ものづくり都市ならではの企業/地域一体型イベント「デンソー夢卵」&「トヨタわくわくワールド」

私が楽しみにしているものづくりイベントは数多くあります。例えば、夏のMaker Faire Tokyoはその一つです。しかし、長らく愛知県に住んでいた私だからこそ、それ以上に楽しみにしているイベントが2つあります。それは「デンソー夢卵(ムーラン)」と、「トヨタわくわくワールド」です。
今年はこの2つのイベントが同時期に開催されると聞き、高まる胸を押さえながら愛知県まで見学してきました。
デンソー夢卵
夢卵はデンソーが主催するアイデアコンテストです。2年に1回、愛知県刈谷市のデンソー本社で開催されており、誰でも来場できます。コンテスト以外にも、ものづくり体験やステージショーなどがあり、子どもから大人まで丸一日楽しめます。 2022年は11月26日と27日の2日間開催されました。
JR名古屋駅から電車で約20分、刈谷駅から7分ほど歩くとデンソー本社が見えてきました。正門のアーチをくぐると、たくさんの人でにぎわっていました。

展示作品
夢卵はデンソー社内だけでなく、近隣の地域団体と協力して開催されています。デンソー本社内にある複数のビルで、27種類の展示や体験ブースがありました。そのいくつかを紹介します。
デンソーの森
大阪・関西万博Team DENSOが「未来の移動」をテーマに取り組んでいる作品の一つ。デンソーのマスコットキャラ「デンまる」くんを、全身を使い、感じ取りながら探し当てるゲームです。視覚情報がない代わりに、振動や音を頼りに探す必要があり、好奇心を刺激してくれます。

デンソー技術会DMC作品展
デンソー内のものづくり集団「DMC(DEES Maker College)」メンバーの作品展示。社外のハッカソン入賞作品や、ロボットが迷路を探索しゴールを競う「マイクロマウス」などが展示されていました。

デンソーとびものサロン
航空機など、いろいろな“とびもの”を研究しているデンソーとびものサロン。展示がとてもユニークでした。私が訪ねた11月26日には、偶然にも「県政150周年記念 ブルーインパルス展示飛行」が開催されており、なんとブース内でライブ映像の紹介が行われていました。

アイデアコンテスト
夢卵のメイン企画であるアイデアコンテストには、今年は3つの部門がありました。小学生から募った未来のモビリティのアイデアを具現化する「こども未来ソウゾウコンテスト」 、プログラミング熟練者がテクニックを駆使してデンソー製品をハックする「ソフトウェアアイデアコンテスト 熟練者コース」、そしてプログラミングを学習しながらアイデアを実現してみた「ソフトウェアアイデアコンテスト 挑戦者コース」です。ここでは、「ソフトウェアアイデアコンテスト 熟練者コース」から2作品を紹介します。
VRバトルドローン
デンソー製ドローン×ロボット台車×VRによるバーチャルゲームです。自動運転で使用されるSLAM(自己位置推定と地図構築の技術)を用いて、臨場感ある対戦ゲームとなっていました。

MABOTTA
デンソー製ロボットアーム「COBOTTA」による麻雀支援です。カメラで認識し、3Dプリント製のカラクリハンドエフェクターで牌(パイ)をつかみます。状況を自動で判断し、ゲームを支援してくれます。

アイデアコンテストの結果は公式HPに掲載されていますので、ぜひご覧ください。どの作品もとてもレベルが高かったです。
魔改造の夜
ペンギンちゃん大縄跳び
5羽のペンギンのおもちゃを魔改造し、1分間で大縄を多く跳んだチームが優勝する「ペンギンちゃん大縄跳び」。実際にペンギンちゃんの縄跳びを体験することができました。とてもかわいらしいです。

DVDプレーヤーボウリング
DVDプレーヤーを魔改造し、ディスクを投げて25m先のピンを最も多く倒したチームが優勝する競技です。展示の担当者に細かな構造を伺うこともできました。

デンソーギャラリー
デンソー本社では、展示ホール「デンソーギャラリー」も見学することができました。ここはイベントの有無に関わらず、いつでも見学することができます(通常は月曜日~金曜日開館)。デンソーの歴史や技術を知ることができます。

