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松崎純一が語るウォークマン40周年展

あの頃の自分に戻れるウォークマン40周年記念展示はとても熱かった

オーディオの歴史を常に革新してきた「ウォークマン」の展示イベント「#009 WALKMAN IN THE PARK」が、9月1日まで銀座ソニーパークで開催中だ。今週行ってみたいイベントとして紹介したイベントだが、ラジカセをはじめとしたカジュアルオーディオに造詣の深いfabcross連載「Dig up the underground『プロダクト一機一会』」筆者の松崎順一氏に、各時代を振り返りながらあらためてレポートしてもらった。


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1979年の7月1日発売のウォークマン初号機「TPS-L2」から、ウォークマンは2019年で実に誕生から40年を迎えた。ウォークマンは日本のみならず、世界にその影響を与え続けているオーディオプレーヤーだ。そんなウォークマンの現在/過去/未来を体感できるイベントが「#009 WALKMAN IN THE PARK」だ。会場は銀座ソニーパークの全フロアーを使用し、これまでに発売されたウォークマンの名品がさまざまなアプローチにより体感できる、魅力あふれる展示になっている。

ウォークマンの歴史はソニーイズムの歴史でもあった。

東京メトロ銀座駅と直結する入り口の壁面にはイベントロゴとFF/REWのマークが。 東京メトロ銀座駅と直結する入り口の壁面にはイベントロゴとFF/REWのマークが。

今、東京にある銀座ソニーパークの中で「#009 WALKMAN IN THE PALK」というウォークマンの誕生から40周年記念展示が開かれている。展示といってもソニーパークの地上フロアーから地下4階までを使って、インスタレーション的な、ソニーらしいコンセプチュアルな展示になっている。東京メトロの銀座駅からもそのまま来場できるので、ふらっと立ち寄れる。

黄色が夏の陽射しに映えて通る人の注目を浴びる「WM-F5」。 黄色が夏の陽射しに映えて通る人の注目を浴びる「WM-F5」。

そして銀座ソニーパークの地上にはウォークマンで初の防水タイプとして登場した「WM-F5」のイエローバージョンの大型オブジェが、「Big Walkman」として設置され数寄屋橋交差点から望める記念展のアイコンになっている。開催期間中である真夏のお盆に訪れた。当日は台風の影響で天候が目まぐるしく変わる中だったが多くの来場者が訪れていた。ちなみに筆者がウォークマンに初めて興味を持ったのは「ウォークマンII」が発売された1981年だった。それは人生で2度目にソニーの製品の魅力に惹かれた時だった。

1960年生まれの筆者が初めてソニー製品と出会ったのはアキバ少年だった小学生の頃、秋葉原の電気屋さんのショーウインドーに飾ってあった発売されたばかりの新製品、「スカイセンサー5800」だった。スカイセンサー5800はBCL(Broad Casting Listener:海外の短波放送を聴く趣味)の火付け役になった短波ラジオだ。このラジオはBCLを楽しむための性能もさることながらデザインが秀逸で、当時のメカ好き男性たちの心を捉え大ヒットした。そしてスカイセンサー5800登場を機に一気にBCLブームが盛り上がり、各家電メーカーはこぞってBCL向けのラジオを世に送り出した。

それは再生専用から始まった。

そんな家電業界の中で常にイノベーターとして魅力のある製品を世に送り続けているソニーが、カセットテープ全盛の時代に、当時のカセットを使用したオーディオ製品の流れとは真逆的な発想から生まれたのがウォークマンだった。当時の一般的なオーディオ製品は新しい機能が開発されると足し算的に多機能化していくのが一般的であった。その流れの中でウォークマンは、ソニーが録音という重要な機能を省き、再生専用という新たな文脈で製品化した、開発中は社内でも議論を呼んだカセットプレーヤーだった。

歴史的な初代ウォークマン、本体はすでにあった小型カセットレコーダー「プレスマン」から流用された。 歴史的な初代ウォークマン、本体はすでにあった小型カセットレコーダー「プレスマン」から流用された。

しかし1979年7月に初代「ウォークマン」(TPS-L2)が発売されると、夏休みの期間中に口コミでウォークマンの面白さと音の良さが広まり、9月には一気にブームになったのである。さらにそのユニークさに目を付けた丸井が当時月産1万5000台のうち、1万台のオーダーを入れ、プレミアを付けて販売したにも関わらず常に完売状態だったという。筆者も若い頃には赤いカード(丸井のクレジットカード)を持ち、高額なものは丸井の月賦で購入していたので当時の若者が丸井に押し寄せたのもよく理解できる。

そんな1号機からスタートしたウォークマンは次々に新製品を発表し、その都度話題を呼んだ。中でも初代から高性能化と小型化を果たした「ウォークマンII」(WM-2)はその完成度から250万台の大ヒットを記録した。筆者が初めて購入したのもこのタイプだ。

地下4階の壁面にウォークマンIIのバリエーションが並ぶ。 地下4階の壁面にウォークマンIIのバリエーションが並ぶ。

そしてカセットケースサイズや、オートリバース、録音も可能なプロシリーズ、そして防水タイプのスポーツモデル(WM-F5)は筆者も1台持っているが、スタイルの良さと鮮やかなカラーリングで今でもマニアの人気を誇っている。

そして当時の逸話として、ソニーのウォークマンの爆発的な人気を受け、他の家電メーカーもこぞってコンパクトなカセットプレーヤー市場に参入し、アイワからは「カセットボーイ」、東芝からは「ウォーキー」、パイオニアからは「ポケッタブル・ステレオ」など各社さまざまなネーミングで宣伝を始めたが、お店に行くとほとんどの人が「ウォークマン」しか覚えておらず、結局、ウォークマンの販売に貢献したという。さらに製品を紹介したいがせっかくなので、40周年の記念展示を紹介しながら振り返る。

