頭の悪いメカ by 藤原麻里菜
オンラインミーティングをガチャ切りできる「Zoom用受話器」を作った
みなさん、Zoomを使いこなせてますか? テレワークをする中で、もうお手のもんだぜ! という人が多いかもしれません。しかし、ミーティングの終わり際を思い出してください。右下にある退出ボタンまでマウスを持って行くあの数秒間、あそこめっちゃ気まずくないですか。
どれだけテレワークが普及し、オンラインミーティングの数をこなしたとしても、「今日はありがとうございました! 引き続きよろしくお願いします! それでは失礼します!」と礼儀正しくあいさつをしても、その後に退出ボタンを「んー?」って顔で探してまごまごする様子がみんなに共有されているの恥ずかしくないですか。
どうやったらあの気まずさを解決できるんだろうと考えたところ、ふと、受話器ってすごいシステムだったなと思いました。
わたしの時代は家電(いえでん)と呼んでいたのですが、有線電話です。あれって、受話器をガチャって置くだけで電話が切れるじゃないですか。あれをZoomにも取り入れるべきだと思うんです。ということで、Zoom用の受話器を作りたいと思います。
Arduino Microを使ってキーボード入力をする
<設計図>
今回は、Arduino Microというマイコンを使用して、キーボード入力に挑戦したいと思います。
Arduino Microは、パソコンとつなげると外部キーボードとして入力をすることができるのです。いろんなショートカットキーをプログラムして自作キーボードを作るとかなり仕事の効率が上がります。今回のZoom受話器が仕事の効率を上げられるかは分からないのですが、Arduino Microで作っていきましょう。
Zoomにはショートカットキーがあるので、電話の受話器を置いたら、ミーティングを終了するショートカットキーが入力される……という仕組みをArduino Microとタクトスイッチで作ります。「わざわざ受話器につながなくてもショートカットキー自分で押せばいいじゃん」という言葉は言わないでください。
タクトスイッチを使って、「タクトスイッチを押すと指定されたキーが入力される」というプログラムを組んでみました。今回は、4つのタクトスイッチを使っています。
1つめは受話器を置く場所につけるタクトスイッチで、Zoomのミーティングを退出するCommand+Wとリターンキーを登録しました。
残りの3つは電話機の数字のボタンにつけるタクトスイッチで、「ミュート(Command+Shift+A)」「カメラオン・オフ(Command+Shift+V)」「画面共有(Command+Shift+S)」です。
プログラムはこんな感じです。もともとArduinoIDEに入っていたサンプルスケッチを元に書き加えました。
電話を分解しよう
メルカリでレトロな黒電話を購入しました。めちゃくちゃかわいい……! 本体の真ん中のちょっと下にある2つのねじを外すことで分解ができました。
中身もレトロな感じです。古いので特殊なねじなどが使われていなくて逆に分解しやすいです。
こんな感じでパカッと開きました。受話器のスピーカーとマイクは、あとで配線を変えてパソコンで使えるようにしたいと思います。
数字のボタン部分を取り外して裏返します。
下の段の3つに先ほどのタクトスイッチ3つをくっつけます。これで、数字のボタンを押すと、Zoom側でミュートや画面共有、カメラのオン・オフの操作ができるようになるわけです。
受話器を置く部分(なんていう名前なんだろう)を少し分解します。ベルが入っていました。そうか、昔の電話はベルだったんだ……。
受話器を置いたらバネが押される仕組みになっていたので、ちょうどいい位置にタクトスイッチを接着しました。受話器を置いたら、バネがタクトスイッチを押す仕組みです。
次は、受話器側のスピーカーとマイクをパソコンで使えるように配線していきます。4極ピンに電線をはんだ付けしました。
受話器の4つの線をそれぞれ配線します。どこがどこにつながっているか分からなかったので勘で配線してみました。
パソコンにつなげてみたところ、ちゃんとマイクとスピーカーが使えるようになりました。女の勘は当たるものですね。
レトロな受話器がパソコンのスピーカーとマイクになるのにちょっと感動です。古いものも分解してちょっと手を加えることで再生できるものですね。これがサスティナブルだ!
仕組みはすべて出来上がったので、すべてを無理やり中に入れ込みます。ねじ込みます。
ちゃんと閉まりました。
使ってみよう
完成です! 黒電話がパソコンにつながっているという謎の光景を作り出すことができました。めちゃくちゃ昭和の人が描いた21世紀感がすごい。では、さっそく使ってみましょう。
Zoom会議がはじまったら
受話器を取ります。
ボタンを押すと
画面共有がされます。
右端のボタンは
カメラの切り替え
真ん中のボタンはミュートの解除ができます。
ミュートしてても誰かとしゃべるときはマイクの部分を隠しちゃうよね。
そして受話器を戻すと
強制的に
ミーティングが終了する
わけです。
おわりに
かなり良いデバイスができてしまいました。画面上ですべてができてしまう時代ですが、このようなアナログなデバイスをつなげることで、なんか良い感じの身体感覚が得られるなあと思いました。
Arduinoを使うと、こういったデバイスが簡単に作れます。あ、そうそう。このたび、「無駄なマシーンを発明しよう!」という本を技術評論社から出版することになったのですが、とてもゆるくArduinoの使い方を学べる一冊となっております。夏休みの自由研究にぜひ!