ZMP谷口社長に聞く
「自分のやりたいことをやっているうちにRobotCarに行き着いた」
3.ロボットで培った要素技術をクルマに投入
——人型ロボットの次に、大きいところにということでクルマにされたとのことですが、クルマをロボットにしようと思ったということですか。
「家庭用ロボット、家の中にいるロボットも面白いんですが、いつしかロボットに乗りたいという気持ちになってきたんです。人型ロボットでは携帯電話を操作させたりしましたから、遠隔操作でクルマも呼べばいいしと。難しかったのはクルマをA地点からB地点に障害物を避けながら自律移動させることです。これは音楽ロボットで出来ました。そこで、『いまの技術があったら夢のナイトライダー、“ナイト2000”(*)ができるんじゃないか』という単純な発想です。
ただ一足飛びにはいきませんでした。まずはソフトウェアを入れて自由に動かせるクルマのプラットフォームを作らないといけないんです。実車のプラットフォームを一気に作るのは難しいので、音楽ロボットと同じ大きさで作ろうと考え、10分の1サイズにしました。それが「RoboCar 1/10」です。世の中に100万円ぐらいで出してみたら、結構売れました。これが今の自動車につながっています。ここでマーケティングし、潜在顧客にリーチしました。
次にもう少し大きいクルマをとなったのですが、すぐに乗用車は行かずに、1人用の電気自動車を改造してロボットカー「RoboCar MV」として出しました。クルマってハードルが高いんですよ。搭載されているコンピュータ(マイコン)の数が非常に多いのです。マイコンが50個、60個とありますし、そのうえみんなブラックボックスで中が分からないんです。
もうひとつのハードルは重量で、暴走したら非常に危険です。実験設備が欲しいと思ったのですが、社員が「それどこで実験するんですか」「テストコースないですし」「ウチは自動車メーカーじゃないんですよ」と言うんですよ。「うーんそうだねえ、テストコースないねえ、どっか空き地探すよ」とか言いながら、たまたま見つけた山奥の土地が借りられるようになったものですから、まあとにかくやってみようということで始めたんです。
乗用車の前には1人乗りで開発しました。例えシステムがバグってビューンと走り出しても、自分たちで押さえれば止まりますからこれでいこうと。それさえも社員は皆びっくりしてました「いやあ、こんなんできませんよ危ないから」と。会社近くの大学の敷地を共同研究で貸してもらい、休みの日とか早朝に構内で走行実験をして、それで1人乗りをマスターしました。1人乗りができたら乗用車もできるだろうと、段階的に進めたわけです。といっても事故を起こさないよう慎重にやりました。社員に何かあったら大変ですし、他人に迷惑かけてはいけません。事故を起こしたら大変ですから、そこはすごく慎重に。チャレンジは目標立ててやりましたけども。安全面には十分に気を使ったんです。
それでも非常に短い期間でやってきたので周りの人には驚かれました。「RoboCar 1/10」が完成したのが2009年、そこから1人乗り「RoboCarMV」の開発に2年かかって2011年。それでももう翌2012年にはもうプリウスで実車やってますから。今年からは基本的にプリウス以外のクルマでもできるようになりました」
*編注:“KNIGHT 2000”。1980年代に放送された米テレビドラマ「ナイトライダー」に登場する、人格を持つ人工知能“K.I.T.T.(キット)”を搭載して完全自律走行が可能なスーパースポーツカー。