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ギャル電きょうこのストリート電子工作

夏の終わりのストーリー 作って学ぶオカルトリテラシー! 真の乱数でめちゃ盛れ☆超常現象センサーLED

電子工作に必要なものは、すべてストリートで学んだ。

己の腕とやる気があれば、どんなものでも創造できる。電子工作界という荒波をひらめきとインターネットの力で泳いでいるギャル2人組電子工作ユニット「ギャル電」。その活躍に勇気をもらっている人も多いことでしょう。そのギャル電きょうこさんが、ありったけの持てる力(と時間)をぶつけてエレクトリカルな工作をするこの企画。毎回「なんだそりゃ!」という驚きを与えてくれます。今回は、何を作ってくれたのでしょうか?

夏といえば怖い話! 怖さを体感できる超常現象センサーLEDを作ったよ

日本の夏の風物詩といえば、やっぱりTUBE。そして怪談です。怖い話や体験談は別に季節は関係ないはずですが、なぜか夏になると話したがるし聞きたがるもの。まあ、怖い話で少しでも涼しさを感じたい。そんな心理が働くからだと思います。

「うちらがキッズのころは、夏っていえばテレビの心霊特番だったよね」

そう語るのは、一年中夏みたいな感じのきょうこさん。

「でも最近、あんまりそういうテレビ番組だったり雑誌の特集だったり見ないよね」

ああ、確かに。僕も昔は心霊写真の本を図書館でみんなと見てましたね。まあ、ほとんどが現像のときのアクシデントだったりするわけですけど。いわゆる「オカルト」的なものって、あんまり見なくなったような気がします。

「最近はあんまり世の中でオカルトはやってないから、令和キッズはあまりピンと来ないかもね。でも、そういうオカルティックなものに免疫がないと、ヤバくない?」

たとえば……?

よく分からない理論の不思議なパワーがもらえるペンダントとかにハマって飽きるという黒歴史を背負って人は大人になっていくもんじゃん。それを通ってないと、うっかりYouTubeのオススメに出てきた動画で“私だけが知っている隠された真実”とか素直に信じちゃうようになっちゃうわけよ」

まあ、そういうオカルトなものに小さいころに触れたからこそ、今こうしてまっとうに(?)生きていられるのかもしれませんね。一部そうじゃない人もいますけど。

「だから、若者やキッズたちに、ちゃんとオカルトリテラシーの重要さを伝えなくちゃいけないと思って。今回はオカルト電子工作をしてみたよ」

オカルト電子工作……? 何を作ってくれたんですか?

「オカルト気分を盛り上げるための、心霊や超常現象を探知するレーダーアクセ。その名も“真の乱数でめちゃ盛れ☆超常現象センサーLED”。これ付けているとオカルティックな現象が起きているかどうか分かるかもしれないっていうやつ」

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ひとつは帽子タイプで、ひとつは車のバックミラーにぶら下げたり、首から下げたりできるアクセサリータイプになっています。仕組みは2つとも同じとのこと。ゴールドの般若がクールですね。ギャル味あるわ。

きょうこさん、そっち方面にも興味あったんですね。さすがギャル。

超常現象センサーの仕組みを語っちゃうよ

そういう霊的なものとか超常現象って、なかなか可視化できないものじゃないですか。どういう仕組みなんですか?

「いやー、私もよく分からないから調べまくったね。市販のお化け探知機、私も愛用してるから仕組みを調べたんだけど、音センサー、EMF(電磁波測定)、FM/AMラジオ電波、赤外線センサー、温度センサー、湿度センサー、乱数発生器が使われてることがわかったの。オールドスクールなものだと、FM/AMの電波で霊の声を拾って録音する電子音声現象(EVP)なんだけど、スマホについているいろんなセンサーを組み合わせた超常現象レーダーアプリなんていうのもある」

なるほど。いろんなセンサーから得た情報を使って霊的なものを探知しているんですね。

「これね。実はボタンあったんだけど、分解して組み立てたらボタンなくなっちゃって(笑)」分解好きの小学生じゃないですか……(笑)。 「これね。実はボタンあったんだけど、分解して組み立てたらボタンなくなっちゃって(笑)」
分解好きの小学生じゃないですか……(笑)。