インスタレーション方式の展示もソニーらしさの表現

40周年の記念展示は銀座ソニーパークの地下2階をメインに地下1階、3階、4階と、全てのフロアーで行われている。

筆者がスタートした場所は地下1階で、ここはソニーパーク全体のインフォメーションとグッズショップがあり、展示記念グッズ等が購入できる。なかでもTシャツは大人気のようで当日もほぼ完売状態、残っていたのは子ども用だけだった。そして会場内を廻り、スタンプを集めると記念グッズがもらえるスタンプラリーも開催中だった。記念グッズの交換もこのフロアでできる。筆者が頂いたのは記念シールだった。

地下1階には通路にもさりげなく展示がされている。 地下1階には通路にもさりげなく展示がされている。

そしてメイン展示は会場を回遊しながらさまざまなジャンルの著名人40名にMy Story、My Walkmanとして「ウォークマン」との思い出と、当時聴いていた曲をウォークマンで実際に聴ける設定になっている。カセットテープからCD、そして現代のハイレゾまで、ウォークマンの遍歴も楽しめる。

展示スペースは広くゆったりと回遊できる。 展示スペースは広くゆったりと回遊できる。

少し惜しいのがヘッドフォンで、全て現代のものを使用しているが、ヘッドフォンも当時のものを使えればより深く味わうことができると感じた。ただ実際には難しいのだろう。その中でも筆者が感動したのが初代「Discman」の「D-50」がスムーズに動いていたことだ。この展示は全てのフロアーに渡って展示されている。展示台はスケートボードのランプを解体したような台で意外とカッコよかった。知り合いの著名人の方も何人かおり、当時の思い出を興味深く共有できたのが嬉しかった。

初代ディスクマンD-50、ブラックも精悍だが、赤もかっこよい 初代ディスクマンD-50、ブラックも精悍だが、赤もかっこよい

そして地下2階ではCustom Walkmanというインスタレーション展示が行われており、見に行った時は「HOT LINE 2019」という作品が展示されていた。新旧のウォークマンやソーラーパネル、LEDなどを組み合わせたメカニカルな作品は現代ならではの表現だと感じた。Custom Walkman展示スタート時には友人のアーティスト、ボンさんの展示だったと聞いた。ボンさんには以前筆者のラジカセをカスタム化してもらったことがあり一度展示を見たかった。

HOT LINE 2019:コンセプチュアルなアーティストによるカスタムウォークマンの展示。 HOT LINE 2019:コンセプチュアルなアーティストによるカスタムウォークマンの展示。

会場を回遊していると目に付くのが、壁に貼られた「WANTED! Walkman」のポスターだ。ソニーでも持っていない幻の“お宝ウォークマン”のWANTED!で、蒐集家の筆者としてはぜひ探して見たいと蒐集心に火が灯った。特に沖縄地域限定のウォークマンはたぶん当時の販売数もわずかで、現在残っているものが限りなく少ないのだろう。沖縄に行く機会があったらぜひ探してみたい。

WANTED!の一つ、初代ウォークマンの箱、誰かお持ちではありませんか。 WANTED!の一つ、初代ウォークマンの箱、誰かお持ちではありませんか。

40年の歴史が詰まった圧巻の壁面展示

さらに地下4階では歴代のウォークマンが会場奥の壁面約6メートルに渡って展示されている。一口に「ウォークマン」と言っても本当にさまざまなバリエーションがあり、今回展示されているものも膨大な種類からかなりセレクトされたものだと思っている。基本はカセット、CD、MD、MP3、ハイレゾ系モデルとみた。筆者がコレクションしているものも多かったが見たことがないモデルも結構あった。さらに日本では発売されていない海外モデルも多く、これらは一見の価値があると思う。国内のウォークマンとの違いは、デザインもあるが海外モデルはFMの受信周波数が88MHzからなのですぐ判断できるだろう。また展示品にはキャプションがないのでいつごろの製品かが分かればさらに良かった。

このウォークマンは海外仕様のモデル。 このウォークマンは海外仕様のモデル。

しばらくここで展示を見ていると、スタッフの方からアンケートを依頼された。スマホを使った細かいアンケートだが完了するとオリジナルの缶バッジがもらえたが、デザインはとてもシンプルでウォークマンロゴを入れてほしかったところだ。

こちらはJ-リーグのチームロゴ入りモデル。その下にはビーンズの姿も。 こちらはJ-リーグのチームロゴ入りモデル。その下にはビーンズの姿も。

1979年から40年間という時の流れの中で、世界中のさまざまな人がそれぞれの思い出のウォークマンと関わっていたはずで、会場ではウォークマンとの思い出も募集中だ。音楽プレーヤーとして常に進化を続けてきたウォークマンだが、これからの時代にはどういう方向に進んでいくのか大変興味があるところだ。そして今回の展示はウォークマンの歴史を振り返るというよりも、それぞれの時代のウォークマンが構築したファッションとしてのメッセージを強く感じられた。展示は9月1日までとのこりわずかとなっているが、時間があればぜひ、時代を変革したソニーのポータブルオーディオの世界を体験してみてはいかがだろうか。きっとものづくりに関しての発想のヒントになるものが発見できるのではないかと思っている。

「#009 WALKMAN IN THE PARK」
会期:2019年7月1日(月)~9月1日(日)10:00~20:00
会場:Ginza Sony Park(PARK GL/地上フロアー〜PARK B4/地下4階)
入場料:無料
休館日:無休
オフィシャルサイト:https://www.ginzasonypark.jp/release/19006/
主催:Ginza Sony Park、ソニーホームエンタテインメント&サウンドプロダクツ

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