ギャル電きょうこの意識の低い工具入門
はんだ付けがうまくいかないのは君が悪いわけじゃない。はんだごてが悪いんだ! #ギャル電きょうこの意識の低い工具入門
電子工作界のストリート派、ギャル電のきょうこさんが、電子工作初心者に工具の大切さを伝える「ギャル電きょうこの意識の低い工作入門」。前回はニッパーについて熱く語っていただきましたが、今回は「はんだごて」です。きょうこさん、どうやらはんだごてについてのいろいろ語りたいことがあるようで……。
「はんだごての基本とか説明は、ほかのサイトでまじめにやってくれているから、うちではやらない。意識低いから」
じゃ、じゃあ何を語るっていうんでしょうね……。まあ、きょうこさんのお話、伺おうじゃないですか!
はんだ付けはネットで覚えた
ところで、きょうこさんははんだ付け得意なんですか?
「いやぁ。今でこそちゃんとできるようになったけど、電子工作始めた頃は全然ダメだったね。だって、誰にも教わってないし」
じゃあ、どうやって使い方覚えたんですか?
「WebとYouTubeを見ながら、フィーリングでやってた。だから全然うまくならなくて。1年くらいは苦労したかな」
そうなんですね。いまじゃあひょひょいとはんだ付けしているから、割と得意なのかなと思ってましたよ。
「あるとき気が付いたんだよね。これははんだごてが悪いんじゃないかって。だって、ちゃんとしたお高いはんだごて使ったら、ウソみたいにはんだ付けがうまくいくようになったんだもん! だから、今日ははんだごてはいいの使いなって話をしようかと思って。あと、はんだごての正しい扱い方とかね」
なるほど。じゃあ意識の低いはんだごて入門、お願いします。
はんだごてにも流行りがある
まずは、きょうこさんが持ってきてくれたはんだごてをご紹介します。ポイントはこて先。
HAKKOのFX-600はセラミックヒータータイプで温度調整ができて、すぐに使える温度まで上がるタイプ、USB充電タイプは温度調整ができないけど、こちらも電源を入れてからすぐ、はんだづけできるくらいまで温度が上がるタイプ、入門用はんだごて(OP-20L)はニクロムヒーター型で温度調整機能はなく、はんだづけができる温度になるまで少し時間がかかるタイプ。
「こて先は、はんだごてよく使う界隈ではちょっと前まで最初から付いてるB型(鉛筆みたいな形)がスタンダードだったんだけど、今流行っているのはD型っていうマイナスドライバーみたいな形のやつ。慣れてくると太いところも細いところも1本で作業できるね。あとはC型っていう円錐型のこて先も流行ってるかな。これは熱を伝える部分が広いからはんだが溶けやすい」
きょうこさんがメインで使っているHAKKO FX-600。コテ先はB型。
HAKKO FX-600にC型のコテ先。こちらはあまりまだ慣れていないので使ってないとのこと。
USB充電ができるワイヤレスタイプ。こて先はD型。買ったばかりで未使用。
きょうこさんが初めて買ったはんだごて。1000円くらいの入門用で、こて先はB型。
なるほど。こて先にも流行があるんですね。僕はB型しか知りませんでしたよ。
「まあ、どれを使うかは自分で使ってみて使いやすいのを選べばいいと思うよ。私はペンシル型が使いやすいから、メインはペンシル型だね」
そうなんですね。結構スタンダードなタイプを愛用していると。で、こちらは?
「これは、はんだごて戦士の装備。はんだごてをちゃんと使う人はこんなものそろえてますよってこと。このなかで一番重要なのが、スポンジだね」
四角いのと丸いのがありますが、これはどちらも用途は同じもの。水を含ませてはんだごての先端を当てます。これがどうして重要なんですか?
「スポンジには、こて先の汚れを取るのと、温度調整をするという大事な役目があって。ここで重要なのがスポンジの濡らし具合。びちゃびちゃだと温度下がりすぎるし、あまり濡らさないと汚れ落ちないし。わたしはけっこうスポンジしぼってちょっとだけ水分が残ってるくらいが使いやすい。こればっかりは経験積んでちょうどいい濡らし具体を探るしかないね」
濡らした状態。ちょっと膨らむ。
まあ、スポンジを水で濡らすだけですから、試行錯誤も簡単そうです。ちょうどいい濡らし具合、マスターしましょうね。
はんだごてを変えればはんだ付けが変わる!
