5500はあくまで高感度で音の良さを追求したラジオだ。
そして背面にはロッドアンテナではキャッチできない遠距離の受信用に、外部アンテナ端子が装備されている。
ちなみに電池で動かす場合、単三乾電池を3本使う4.5V仕様になっている。ちなみに当時の価格は1万6800円で、ACアダプターとキャリングベルトとケースが付属している。
シルバーとブラックでまとめられた本体とグレーのスイッチの無機質さはさすがにソニーといったデザインで、今見てもゾクゾク感が漂ってくる名機だと思っている。また出会ったら何台でも購入しそうである(笑)。
「SONY FM/MW/SW 3BAND RECEIVER ICF-5500 Skysensor」
発売時期: 1972年
1972年に起きた主な出来事
- NASAが惑星探査機パイオニア10号打ち上げ
- 日本ビクターがステレオスピーカー「SX-3」発売
- 巨大ロボットテレビアニメ「マジンガーZ」放送開始