「その中でも“ばけたん”っていうキーホルダー型の心霊探知機が値段も手頃でかわいいから買って試したんだけどね。開発者インタビューを読むと、ピエゾセンサーのアンテナで電磁波、静電気、音圧変化などのノイズを拾ってトリガーとした疑似乱数を発生させて、人間の意識が乱数に影響を与えるっつー【地球意識プロジェクト】 をベースに、発生する乱数の偏りでお化けを探知してLEDで周囲のお化け状態を知らせてくれるらしいんだよね」

ばけたん、見た目かわいいですよね。

「FM/AMや電磁波センサーを使ってリアルタイムに可視化する電子工作は部品がいろいろ必要で難しそうだけど、乱数発生器を使った仕組みは比較的分かりやすそうだから、今回はその方面から作ってみた」

なるほど。センサーから得た情報で乱数を発生させて、それを元に霊的なものを可視化したというわけですね。

ESP32はオカルト電子工作向き

「上が『WEMOS Lolin32 D1 V1.0.0』、下が『ESPr Developer 32』っつーボード。ESP32系のマイコンボードはAmazonとかアリエク(AliExpress)で安くて600円くらいから2000円くらいでゲットできるよ」 結構お手軽なものもあるんですねー。 「上が『WEMOS Lolin32 D1 V1.0.0』、下が『ESPr Developer 32』っつーボード。ESP32系のマイコンボードはAmazonとかアリエク(AliExpress)で安くて600円くらいから2000円くらいでゲットできるよ」
結構お手軽なものもあるんですねー。

今回はESP32が搭載されたマイコンボードを使ったとのこと。帽子タイプ、アクセタイプそれぞれ別なボードを使っています。

「ESP32系のボードは出始めの頃は使うのに書き込みのボタンを押すとか、ボードマネージャーにインストールするときとかにちょっとコツが必要だったけど、最近のバージョンのArduino IDEと入手しやすいボードは普通に使いやすいし、今回は使ってないけど湿度センサーとか磁気センサーも内蔵してるよ」

マイコンボードも進化してるんですね。使いやすくなっているのはスト工にとってもいいことですね。手間が省ける。

ところで、乱数ってよく聞きますけど、どういうものなんですかね?

「乱数ってのは、ゲームで敵キャラの攻撃パターンとかボーナスアイテムの出現を決めたり、通信をするときに必須の暗号化に使われたりしてるやつ。そういうのって、アルゴリズムをもとに計算で生成する疑似乱数(使っているアルゴリズムとそのアルゴリズムに入れているデータが分かれば再現性がある)のクセをハックして、必ず同じ秒数で同じ操作をキャラクターにおこなうと超レアなアイテムが絶対手に入るみたいな昔のゲームの裏技が発祥の都市伝説なんだよね。

乱数の作り方ってのは他にもあって、ハードウェアからエントロピー(原子的排列および運動状態の混沌性・不規則性の程度を表す量)を取得して乱数を発生させる真性乱数(次がどんな数なのか予測できない)っていうのがあるらしいんだけどね」

2種類あるのかー。乱数、なかなか奥が深い。よくソシャゲとかで、10連ガチャじゃなくて単発で10回回すと超レアなアイテム引けたとか、物欲センサーとか言ってるのは迷信なんですね。まあ、そんなことないなとは思ってたんですけど。でも、乱数って2種類あるんですね。奥が深い。

「ESP32をベースにしたマイコンボードはWi-FiまたはBluetoothのアンテナが拾ったノイズを使って真の乱数を発生させる機能が付いてて、周辺にWi-FiかBluetoothがオンになっている機器があれば、めっちゃ簡単に真性乱数発生し放題なんだよね!」

真性乱数が発生し放題。よく意味分かんないけど、なんかお得だしすごそう。

「どうやら無線通信のときの暗号キーを発行するとかのために付いている機能らしいけど、Wi-FiとかBluetoothアンテナ由来の乱数っておしゃれじゃね? しかも磁気センサーも付いてるし、追加の部品を買わなくても速攻オカルト電子工作できちゃうマイコンってことに気付いちゃったんだよね」

