Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
1950年代のBRAUNデザインを彷彿させるビンテージ・カセットコーダー「SONY LL-CASSETTE-CORDER TC-1165 Magazine Matic EM-L(lesson)」
秋の気配を感じながらも日中はまだ暑い日もあるこの頃、蒐集にはいい季節だ。夏のころよりも湿度も低くなるので移動にはもってこいである。そして最近は遠出より、都内の電気店などを仕事の途中に寄って物色することも多く、先日もふらりと寄った電気店で1970年代頃のカセットテープを入手した。この時代のカセットテープは本体の作りがしっかりしていて、作りの精度もよく、プレーヤーにカチッと収まるのが気持ち良い。そんな中、発掘して今回紹介するプロダクトは1970年に発売されたソニーのカセットプレーヤーで、当時発売されていた中では一番シンプルなスタイルの製品になる。
当時のカセットプレーヤーシリーズを、ソニーは「マイクの要らない録音機・マガジンマチック」という名称で販売していた。TC-1165はシリーズの中ではLL機として、主に語学学習用の製品だった。そのため、他のプレーヤーと比べてデザインがシンプルだったと思われる。それでは本体を見てみよう。
このころの製品には専用のビニール製バッグが付いており、通常はバッグに保管して、使う際にはバッグからいちいち取り出していた。カセットプレーヤーが高価で貴重なものだった時代を思い起こさせる。
TC-1165は横置きタイプの製品だが、本体を立てて正面から見るとカセットの位置とスピーカーのレイアウトが大変美しく、当時の他の機種と比べてもシンプルな美しさは際立っている。
学習教材用として飾りのないデザインは、筆者の好きな業務用機器のような雰囲気も漂っている。
SONYのロゴもまだデザインが統一されていない頃で、今のものと違っている。ロゴの横にはポジション切替えスイッチがある。
置いた状態での正面から見た姿も、本体のほぼ半分でカセットと操作部分が別れていて良いバランスになっている。
そしてカセットの操作部はピアノ式のレバーでスッキリとレイアウトされている。その下にボリュームや音質調整、入出力用のジャックが奇麗に並んでいるのが分かる。
カセットテープのカウンターは数字がかなり小さく見辛いしかもしれない。
カセット部分は開口部が広く、カバーも透明なのでテープの出し入れや、テープの位置も確認し易い設計だ。
この時代の電源コードは4ピンで、電源ジャックは特殊な構造になっている。
その横は電池ケースになっており、単二乾電池4本で動作する。
TC-1165で特に目立つ機能はないが、フォルムの美しさにプロダクト好きの方なら1台手に入れても良いかもしれない。
「SONY LL-CASSETTE-CORDER TC-1165 Magazine Matic EM-L(lesson)」
発売時期: 1970年
1970年(昭和45年)に起きた主な出来事
- 日本万国博覧会(大阪万博)開幕
- ビートルズ解散
- トミーが「トミカ」発売