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テクノロジーがつなぐ生き物と生き物——「AKI INOMATA:Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」(青森県十和田市)

やどかりに「やど」を渡してみるなどの作品で、デジタルファブリケーションを駆使し、自然と人間の関係をアートのフィールドで表現し注目を集めるAKI INOMATAの展覧会「AKI INOMATA:Significant Otherness 生きものと私が出会うとき」が、2020年1月13日まで青森県の十和田市現代美術館で開催されている。

美術館では珍しい生体展示が!注目度の高い企画展

9月に入り、とても気持ちの良い時期に個展がスタートする。 9月に入り、とても気持ちの良い時期に個展がスタートする。

生物の観察と調査を通して独創的な作品を作り出す美術家AKI INOMATA。日本の美術館では初となる個展が十和田市現代美術館でスタートした。3Dプリンターで制作した各国の都市を模した殻をやどかりに提供して住み替えてもらう作品「やどかりに『やど』をわたしてみる」などで注目を集め、デジタルファブリケーション界では、YouFab Global Creative Awards 2014グランプリ受賞、アート界ではAsian Art Award 2018特別賞受賞など他ジャンルから評価される、着実にキャリアを積んでいる若手アーティストだ。

「girl, girl, girl , , ,」:生体展示の作品、ミノムシに女性服の端切れを渡し、おしゃれな“みの”を作ってもらうプロジェクト。 「girl, girl, girl , , ,」:生体展示の作品、ミノムシに女性服の端切れを渡し、おしゃれな“みの”を作ってもらうプロジェクト。
女性服の端切れをまとうミノムシ。これからみのをさらに大きくし、冬に冬眠をするとのこと。 女性服の端切れをまとうミノムシ。これからみのをさらに大きくし、冬に冬眠をするとのこと。

本展のタイトル「Significant Otherness/シグニフィカントアザネス(重要な他者性)」は、アメリカの科学史家ダナ・ハラウェイが提唱した、地球上に生きる生物種との関係のあり方に着想を得たものだ。ヤドカリや、ミノムシなど十和田市現代美術館初の生体展示を行っていて、日々違った展示風景を作り出している。人間と生物、互いにどう影響をし合って生きているのか、どんな距離感で生きるべきなのか、さまざまな事を考えさせられる展示となっている。

「やどかりに『やど』をわたしてみる-Border-」:3Dプリンターで造形した「やど」を、ヤドカリに渡して使ってもらうという作品。さまざまな都市を造形した殻(やど)を背負ったヤドカリを見ていると、その国のアイデンティティを悩みながら背負う人間を見ているようにも思える。 「やどかりに『やど』をわたしてみる-Border-」:3Dプリンターで造形した「やど」を、ヤドカリに渡して使ってもらうという作品。さまざまな都市を造形した殻(やど)を背負ったヤドカリを見ていると、その国のアイデンティティを悩みながら背負う人間を見ているようにも思える。
3Dプリンターで造形した本作は、ヤドカリに悪影響を及ぼさないように洗浄などを念入りに行っており、動物への細かな配慮がなされている。 3Dプリンターで造形した本作は、ヤドカリに悪影響を及ぼさないように洗浄などを念入りに行っており、動物への細かな配慮がなされている。
「進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)」:タコの祖先にあたるのではないかといわれているアンモナイトの殻を3Dプリントで再現しタコに与えてみるプロジェクト。 「進化への考察 #1:菊石(アンモナイト)」:タコの祖先にあたるのではないかといわれているアンモナイトの殻を3Dプリントで再現しタコに与えてみるプロジェクト。

タコに祖先の記憶があるかは定かではないが、タコはこの殻を非常に気に入ったそうだ。殻をタコから取ろうとするとタコは殻から離れず水をかけたりして抵抗したそうだ。

アンモナイトの化石に、3Dプリンターで殻の一部を想像し復元した作品。 アンモナイトの化石に、3Dプリンターで殻の一部を想像し復元した作品。

生体展示以外にも、タコとアンモナイトについて考察した作品や、震災の影響を受けたアサリを観察した作品など、映像やUVプリンターを使用した平面作品も展示されている。

「ギャロップする南部馬」:本個展のために作られた新作、南部藩(十和田地域を含む)でかつて飼育され明治期に絶滅した南部馬を題材にした映像作品。3Dプリンターで南部馬の骨格標本を再現し、十和田の自然と共に映像に落とし込んだ。 「ギャロップする南部馬」:本個展のために作られた新作、南部藩(十和田地域を含む)でかつて飼育され明治期に絶滅した南部馬を題材にした映像作品。3Dプリンターで南部馬の骨格標本を再現し、十和田の自然と共に映像に落とし込んだ。
南部馬をふくめ“馬”は十和田市のシンボルのようにもなっている。美術館がある通りには馬をモチーフにした装飾がたくさん設置されている。作品を見て美術館のまわりにある馬モチーフを探してみてはどうだろう。 南部馬をふくめ“馬”は十和田市のシンボルのようにもなっている。美術館がある通りには馬をモチーフにした装飾がたくさん設置されている。作品を見て美術館のまわりにある馬モチーフを探してみてはどうだろう。

生き物との関係、自分とはなにか、自然とはなにか、テクノロジーと生き物、どんな視点から見ても面白い展示となっている。また会期期間中に季節が移ろうなかで生物がどんな変化を見せるかも楽しみでもある。ぜひ足を運んでみてほしい。

「AKI INOMATA:Significant Othernessシグニフィカント・アザネス 生きものと私が出会うとき」
会期:2019年9月14日(土)~2020年1月13日(月)9:00~17:00(入場は閉館の30分前まで)
会場:十和田市現代美術館(青森県十和田市西二番町 10-9)
入場料:企画展+常設展セット券1200円、企画展のみは一般800円、高校生以下無料
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日)、12月28日(土)~1月1日(水)休館
オフィシャルサイト:
http://towadaartcenter.com/exhibitions/aki-inomata/
主催:十和田市現代美術館

※記事初出時、文中に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。

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