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Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一

一見、鉛蓄電池を彷彿させる地味なフォルムが逆に新鮮だったラジオ「National Panasonic Portable Radio RF-727 COUGAR No.5」

ここのところ毎回冒頭は決まって天気の話題が続けているが、近年はそれほど天候不順が続いていてとても心配をしている。天候は蒐集活動にも少なからず影響するからだ。今年の夏の間は遠距離の蒐集も行きたかったが、都合がつかず首都圏内での蒐集が多かった。そんな中で発掘したのが1973年製のナショナルのラジオだった。

このラジオは当時大人気だった「吠えろ クーガ」シリーズの中の1台で、その他の「COUGAR No.6」「COUGAR No.7」は短波を含む3バンドが受信でき、AM用にジャイロアンテナを装備してBCLラジオとして人気があった。ただ、この「COUGAR No.5」は2バンドで、ジャイロアンテナも無い、クーガシリーズの中では大変ベーシックなラジオだった。

筆者の中でも当時このラジオはほとんど記憶になく、フラッグシップだったNo.7が欲しかった。という記憶がある。今回の蒐集は本体のみで、箱や付属品は残念ながら欠品だった。それでは本体を具体的に見てみたいと思う。

本体を少し上から見ると本体の形状がよく分かると思う。本体の下部はほぼスピーカーで、操作部分は上面に集中している。

このずんぐりした形状が鉛蓄電池とよく似ている。ちなみに本体は筆者のてのひらにすっぽり収まるサイズだ。

正面から見るとスピーカー部分と操作部分のバランスがよく分かる。本体のカラーはカーキ色で、当時ミリタリーブームだった影響もあるかもしれない。正面には操作する箇所はない。

正面の右上に「National Panasonic」と「COUGAR No.5」の表記がある。この頃の松下電器産業のラジオはどれもダブルネームだ。

そして上面の操作部分を見てみる。ラジオとしては基本的なツマミが並んでおりシンプルなレイアウトだ。これだけシンプルだと暗い中でも操作が可能だ。またスイッチが機能により色分けされているのも面白い。

中でもパワースイッチの横にあるのが120分のタイマーで、つまみの形状で一目で分かるようになっている。スイッチと連動し自動でON、OFFが可能だ。

ラジオのスケールはAMとFMがフィルム式で選曲できる。私たちが何の気なしに使っているAMとFMの英語のフル表記もされている。AMは「AMPLITUDE MODULATION(振幅変調)」、「FMはFREQUENCY MODULATION(周波数変調)」だ。

また、本体の横にはMPX OUTの端子が。これはマルチプレックスアウトと読む。FMはラジオ本体で聞くとモノラルだが、ここから専用の装置につなぐとステレオで聴ける設計になっている。もう一つの端子はSTEREO INとREC OUTを兼ねているが、どういう構造になっているかは謎だ。

背面にはACで使用するための端子が見える。コンパクトなラジオだが、電源トランスが内蔵されていて便利な設計だ。

電池ホルダーは本体底面にあり、単二乾電池4本で動作する。

最後に、1976年発売のナショナルの「RF-2200 COUGAR 2200」との比較。RF-2200も決して大きくはないが、RF-727はさらにコンパクトなのが分かる。唯一共通なのはスピーカー部分の処理が継承されているところだろうか。ただ今となってはどちらもナショナル パナソニックらしいデザインだ。

「National Panasonic Portable Radio RF-727 COUGAR No.5」

発売時期: 1973年

1973年に起きた主な出来事

  • フジテレビが「ひらけ!ポンキッキ」放送開始
  • 山口百恵がシングル「としごろ」で歌手デビュー
  • NASAが水星探査機「マリナー10号」打ち上げ

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