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戦後復興期から日本が目指したデザインの歩み——モダンリビングへの夢—産業工芸試験所の活動から(小平市)

1950年代、国内生業と輸出産業の振興を、工芸および今日的な意味でのデザインから産業工芸試験所が行った取り組みを紹介する「モダンリビングへの夢—産業工芸試験所の活動から」展が2017年8月13日まで武蔵野美術大学 美術館・図書館で開催されている。1950年代から60年代に収集された参考品や試作品など約150点を展示している。

産業工芸の元になった参考品

当時産業工芸品を作るべく、国内外から集められた工業製品を産業工芸試験所で形、素材、機能性などを調査分析し、デザイン研究に役立てた。当時の貴重な収集品を一挙に見られるのが今回の展示の見どころの一つとなっている。

展示は参考品と試作品に分けて展示されている。参考品側は海外の(特にアメリカ)トレンドをつかむべく多くの製品を海外から収集し、技術革新やデザインの向上につなげていった製品が並ぶ。 展示は参考品と試作品に分けて展示されている。参考品側は海外の(特にアメリカ)トレンドをつかむべく多くの製品を海外から収集し、技術革新やデザインの向上につなげていった製品が並ぶ。
参考品:トレイ、デザイン:スティグ・リンドベリ 参考品:トレイ、デザイン:スティグ・リンドベリ
参考品:左ピッチャー/右ソースパン、デザイン:イェンス・クイストゴー 参考品:左ピッチャー/右ソースパン、デザイン:イェンス・クイストゴー

海外で収集した参考品は、主に海外派遣者や留学生などが海外の市場で買い付けたもの。北欧やアメリカでの発売年と同時期に収集した物もあり、当時の研究者が感度良く熱心に収集していたことが伝わってくる。

参考品:ボウル、デザイン:アルヴァ・アアルト 参考品:ボウル、デザイン:アルヴァ・アアルト

日本のインダストリアルデザインの基礎となった

集められた参考品を研究し、輸出用の製品開発のために多くの試作品が作られた。デザインだけでなく、素材の質の向上や制作方法の研究など多岐にわたり研究試作が行われていた。

試作品側は、海外に輸出する製品を作るべく研究試作が行われたため、ランプや洋食器など当時の日本にはあまりなかった物が多い。そのため何がちょうどよいサイズなのかなど本当にイチから試行錯誤したらしい。 試作品側は、海外に輸出する製品を作るべく研究試作が行われたため、ランプや洋食器など当時の日本にはあまりなかった物が多い。そのため何がちょうどよいサイズなのかなど本当にイチから試行錯誤したらしい。
試作品:サラダボウル 純量産に対応するために、非円でもろくろで整形できるように機械の開発から行った。 試作品:サラダボウル 純量産に対応するために、非円でもろくろで整形できるように機械の開発から行った。
試作品:金箔置きキャンディーボックス(左)、シガレットボックス(右) 試作品:金箔置きキャンディーボックス(左)、シガレットボックス(右)
試作品:寄木細工組箱 試作品:寄木細工組箱

家紋をベースにモダンな文様をあしらったボックスや、寄木細工の技術はそのままに形のみシンプルにしたり、海外向けではあるものの日本らしさを残したデザインが今でもおしゃれに感じる。

試作品:金属洋食器 今でも生産されている洋食器。1960年代のまだまだ洋食器が普及していない時代に完成度の高いデザインを生み出している。 試作品:金属洋食器 今でも生産されている洋食器。1960年代のまだまだ洋食器が普及していない時代に完成度の高いデザインを生み出している。
試作品:陶器スタンドライト 左は埴輪モチーフ、右は灯籠モチーフ 試作品:陶器スタンドライト 左は埴輪モチーフ、右は灯籠モチーフ

1960年代に入ると、輸出向けから国内向けにも研究対象がシフトしていく。東京オリンピックの時期を迎え、団地などが増え日本人の生活スタイルも急速に変化し、物質的豊かさとともに身の回りの製品も変化していった。

試作品:コーヒーセット 1964年度に試作された物で、昭和の日用雑器感が出てくる。 試作品:コーヒーセット 1964年度に試作された物で、昭和の日用雑器感が出てくる。

ものづくりにおいて試作やリサーチの重要性や、当時のものづくりへの真剣な取り組みを、試作品/参考品を通じて感じられる展示となっているので、ぜひ会場に足を運んでほしい。

モダンリビングへの夢—産業工芸試験所の活動から
会期:2017年5月22日(月)~8月13日(日) 平日10:00~18:00(土曜、 特別開館日は17:00閉館)
休館日:日曜、祝日 ※8月13日(日)は特別開館
会場:武蔵野美術大学美術館 展示室2(東京都小平市小川町1丁目736)
入場料:無料
オフィシャルサイト:http://mauml.musabi.ac.jp/museum/archives/11107
主催:武蔵野美術大学 美術館・図書館
共催:武蔵野美術大学 造形研究センター

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