Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
いつでも、どこでもカラオケを楽しめた無線付きポータブルカラオケマシン 「SANYO PORTABLE CASSETTE PLAYER PAT-8100 Karaoke Mate」
夏本番の猛暑の中、家電の蒐集作業が一番辛い季節でもある。特に品物が屋外に積んである蒐集場所は体にこたえる。そして何よりも品物が高温になっていて、素手で触るのは危険な場合がある。そんな蒐集活動も、良いものが発掘できれば疲れも飛んでいく気持ちになれるのである。また、近年はリサイクルショップにもジャンクコーナーができ、地域によってはユニークなものが見つかる場合もあり侮れない。
昨今は仕事で使用するための家電を探しに出掛ける機会も多く、幅広いアイテムを探している。7月も1980年代がテーマの撮影で、撮影に使用する家電系小物を提案しながら現物を探すという仕事をさせていただいた。ただ、探して発見した時に買い付けしないとすぐに無くなるものが多く、1点だけ翌日に購入に行ったら無くなっており、焦ったこともある。今回紹介するのはその買い付け中に発掘したカセットプレーヤーだ。
ラジオは付いておらず、本体には「Karaoke Mate」と表記されている。デザイン的にも1970年代の製品のようだ。本体と電源コードが付属していた。では細かく製品を見てみよう。
まず正式な型式は「SANYO PAT-8100」だ。サンヨーのラジカセは頭のアルファベットが“MR”になるのでカテゴリーはカセットプレーヤーの中に入ると思われる。そしてサブネームが「Karaoke Mate」と、カラオケが好きな人達向けの製品だったと思われる。カラオケがブームになったのが1970年代後半くらいからなので、発売もその時期だろうと推測できる。
実はこの製品、どちらが正面なのか迷う作りになっている。今回はカセットプレーヤー側を正面にしたいと思う。なので丸いエンボスで構成されたスピーカー側は背面になる。本体の色は黄色だが、このほかに青色と赤色の2色のバリエーションがあった。筆者はこの黄色が一番奇麗だと思っている。
本体の上面はカセットテープの操作パネルと電源スイッチと、いたってシンプルな構成になっている。
面白いのは、操作パネルの文字が両面どちらから見ても分かるように印刷されていることだ。そしてもう一つの注目点が、左側にある「無線送信」というボタンだ。このボタンはカセットテープの音やマイクで歌っている音声をFM電波でラジオに送信する機能だ。このボタンをONにすると、他のラジオやラジカセで受信して大きな音量で楽しむことができるようになっている。
カセットテープは扉を指で開き、ふたの中に挿入する。
そして本体の横には、右側にマイク端子2個とマイク用エコーのボリュームとFM送信用の周波数調整用の穴が空いている。ちなみに標準では78MHzに設定されていた。
そして反対側にはマイク音量のボリュームと、カセットテープ音量のボリュームがある。
本体に付いているアンテナは受信用ではなく送信用だ。ある意味この「Karaoke Mate」は移動する放送局なのだ。
本体はACと電池での使用が可能で、なぜか電池ボックスはカセットぶたの横に位置している。
その訳は、底面に電源コードを収納する設計になっているので、コードが入ると底面に電池を入れることができず、こういう仕様になったと思われる。
大変コンパクトなカセットプレーヤーだが、コンセプトが面白くせっかくなので3色集めたいと思ってしまった。この後修理をして機能は全て復活させて聞いている。
「SANYO PORTABLE CASSETTE PLAYER PAT-8100 Karaoke Mate」
発売時期: 不詳(デザインより1970年代後期と思われる)
1970年代後期に起きた主な出来事
- NECがワンボードマイコンの「TK-80」発売(1976年)
- 「スペースインベーダー」が大ブーム(1978年)
- 学園ドラマ「3年B組金八先生」放送開始(1979年)