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イベントレポート

衛星測位で自律走行する自作ロボットカーが勢揃い! 「GPS・QZSSロボットカーコンテスト2015」

高レート測位のGPS受信機を利用してハイスピードを実現

競技は、まずダブルパイロンレースからスタートした。2つのパイロンの周りを8の字に回り、パイロン間を正確に往復する回数を競って、競技終了時の合計ポイントが得点となる。ポイントは、パイロンを半周すると10点、パイロン間の中心線を通過すると10点で、立ち往生したときなどに救済措置を行うとマイナス5点となる。

ロボットカーが停止してしまうなどトラブルが発生した場合は、制限時間の3分以内であれば何度でもリトライが可能だが、それまでに獲得したポイントはクリアされる。 

パイロンの配置。 パイロンの配置。

ロボットカーが途中で立ち往生してしまったり、発進できなかったりするトラブルは決して少なくない。今回はエントリーした14チームのうち、DNS(スタート前の棄権)が2チーム、スタートしたもののポイントを取得できず0点に終わってしまったチームが3チームあった。

ダブルパイロンレースの様子。 ダブルパイロンレースの様子。
パイロン間を疾走するロボットカー。 パイロン間を疾走するロボットカー。

そんな中、すばらしい走りを見せたのが、エントリーNo.3の「Kevin」(チーム「Amano Lab.」)だ。Kevinは前回、ダブルパイロンレースおよびQZSSスクランブルのダブル優勝を果たしたロボットカーで、今年はぬいぐるみを装着したボディで登場した。走行中は左右に少し蛇行するときもあったが、パイロンの近くをしっかりと周回し、260ポイントという高得点を獲得した。

前回のダブルパイロンレースで優勝を果たしたKevin。 前回のダブルパイロンレースで優勝を果たしたKevin。

製作チームの1人である早稲田大学理工学術院総合研究所の明比建さんに今回のKevinの特徴を伺ったところ、前回は機体の方角を知るのに地磁気センサを使っていたが、今年はGPS受信機だけで方角を決める仕様にしたため、マイコンボードの枚数が減ってシンプルな構成になったとのこと。

また、一般的なGPS受信機は1秒間に1回の測位だが、Kevinは1秒間に5回の測位が可能(5Hz測位)な受信機を使用するとともに、RTK(リアルタイムキネマティック)の補正信号も組み合わせて高精度な測位を実現した。RTKの処理やスピードコントロールを行うため、小型のWindows PCも搭載されている。

Kevinの軽快な走り。

Kevinがかなりの高得点を獲得したため、もはやこれを超えるロボットカーは現れないかと思いきや、競技中盤を過ぎたあたりで、それを上回る310ポイントという高得点を叩き出したロボットカーが出現した。エントリーNo.11の「GRASSHOPPER」(チーム「FNCT」)だ。福井工業高等専門学校(福井高専)の小川久介さん、牛若光太さんのコンビが開発したというGRASSHOPPERの特徴は、なんといってもスピードが速いこと。ユーモラスなバッタの外装を身に付けて、軽やかにフィールドの上を疾走しつつも、パイロンに近づくとしっかりと方向を変えて流れるようなコーナリングを見せてくれる。

バッタの外装を身に付けたユーモラスなGRASSHOPPER。 バッタの外装を身に付けたユーモラスなGRASSHOPPER。

GRASSHOPPERはKevinを上回る、1秒間に10回の測位が可能(10Hz測位)な高レート測位のGPS受信機を使用することでハイスピードを実現した。ただし、こちらはKevinとは違って方向を検出するのに地磁気センサを使用している。小川さん、牛若さんの話によると、センサの調整などが大変で、まともに走るようになるまではとても苦労したという。

GRASSHOPPERも高レート測位のGPS受信機を搭載。 GRASSHOPPERも高レート測位のGPS受信機を搭載。

ダブルパイロンレースはQZSSスクランブルを間に挟んで2回レースが行われたが、1回目に記録したGRASSHOPPERの310ポイントとKevinの260ポイントを超えるチームは現れず、初参加にもかかわらずGRASSHOPPERが見事に優勝を果たし、Kevinが準優勝となった。

ハイスピード走行で優勝したGRASSHOPPER。

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