頭の悪いメカ by 藤原麻里菜
「全く盛れない自撮り棒」を作ってイノベーションを起こしたい
みなさん、自撮りしていますか? 自撮りというものは、必ず“盛る”ことのができる最高なものです。みなさんもインターネットをパトロールしていると、斜め上から撮影された自撮りを見る機会も多いかと思います。そう、自撮りというのは、斜め上から撮影することで、天井のライトが顔に当たり、それによって顔の輪郭が小さくなったり、目を大きく見せたりすることができるのです。
そして、そういった美しい自撮りをするためのアイテムとして、「自撮り棒」があります。ちょっと前に流行したので、ご存じの方も多いかとは思いますが、先端にスマホを付けることができる伸縮する棒です。棒がはやったのって原始時代以来じゃないでしょうか。そして、自撮り棒を使うことで、カメラと顔の距離を長く取ることができ、顔を極限まで小さく見せることができるのです。
しかし、どうでしょうか。こういった既存の概念にとらわれたままでいいのでしょうか。今は、“盛る”ことが唯一の正解のように扱われているものの、時代は移り変わります。今こそイノベーションを起こすときです。
“盛らない”ことを良しとする時代の到来に備えて、「全く盛れない自撮り棒」を作ろうと思いました。
「全く盛れない自撮り棒」を作ろう
「全く盛れない自撮り棒を作るぞ!」と息巻いているものの、そもそも“盛れなさ”とは、一体なんだろう。
私はたまに、ソファに深く座りながらスマホをいじっているとき、急に黒い画面になって、そこに映った自分の顔にびっくりするときがあります。口が半開きで二重顎になっている斜め下から見る自分……。私が思うに、その顔が一番の盛れていない顔だと思うのです。どんな美男美女でも、きっとあのシーンは、はちゃめちゃな顔になっているであろうと、そう信じて生きております。
ということで、自撮り棒を使おうとすると、自撮り棒のカメラが下に動き、全く盛れていない自分を撮影するデバイスを作っていきます。
ベースは、Arduinoというマイコンを使用します。上の写真の真ん中にある基板がそうです。名前とか見た目はちょっと難しげなのですが、はんだ付けや難しい回路設計をせずに電子工作ができるすばらしいデバイスですので、みんなこれを機会に買いましょう。
自撮り棒を動かすには、サーボモーターという回転角度を制御できるモーターを使用します。スイッチを押すとサーボモーターが180度回転するというプログラムを組み、動かすことにしました。
自撮り棒を動かすスイッチは持ち手部分に無理やり接着しました。グルーガン、ありがとう……。
Arduinoは本来5Vで駆動するのですが、スマホを動かせるように強めのサーボモーターを使用したので、単三形乾電池6本の9Vで動かしていきます。
いろいろとむき出しの状態ですが、これで完成とします。むき出しのほうがかっこいいという持論があります。
「全く盛れない自撮り棒」を使ってみる
早速使ってみましょう。まずは、身なりを整えます。身なりを整えるのは自撮りの基本ですからね。この後、どうやっても盛れなくなるのですが……。
本来、自撮り棒というものは、Bluetoothでスマホを接続し、自撮り棒のボタンを押すとスマホのシャッターが切れる、というすごいテクノロジーが使われているのですが、そんな神しか作れなさそうなものを作る技術を私は持っていません。なので、スマホ側で10秒のセルフタイマーを設定し、シャッターボタンを押してから自撮り棒を動かすことにしました。工作にはこういった工夫が必要です。
「今の自分、盛れているなー」と思う角度にスマホを持っていったら、持ち手にあるボタンを押します。すると……。
ヴィーンという音と共に……。
スマホが
下になり……。
全く盛れない写真を撮影することができました! やったー! 大成功です。
けっこうな素早さで動くのでちょっと恐怖を感じます。たまにスマホが吹っ飛んだりするときがあり、ボタンを押すたびにスマホとお別れをするマインドになります。
スマホの画面はこんな風に動いています。何かしらの事件が起きたような躍動感がありますね。
ちなみに、写真を撮影した後、ちゃんと元に戻ります。
何度やっても、全く盛れません。逆に盛れていない自分の顔がいとおしくなってきました。しかし、この写真をSNSにアップする勇気はまだ私にはありません。
おわりに
「全く盛れない自撮り棒」を作ってしまいました。これで、自撮り界にイノベーションを起こすことが可能になるでしょう。
この自撮り棒が普及したら、きっと美しさあふれる自撮りが少なくなり、かわいい人にムカつきがちな私としても快適にインターネットを楽しめるようになるはずです。よし、私、決めました。起業します。この「全く盛れない自撮り棒」で自撮り界にイノベーションを起こすために、会社作ります。そうと決まれば、とりあえずむき出しのArduinoをしまうところから始めないと……。
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、fabcross編集部では、記事作成にあたって
極力テレビ会議アプリやメッセージアプリなどを利用しています。
また、ものづくりや対面での取材が伴う記事では、社会的距離を取り、接触を避けるなどの配慮をしています。