fabなび
【休業中】ダイナミックラボ(鹿児島県南さつま市)
日本全国のファブ施設を紹介する「fabなび」。今回は鹿児島県南さつま市の「ダイナミックラボ」。鹿児島中央駅から車でおよそ30分、廃校となった小学校を改装した日本最大級のファブ施設だ。
※当施設は移転につき休業中です。本記事は取材当時のものです。(fabcross編集部追記 2023年5月11日付)
ダイナミックラボを運営するのは、一般社団法人「その辺のもので生きる」の小崎悠太さん(通称「テンダー」さん)。エネルギー問題への関心から、電気やガス、水道などのインフラは契約せず、できるだけ自分で賄うオフグリッドの生活を実践している。
ソーラーパネルを用いた自家発電や、火起こし、動物の解体といったアメリカ先住民の技術を習得したのち、九州に移住。もともと電子楽器など卓上サイズの工作には親しんでいたが、NPOでの出会いがきっかけで大規模なものづくりにも関心を持つようになった。
そんな折、小崎さんの働きかけによって、南さつま市の大坂(だいざか)小学校の取り壊しが撤回され、地域から建物を貸与されることになる。そこで、廃校となった大坂小学校を日本最大級のファブ施設として再活用することを決意。クラウドファンディングによって目標金額の250万円を大きく上回る580万円を集め、2017年5月1日にダイナミックラボが正式オープンした。
施設の整備や運営にはクラウドファンディング中から多くのボランティアが参加しており、機材も全体の9割が寄付品だという。敷地内にはラボに出入りするメンバーで作成したピザ窯や調理台が並び、地域住民から寄付されたソーラーパネルも数多く設置されている。
ダイナミックラボの理念は、できるだけ地下資源を使わずに、廃材やゴミなど普段見捨てられている素材からものを作ることだ。
たとえば、ラボで作成したプラスチックの粉砕機と射出成型機を使えば、商店の廃容器や海岸の漂着ゴミなどからプロダクトを作ることができる。オープンソースのプラスチック再生プロジェクトである「Precious Plastic」に感銘を受けて始めた試みだが、企業や学校と連携しながら、より価値の高いプロダクトや体験につなげていくことを目指している。他にも、アルミ缶を有効活用するための冶具を3Dプリンターで作っていたり、ラボ内での暖房や調理に薪を利用したりするなど、さまざまな場面でその理念を感じることができる。
施設の利用者は地域の家族連れが多いという。大坂小学校には使われなくなった体育館を改装したボルダリング施設があるため、そのついでにラボを訪れ、羽ばたき飛行機づくりや火おこし体験のワークショップを楽しんでいくそうだ。
一方、ダイナミックラボには宿泊できる環境が整っているため、長期滞在しながらものづくりを行うことも可能だ。過去にはトラックに載せられるモバイルハウスを作ろうという利用者が訪れ、地域住民と交流を深めながら3週間にわたって製作に没頭したという。他にも、家具職人やソーラー発電の研究者など、多様な人々が寝泊まりしながら各自のプロジェクトに取り組んできた。
小崎さん「ここはものづくりの施設であるだけでなく、ファブがある暮らしのグランドデザインを体験できる場所にしたいんです。そのために、ワークショップや一日利用という短期間の体験を充実させるだけではなく、長期滞在しながらものづくりに取り組む利用者を増やしていきたいと思っています。」
なお、長期滞在を支える仕組みとして、滞在期間に応じた利用料の割引きがあるほか、自分で作ったものを販売する環境も整備されている。廃材をリサイクルして作ったプロダクトが販売されていることは、ファブを通じた新しい価値づくりの象徴的な事例と言えるだろう。
今後もものづくりを中心に据えた運営スタイルは継続していくが、2018年の春には空き教室をシェアオフィスとして貸し出し開始する予定だ。また、将来的には無認可保育園や介護予防ジムなどの開設も予定しているという。取材中、近くで獲れたイノシシがラボに運び込まれる場面に遭遇したが、様々な人のくらしが交差する場所として、ダイナミックラボが地域に根付き始めたことを感じさせる出来事だった。
概要
所在地 | 鹿児島県南さつま市金峰町大坂3430 |
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営業時間 | 土/日/祝 10:00~17:00 |
URL | https://sonohen.life/ |
料金 | ワークショップ利用:500円~ 1日利用:1500円 |
その他、月単位での利用などは相談によって減額あり。 各種メニューについては公式サイトを参照のこと。 |