温度、湿度とかの自然現象じゃなくて、Wi-FiとかBluetoothの電気信号で超常現象をキャッチするっていうのが、スト工らしくていいですね! いやー、ESP32、優秀。

製作過程をご紹介。

さて、今回の「真の乱数でめちゃ盛れ☆超常現象センサーLED」の製作過程を簡単にご紹介します。

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まずはぶら下げタイプから。材料はこんな感じ。

「ぶら下げタイプのイチ押しはこのゴールド般若ね。なんつっても、車高低いセルシオとかのバックミラーにぶら下がってるアクセサリー系のトップブランドのものだから」

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決まってますねー。ギャル電らしさあるわ。

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こちらはESP32のボード部分。基板は見せていくサイバーパンクスタイル。ピンクのふさふさがかわいさポイント。

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般若の裏にLEDを仕込みます。これで目が光るようになります。

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貼り付けは両面テープで。

夏は暑いんで、ホットボンド使いたくないんだよね。暑い季節は両面テープ、大活躍だね」

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基板の裏側にもLEDテープを。もちろん両面テープで付けます。なんならESP32のボードも両面テープで貼り付けてます。

「このボードは安いんで遠慮なく両面テープで貼る。両面テープで貼れないボードは怖くて使わない。これギャル電流」

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完成です。般若の目と基板の裏側がそれぞれ別に光ります。

「ポイントは、このふさふさ。ツインテールみたいでかわいいでしょ? 般若だけどちょっとかわいさ出してみたよ」

こういうところがギャル電ですね。

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首から下げるためのネックレス部分は、あえて金の縄。これ、きょうこさんが自分で縄をなったそうです。

「これはオプション。車のバックミラーに下げることもできるし、首から下げることもできる2way仕様。お好きな使い方ができてお得感ある」

ちなみに、この縄が一番高かったそうです。お金の掛けどころがいいね!

もうひとつの帽子タイプは、作り方はとてもシンプルなので割愛。

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「サンバイザーにLEDテープ貼って、裏側に基板取り付けてる。サンバイザーのヒモの部分にモバイルバッテリーくくりつけておけば、普通に使えるよ。こちらは夏祭りのギャルがちょっと幽霊探知にでかけるときのイメージで航空神社の飛行安泰千社札シールを貼って、万が一UFOとか幽霊に遭遇しても敵意がないってことを盛りの中にもさりげにアピれるようにした

細かい配慮!

乱数発生のプログラムを作るよ

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ESP32が取得した乱数から、どのようにして超常現象を探知しているのか。そのプログラムについて解説してもらえますか?

「はいよ! まずは、ESP_randomっつー機能でESP32のハードウェア乱数を取得して、その乱数を種にして0か1をランダムに取得するの。これを10回繰り返して10回中の1が出た数を足していってカウントする」

僕、完全文系人間なので数字に異常に弱いんですけど、要はESP32が取得した乱数を、毎回0か1にランダムに置き換えて、それを10回やったら、1が出た数をカウントしてるってことですよね。取得した乱数と、それを0か1にするのに関連性はなく、完全にランダム。ESP32の気分次第ってことです(気分はないと思うんですけど)。ランダムにランダムを掛け合わせて、さらにランダムにするってわけですね。

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「そうそう。結果的に毎回0か1になるわけだけど、ランダムだから偏るときもあるし偏らないときもあるわけ。で、10回のうちの1が出た数で、乱数の偏り状況を判定して、LEDの色を変えるようにしてる」

その内容は以下のようになっています。

1が0個、10個→めっちゃ乱数が偏ってるので赤
1が1個、9個→まあまあ乱数が偏ってるので黄
1が2〜3、7〜8個→ちょっと乱数が偏ってるのでホットピンク
1が4個→普通によくあるから黄緑
1が5個→ちょうど真ん中なので白
1が6個→普通によくあるから水色

色に関してはきょうこさんの好みで決定したとのこと。もしご自分でプログラムする場合は、お好きな色にしてくださいね。

「今回の場合、赤が出たらかなりヤバい。黄色も連続して出たらヤバいかな。白とか水色、黄緑だったらなんもないっていうことになるかな」

光ってますねー。

こちらも光ってます。この部屋はあまり霊的なものいなさそうですね。

よし、実際に試してみよう!

