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ものづくりの人が知っておくべき権利

ハッカソンで考えたアイデアの扱いってどうなるの?覚えておきたい知的財産権のイロハ

ものづくりをする人たちにとって常に考えなければいけないこと、それは著作権や特許権などの法律関係のことです。人の著作物を勝手に使って問題になったり、新しく開発した技術をどう守り自分の権利として主張するかなど、何かを作ったり発表したりする人にとっていつも頭の痛い問題です。

著作権や特許権、商標権などのいわゆる「知的財産権」と呼ばれる法律の分野の構造を知ることは、ものづくりをし、アイデアを形にしたり世の中に発表したりする際にはとても重要なものになってきます。しかし、こうした権利に関してはなかなか知る機会がなかったり、時に権利に関して軽視しがちだったりします。

知的財産権を細かく見ていくと、保護される権利としては、図面や写真、テキストなどその人の創作物として認められる時にそれを保護する「著作権」、そして特許庁などに申請し登録したことで初めて効果を発揮する「産業財産権」の大きく2つに分類されます。そして、知的財産権の原則は、知的財産権で保護されるもの以外のあらゆる作品やコンテンツは、原則として公共財、いわゆる「パブリックドメイン」となることです。

産業財産権には、新規性のあるアイデアや発明をし、特許庁に申請した時に保護される「特許権」、物質の形状や構造、又はその組み合わせによる考案についての権利である「実用新案権」、模様や外観、色彩などのデザインに関する権利である「意匠権」、商品名やサービス名、ロゴなどを保護する「商標権」などが挙げられるでしょう。アイデアやコンセプト、ノウハウといったものは、パブリックドメインとして誰の権利で保護することもできません。アイデアやコンセプトを保護すれば、私たちの日々の生活や仕事において、多くの制限がかかることとなり、自由ではなくなる、ということからです。 

ライセンスをデザインするという発想

こうした知的財産権以外にも、近年ではオープンソースソフトウェアの活用や、著作権の新しいあり方として著作者自らが権利の保護範囲を規定する「クリエイティブ・コモンズ」なども登場してきており、デザイナーやクリエイターなどものづくりに携わる人たちにとって、こうした社会的な権利をきちんと自覚し、自身としての運用方法やルールを決めていくことが求められます。

これらの法律や権利は、それぞれの役割や存在意味を知ることによって、新しい可能性を見出すことができます。法律は、何かを制限するものだと思われがちですが、一方で何かを守るものでもあり、従来の排他的・独占的な知財運用ではなく、作品やコンテンツに合わせて作品の制作・販売・利用のライセンスを設計する「ライセンスデザイン」という考え方が提唱されるなど、クリエイティビティを加速させるオープンな知財戦略として法律を捉え直す動きもでてきています。 

ハッカソンで考えたアイデアの取り扱いを適切にするための参加同意書

近年増え続けているハッカソンやメイカソンなどのイベントにおいても、ルールとして、イベント内で行われた出来事や共有されたアイデアの権利に関して、参加同意書やFAQなどによって事前に規定するという取り組みも行われています。例に挙げた参加同意書は、2014年2月と3月に岐阜県大垣市で開催されたEngadget日本版と公益財団法人ソフトピアジャパンが「Engadget電子工作部in岐阜」というイベントを開催した際、シティライツ法律事務所の水野祐弁護士の監修のもと情報科学芸術大学院大学(IAMAS)の小林茂教授によって作成されました。同意書はGitHub上で公開されており、フォークしてカスタマイズして利用することができます。

こうした参加同意書が作成された背景として、ハッカソンなどのオープンな場においてあいまいに交わした約束が、後に事件や訴訟などに発展する恐れを未然に防ぐなど、ものづくりの共創環境を整備するということがあります。イベント主催者側、参加者側双方にとって、適切な知的財産権の取り扱いが求められていると言っても過言ではありません。

もはや知らなかったではすまされないものづくりの法律周り。ものづくりに関わる人にとって権利のあり方を知ること、その権利のあり方をどのように守り運用していくかを考えることは、ものづくりに関わる人すべてにとって、そして社会にとっても大きな意味を持つことになるでしょう。 

【取材協力】シティライツ法律事務所 水野祐弁護士

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