2020年プログラミング必修化!「作る」ことで分かるSTEM教育
第7回 学校や家庭でSTEMを学ぶときの具体的カリキュラムとは?〜鍵は「壊して作る」「手を動かして考える」〜
「ものづくり」「教科の統合」「主体的な学習者」などSTEM教育をめぐるキーワードはいくつかありますが、これらを踏まえた上で、具体的にどんなカリキュラムが考えられるでしょうか?
すでにプログラミング教育に関する学校での授業は、モデル校などの事例が文科省のWebサイトに掲載されています。こういった事例等を含め、STEM教育のカリキュラムについて、展開例とポイントについて考えてみました。
(イラスト:フラグメンツ)
初めてのティンカリング体験
ものを作る授業の初めの一歩は、何を作るか考えることです。
自分が作りたいもの、クールだと思うもの、役に立ちそうなもの、何でもいいわけですが、最初はなかなか思いつかないのが普通です。
優れたエンジニアは、子どものとき、何かを分解するのが好きだった、という人が多いようです。ドライバーを片手に、身近にある不要品を捨てる前に分解してみる。カバーを外し、部品をひとつひとつ取り出すことで、メカニズムに触れ、機能を想像したと思います。こういう体験は文字通りのティンカリング(=いじくりまわす)の第一歩です。
今の子どもたちにとって、身の回りにあふれたものにあらためて注目する機会は少ないでしょう。家にある壊れた電化製品、古い時計や動かなくなったオモチャを集めましょう。ドライバーを与え、何もいわずに自由に分解させます。ものが何からできているのかを手を使いながら実感できるので、これから自分たちが作ろうとするものへの発想のヒントを具体的に与えてくれます。本格的なカリキュラムの前のアイスブレークになります。一通り壊したら、どんな部品がそこにあるか、どんな役目をしていると思うか、子どもに質問しながら考えさせるといいと思います。ものが何からできているか、体験の中から感じてもらうことが重要です。
自由に発想するためのインプットとアウトプット
まずは作りたいものを自由に考えてもらいます。そこには何の制限もありません。
「作れる」、「作れない」は二の次。最初のアイデアは、ともかく自由になるべく数多く、を心がけたいところです。具体化していく上で、アイデアは取捨選択され、変形していくからです。
また、物理法則(Scienceの領域)や技術水準(Technologyの領域)、あるいは時間や予算などの限界によって制限される場合もあるでしょう。この過程でSTEMのSやTの領域に関し、自分の問題として捉えてもらうようにします。
ただ、「自由に」というところは曲者です。子どもたちからアイデアが出てこない場合も多々あります。そんな時に発想方法のいくつかを示してやる必要があるかもしれません。発想はアウトプット作業なので、前提としてインプット作業が必要になります。身の回りの商品を眺めたり、Webで他の人の作品を調べたりするのもよいでしょう。自ら選んだ情報をインプットすることはアウトプットへの強力な手助けになります。
アイデアの表現方法にも制限はありません。絵を描いてもいいし、文章だけでもいい。紙の上に表現してもいいし、パソコン上のデータとしてもいい。アイデアが第三者に伝わることには留意させておくのがポイントです。
発想を形にするプロセス
作りたいものが決まれば、作るにあたって何をしなければならないか、を考える次の段階へと進みます。ここでも重要なのは「できることとできないこと」「しなければならないこと」を自分で考えること。そうすることで、必要な条件が見えてきます。「どんな材料、道具が必要か?」「どう動かすか?」「どう作るか?」などが要素となります。ただし、完璧な計画書を作る必要はありません。ポイントは「自らが計画する」「プロジェクトを立ち上げる体験を持つ」ということ。計画は計画であり、現実に即していつでも修正できるもの。また修正していくべきものであることをしっかり伝えたいところです。
発想を形にしていくプロセスをまずは頭の中で考えることで、「ものづくり」を具体的にイメージさせることが大切です。近くにDIY店や100円ショップなどがあれば、実際に行ってみて、材料や道具を見て、触れてということも、イメージ作りに役立ちます。