今週行ってみたいイベント
あなたにぴったり、みんなにぴったり新しいものづくりとは——「ぴったりファクトリ」(お台場)
大量生産で画一的に作られたものにあふれた世の中で、より個人にぴったりあうものを作り提供するためにどのような事物が必要か。デジタルファブリケーション技術や感性定量化技術の研究成果から新たなものづくりを紹介する展示「ぴったりファクトリ」が2019年9月21日まで日本科学未来館で開催されている。
個々の個性に“ぴったり”フィットするものづくり
日本科学未来館の常設展「メディアラボ」は、先端情報技術による表現の可能性や、新しい世界観を提示する展示を定期的に行っている。本展では「ぴったり」をテーマに、田中浩也氏のデジタルファブリケーション技術研究と、長田典子氏による感性定量化技術研究を通して、新しいものづくりを紹介する内容となっている。
課題解決するものづくりのように、いままで趣味領域で楽しむことが多かったデジタルファブリケーションも、社会課題解決の手段としても使われ始めている。作業療法士がデジタルファブリケーション技術を生かして身体の動きに課題を抱える人達一人ひとりのケースに合わせたぴったりなものづくりを行う取り組みが紹介されている。また造形だけで各個性にフィットさせていくのではなく、素材や作る技術から“ぴったり”を生み出そうとしている研究も紹介されている。柔軟で弾力があり肌になじみのよい素材、食べられる素材を出力するフードプリンター、液体を含んだゲル素材を出力するゲルプリンターなど、個人差のある満足感を満たすために、多様な素材を用いてものづくりをおこなうことが必要だそうだ。
感性定量化技術研究の展示では人間が見たり触ったりしたときに感じる、気持ちよさや、不快感などさまざまな主観をデータ化し、ものづくりに役立てる研究を紹介している。この研究では個人個人で違う感じ方の個性を定量化することができ、データを増やすことで人間が共通して感じることのできる感覚を導き出すことも可能になるのだ。個人にもぴったり、みんなにもぴったりといった感じだ。
本展示では、さまざまな人に最適化されるもののカスタマーエクスペリエンスが生まれる瞬間を見ているような感覚を覚えた。デジタルとは違い、リアルな“物”は形状、硬さ、重さ、質感などさまざまな要素が入り混じっており、多方面からアプローチしないと使いやすさや心地よさは生まれない。新しい素材を開発し、どんな形や触感が心地よいと感じるのかが、データとして一般化又は個別化されることで、いつか誰にでも“ぴったり”が提供できる社会が生まれるのだと思う。
取材日(6月24日)の時点で、実験参加者は6980人となっていた。実験モニターを集めるのはなかなか難しいのだが、人がたくさん集まるところで展示を行うことで、普通に実験をするよりたくさんのデータを収集できる機会にもなっていて、施設のメリットを生かした展示となっている。ぜひ会場に足を運んで実験にも積極的に参加してみてほしい。
「ぴったりファクトリ」
会期:2019年5月16日(木)~9月1日(日)10:00~17:00
会場:日本科学未来館 3階 常設展「メディアラボ」
入場料:大人620円、18歳以下210円(※常設展料金)
休館日:火曜日(ただし、7/23・30、8/6・13・20・27は開館)
オフィシャルサイト:https://www.miraikan.jst.go.jp/info/1904181124165.html
主催:日本科学未来館