今週行ってみたいイベント
伝統の技術とデジタル製造技術をどう連携させるか——「Design Questions 4–芸術・犯罪・アルゴリズム+デジタル大工」(秋葉原)
素材科学、繊維技術、工学、応用生物学における専門的研究を行う京都工芸繊維大学の、KYOTO Design Lab(D-lab)が行うレジデンスプログラムの成果を紹介した「Design Questions 4 – 芸術・犯罪・アルゴリズム + デジタル大工」が2019年8月24日までアーツ千代田3331で開催されている。
伝統的な技術の継承、デジタル製作技術にどこまで託せるのだろう
京都工芸繊維大学が設立したKYOTO Design Labは、毎年国内外のデザイナーを招待してさまざまなプロジェクトを行っている。本展では、海外の若いデザイナーを6カ月間招いて京都工芸繊維大学の教員たちとデザイン研究を行う「D-labデザイン・アソシエイト・プログラム」のうち、ネスター・ペスタナのプロジェクト「芸術・犯罪・アルゴリズム ── 2.5Dプリンティングが描く未来」と、マーク・ラバンのプロジェクト「デジタル大工 ── 伝統木工加工技術の再解釈」の2プロジェクトが紹介されている。Fabcrossでは読者の関心が多いであろう「デジタル大工 ── 伝統木工加工技術の再解釈」について紹介する。
宮大工などがいままで何世代にも渡って受け継いできた技術や知識の継承者が少なく、消滅してしまう危機にあることから、本プロジェクトでは技術や知恵のデジタルフォーマットへの変更と、デジタルフォーマット化された技術を、日本の伝統的な建具に関する知識を持たない新しい世代の職人達が活用するために、デジタル製造技術の活用法を理解することに焦点を当てた取り組みとなっている。
本プロジェクトの特徴としてもうひとつ上げたいのは、地方特有の素材に関する危機感にも触れ、問題解決に取り組んでいるところだ。本プロジェクトでは北山杉という、近畿地方、京都市北部に産する杉を使っている。昔からその地方で使われていた木材だ。伝統的な素材の問題として、それらの製造を支える知識や技術は、特定の文化的文脈に閉じ込められていて、新しいデザインの活用法が見出されない限り失われてしまうことがあげられる。本プロジェクトは、北山杉をデジタル製造技術によって一変させることで、現代の新しい文脈の中に位置づけ、用途の可能性を広げようとしている。またデザイン的な部分だけでなく、デジタル製造技術が凹凸のある形の素材の加工に多大な貢献をもたらす可能性を示しているところも興味深い。
筆者も最近は技術のデジタル化や、新素材について注目することが多い。だがデジタル化した技術を本来使うべき職人がどれだけ活用しているのか、新素材ではなく既存素材、特に特定の地方でしか使われておらず失われかけている素材があることにあまり注視していなかったことを、本展示で気づくことができた。このような取り組みや考え方が全国に広がってほしいと思う展示だ、ぜひ足を運んでみてほしい。
「Design Questions 4–芸術・犯罪・アルゴリズム+デジタル大工」
会期:2019年6月22日(土)~8月25日(日)12:00~19:00
会場:KYOTO Design Lab 東京ギャラリー(東京都千代田区外神田6丁目11-14 3331 Arts Chiyoda)
入場料:無料
休館日:月・火
オフィシャルサイト:
https://www.d-lab.kit.ac.jp/events/2019/design-questions-4/
主催:京都工芸繊維大学 KYOTO Design Lab
※記事初出時、文中に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。