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さて、完成した「真の乱数でめちゃ盛れ☆超常現象センサーLED」。ただ作っただけじゃおもしろくないですよね。ということでさっそく超常現象を探知しに行きました。

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近場の墓地近くを通りかかったら、サンバイザーのほうがピンクに! うーむ、若干なんかあるのかな? 今までここ通るとき何にも思わなかったんですけど、次から通るとき、ちょっと意識しそう……。

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さて、今回のメインディッシュ。千駄ヶ谷トンネルにやってきました。そう、千駄ヶ谷トンネルは都内有数の心霊スポットとして有名なんです。あえてここで試す!

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うーむ、あんまり強い反応はないですね。

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ないなー。もっと真っ赤に光ったりするのかと思いましたけど、たまにピンクになるくらいですね。

そんなことを言いながら、帰ろうと歩いているときょうこさんがいきなり悲鳴を! ど、どうしたんですか?

「今、サンバイザーが真っ赤になった……」

そ、そうですか! その後、二人は小走りに駅に向かいました。

オカルト電子工作は身体と心が健康な状態じゃないとオススメできない

今回、オカルトとは何か、乱数とは何なのかという、割と深い内容になりましたが、きょうこさん的にはどうでした?

「シンプルでコンパクトなオカルトデバイスを作ろうと仕組みを考えて、オカルトサイトとESP32のリファレンスサイトを交互に調べまくったら、ギャップで脳の治安が悪くなったね」

脳の治安ですか(笑)。まあ、かなりこんがらがりそうな感じはします。

「あとね、ほんとは地球意識プロジェクトの記事をもとに、0との表示回数が50%ずつになるやつを作りたかったけど、計算式考えるのわからなかったしだるくなってイヤになったら、秒であきらめた」

いさぎよさもスト工には必要な要素です。

「作ってるとき、科学とオカルトが自分の中で超せめぎ合いをしてて、自分のなかで宜保愛子v.s.大槻教授のバトルが発生しちゃってさ。あまりオカルトに飲み込まれると仕組みが考えられなくなるから、睡眠時間多めにとったね」

睡眠は重要ですよ。僕も最近睡眠時間減ってたんですけど自律神経やられてものすごい末端冷え症になったので、養命酒飲み始めましたもん。

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「結構たいへんだったんだけど、ロマン感じたね。“オカルト電子工作”でググれば、ディープで偉大すぎる先人たちのオカルト理論実装電子工作が見つかるからみんなもチェックしてみて!」

ちょっと興味ありますね。どんな工作なんだろう……。でも、なんか楽しいですよねこういうデバイス。

「乱数でLEDが変わるから、見ていて飽きないんだよね。と、偶然乱数が偏ってLEDが赤く光ると、うっかり幽霊でもいるのかと信じちゃうから、オカルト電子工作は身体と心が健康な状態じゃないとオススメできないなと思った」

確かに。信じてなくても目で見ちゃうと信じそうになるんですよね……。可視化って重要。

「乱数の偏り表示LEDは暗いところでも光で状況が分かりやすいし、盛り要素もあるから、オカルトYouTuberとかにオススメだよ!」

インパクトはあるし、なんか意味分かんないけど盛り上がるし、実用的(?)だから、この「真の乱数でめちゃ盛れ☆超常現象センサーLED」は結構すごいと思いました(小並感)。

さて、今回のスト工はここまで。次回もお楽しみに!

【材料】

LEDテープ(WS2812B)
https://www.amazon.co.jp/dp/B07YDMHKW6/
ESPr Developer 32
https://www.switch-science.com/catalog/3210/
ESP32 D1 V1.0.0
https://www.amazon.co.jp/dp/B086YCHKH3/
電線
モバイルバッテリー

車のルームミラーにぶら下げるふさ(金般若)
金ロープ
丸いアクリル板
ピンクヒョウ柄カーフィルム
ネックレス金具
チェーン
サンバイザー
ハイビスカスの造花
飛行神社のお札ステッカー

トータルで約7000円

ギャル電 きょうこ

今のギャルは電子工作する時代! ギャルによるギャルのための電子工作を提案するユニット「ギャル電」で活動している。 最近ハマってる飲み物はトマトジュース(無塩)

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