ということで、ここからは実際にそれぞれのはんだごての使い勝手を、きょうこさんに見せていただきます。よろしくお願いします。
まずはHAKKOFX-600にB型のコテ先をつけたもの。定価で4000円。
さすがにいいはんだごてだと、はんだ付けがスムーズ。「私の持てる力を最大限に発揮できる。」
「基本は、はんだを付けるところに先にはんだごてを当てて、あっためてからはんだ線を載せる。先にはんだ線をはんだコテの先に溶かして糊みたいに基板に付けると失敗しやすい」
なるほど。B型だと細かいところへのはんだ付けがやりやすそうですね。
次はHAKKO FX-600にC型のコテ先をつけたもの。C型のコテ先は別売りで500円くらい。
「これ2回くらいしか使ったことがない(笑)。でも、太い線と細い線が混在しているはんだをやる人は使いやすいかも。最初にこれで始めたら、B型よりもC型のほうがいいって言う人多いだろうね。はんだに熱が伝わりやすいし」
B型だとあまりうまくいかないなという人は、C型を試してみるといいかもしれませんね。
お次はUSBタイプ。こて先はD型。1800円。きょうこさん初体験。
「これ初めて使うんだけど、パッケージには立ち上がりが早いって書いてある。これ、めちゃくちゃ使いやすい! こてを置く台も入ってるし、D型はこて先を縦にすれば細く、横にすれば太くはんだ付けできて便利だね! しかもなんといってもモバイルバッテリーで使えるのがいい! これなら公園とかではんだ付けできるじゃん!!」
めちゃくちゃ興奮してますね(笑)。でも、かなり使いやすいみたい。1880円なのではんだごてとしては買いやすい価格ですし、外でも使えるというのはストリート派にはうれしいですよね。仕上がりもきれいです。
最後は、入門用のB型。1000円です。
「まずこて先がぐらぐらしてる(笑)。これは私が上手くはんだづけできない時にめっちゃ力入れて使ってたからかもしれない。あと温度が高い。ニクロム線を使っているやつはたいていそうなんだよね。学校の授業とかで使うのはたいていこれだと思うんだけど、これはんだづけがむずかしいっていう超トラウマになっちゃう。あと、温まるまで時間がかかるし、温まったかどうかも分からないから、はんだを付けて溶けるか溶けないかで判断するしかない。いやぁ、これ全然はんだ付けできない(笑)」
かなり苦戦してますね。これまでのはんだごてでささっとはんだ付けしていたのを見ているから、余計に使いづらそうだなって感じます。
「はんだ付けの大先生にこれでやってもらいたいね。ちゃんとこれではんだ付けできるのか試してみてほしい」
仕上がりもあまりきれいじゃありませんね。見た目で分かる。
「最近はギャル電の活動を応援してくれる人がだんだん増えて、『使ってみて』って電子工作周りの機材をありがたいことにいただけることがあるんだけど、めっちゃ機材がリッチになってきて成り上がり感に、電子工作だけどヒップホップドリーム感じてる。まじでいい機材はめちゃくちゃやりやすくて最高にはかどりまくる。」
やっぱり、最初にいい機材を使ったほうがいいんですかね。
「でも、電子工作初心者にいきなり4000円のはんだごては薦めづらいよね。でも、安いはんだごてではんだづけ苦手だなって思っている人は、一度はんだごてちょっといいやつ使ってみてほしい。テクニックとか才能とかそういう問題じゃないんだよってこと」
はんだ吸い取りの作業ははんだごて次第
これまでははんだごてについていろいろ語っていただきましたが、きょうこさんによればはんだ吸い取り線とコテ先リフレッシャーも重要とのこと。
「はんだ吸い取り線は、はんだを基板から取り除いてくれるやつ。はんだを多めに盛っちゃったときとか、間違ってはんだ付けしたときに使うやつ。これも、はんだごてによって作業効率がかなり変わる」
ということで、実際にやってもらいました。まずは1000円の入門用はんだごてでの作業です。
まず古いはんだの上に新しいはんだを載せてリフレッシュし、その後はんだ吸い取り線で吸い取るということなんですが、そもそもはんだ付け自体がうまくいかないという事態に。
「このはんだごてで作業していた昔の私を抱きしめてあげたい」
そんなことをつぶやきながらなんとか作業してますが、結果的にはんだは吸い取れませんでした!
次は今日使ってお気に入りになったUSBはんだごてで作業します。
スムーズに作業終了。両者を見比べてみると一目瞭然ですね。
「ちょっと基盤焦げちゃったけど、USBはんだごてのほうはちゃんとはんだ吸い取れてるね。道具を変えるだけで、こんなに作業の結果が違うんだよね。やっぱり道具って重要」
いや、ほんとその通りだと思います。どのジャンルでも初心者だからって安い道具で始めたりしますけど、それでうまくいかなくて辞めちゃったりするのもったいないですからね。ある程度いい道具から始めるのって重要ですよね。
コテ先リフレッシャーも大事だよ
最後に、きょうこさんが出してきたのがコテ先リフレッシャー。これはどういうものなんですか?
「はんだごてって、こて先がちゃんと手入れされていないとうまくはんだ付けできないんだよね」
と言ってきょうこさんが見せてくれた、はんだごてのこて先。ちょっとゴミとか付いてますね。
「はんだづけしてるうちに、多めに溶けたはんだとか電線のビニールが溶けてくっついちゃったりして付いたやつは濡らしたスポンジで掃除する。で、こて先ははんだでメッキコーティングされていないとはんだ線溶かしたときにはんだが乗らない。使っているとこの銀色の膜がはがれてくるから、リフレッシャーでメッキしなおすと復活するってわけ」
フタを開けるとフラックスと純錫ペーストの登場。
では、実際にコーティングしていただきましょう。
はんだを熱した状態でリフレッシャーを付けて、スポンジにこすりつけて、掃除とコーティングをしていくんですね。
「コテ先が銀色にコーティングしっかりされているのが、こて先の使いやすい状態だよ。こういうメンテ、知らない人も多いかもしれないから、やったことない人はぜひやってみてほしい」
はんだごて買ってから1回もメンテをしてない人! 今すぐメンテしましょう!!
ということで、「ギャル電きょうこの意識の低い工具入門」、第2回はこれにてお開き。さて、次回はどの工具の話をしましょうか。こうご期待!
ギャル電 きょうこ 今のギャルは電子工作する時代! ギャルによるギャルのための電子工作を提案するユニット「ギャル電」で活動している。 最近ハマってる飲み物はトマトジュース(無塩) Twitter / Instragram / youtube |