わくわくワールドとは
翌日、私は愛知県豊田市に向かいました。今度は、スカイホール豊田で開催されているわくわくワールドに参加します。
わくわくワールドは「とよたものづくりフェスタ実行委員会」と、トヨタ自動車の社内有志団体である「トヨタ技術会」が共同で開催するイベントです。毎年、愛知県豊田市で開催されており、今年で19回目となります。

はたらく車大集合
トヨタ自動車関連イベントだけあって、たくさんの車が展示されていました。子どもたちは制服でお仕事を体験することもできます。普段なかなか見かけないような車も展示されており、大人でも興奮すること間違いありません。

こども乗り物デザイン展
「こんな車があったらな」という子どもたちの願いを、トヨタ社員が実現する毎年人気の企画です。今年は「未来の楽しい乗り物」がテーマでした。
「かこ未来、月にも行ける うさピョンカー」は、うさぎが飛び跳ねる動きをモーターで再現し 、3Dプリンターや真空成型を使って骨組みを作り上げています。うさぎの毛もリアルに再現していて素晴らしいです。


他の作品も、子どもたちの発想を見事に実現していました。きれいな塗装や、細かなギミックまでこだわった作り込み。まるで製品みたいです。

アイデアコンテスト
目玉企画の一つです。今年は「笑顔」をテーマに2部門14作品が集結していました。「なんでもモビリティ部門」と「なんでもアイデア部門」です。実は私はこれまで、過去6年作る側での参加だったのですが、今年は初めて見る側での参加となりました。
なんでもモビリティ部門
出展されているモビリティは複数人で乗れる大きなものから、子ども向けの小さなものまでさまざまです。「FUN FAN Vehicle」は、今年一際大きな作品の一つでした。車内には大型ファンが搭載されており、密閉空間での換気はもちろん、走行の疾走感を味わうことができます。

「Smily Woorm」は丸くてかわいいモビリティが芋虫のように連結する乗り物です。丸いモビリティがそれぞれのマーカーを認識し連結できます。試乗では、WioTerminalというSeeedのマイコンをコントローラーにして動かしていました。

なんでもアイデア部門
こちらの部門は乗り物に限定せず、自由なアイデアで出場できます。「スカッとボウリング」は必ずストライクを取ることでみんなを笑顔にしてくれます。投げる動作を画像認識し、ボールが転がり始めるようです。

「Stylish Tissue」は私が好きな作品の一つです。ボタンを押すと、その回数分のティッシュが出てきます。ドリフトの白煙をティッシュに見立てているのですね。爽快感があり、何度でもやりたくなります。

ものづくり企画
トヨタ技術会では、毎年特別なものづくり企画があります。社内のエンジニアが技術を結集し、何か凄いものを作り上げるのです。昔はやはり自動車会社だけあって、乗り物製作がメインだったのですが、2017年のバスケットボールロボットを皮切りに、近年はヒューマノイドロボットの製作が増えてきました。今年はなんと「水素で動く高速シュートロボット」が登場しました。


わくわくワールドは、他にもたくさんの展示や体験コーナーがありました。そしてどこへ行っても、みんな笑顔で楽しんでいる様子がうかがえました。
地域と企業で作り上げるものづくり文化
デンソー夢卵、トヨタわくわくワールド。どちらも、ただの企業イベントではなく、地域や社外の人々を巻き込みながらものづくりを通じて交流できる場となっていました。そして、この記事に書ききれないほど、たくさんのコンテンツがあり、とても楽しい2日間を過ごすことができました。
実は、トヨタ技術会のアイデアコンテストは、わくわくワールドよりももっと歴史が古く、1976年に第1回大会が開催されました。「技術者の創造性能力の育成」をテーマに企画されたそうです。当時は社内向けのイベントでしたが、次第に企業グループや地域とコラボレーションするようになり、2004年から豊田市との共催になりました。いろいろな人々が協力し、たすきをつないでいくことで、ここまで大きなイベントへ成長したのですね。
私がこれらのイベントへ興味を持ち始めたのは、2015年のわくわくワールド、アイデアコンテストへの出場がきっかけです。そこでものづくりへの情熱が深まり、その後もさまざまなものづくりイベントへ参加するようになりました。こういった場で知識や技術を学べるのはもちろんですが、多くのMaker仲間と交流できることも非常に魅力的です。
夢卵は再来年、わくわくワールドは来年、きっとまた開催されるはずです。ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょうか。夢をかたちにする楽しさ、面白さを体験できるはずです。