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スマート農業センサSenSprout

導電性インクから世界の農業変革へ、既存品の10分の1の低コストを実現するスマート農業センサSenSproutが目指すもの

SenSproutとは、銀ナノ粒子インクで印刷した電子回路で作ったスマート農業センサである。2014年からプロジェクトがスタートし、水資源問題の課題である農業用水の削減にチャレンジしようとしている。シーバスブラザーズ主催のアントレプレナー世界大会「THE VENTURE」で2位に輝き、クラウドファンディングでもわずか数時間で目標を達成。Cerevoの立ち上げも行ったメンバーが、なぜ農業分野に取り組もうと思ったのか。SenSprout代表取締役の三根一仁氏に伺った。(撮影:加藤甫)

SenSproutの開発がスタートしたきっかけ

元ソニーでSenSprout代表取締役の三根一仁氏。 元ソニーでSenSprout代表取締役の三根一仁氏。

インクジェットプリンタによる印刷技術とエナジーハーベスティング(環境発電)による無線給電が組み合わされたSenSproutを使えば、土壌のモニタリングセンサネットワークを実現することが可能になる。導電性銀ナノ粒子インクの回路が静電容量の変化をモニターし、土の中の水分量を検知して水分の補給などを知らせるという仕組みだ。

ソニーを退職後、スタートアップ支援を手がけるinsproutを創業。現在も同社の代表取締役社長を務める三根氏は、大学の関係者やソニーに在籍していた仲間たちと、2007年にネット家電ベンチャーのCerevoを立ち上げた。2014年にはCerevoでの役目も落ち着き、同じメンバーで「何か新しいプロジェクトをやりたいね」とアイデアを出し合うようになった。そのアイデアの一つに、東京大学准教授の川原圭博氏が研究していた、紙に銀ナノ粒子インクで印刷した回路(AgIC)がある。「このAgICの技術をIoTに生かしたのがSenSproutでした」と三根氏は語る。では、なぜAgICの技術をスマート農業センサに生かそうと思ったのか。

「地球の表面の3分の2は水で覆われているのですが、大部分が海水で淡水はわずか2.5%程度に過ぎません。そして、世界の淡水の7割は農業用水に利用されています。今後、人口が増えると農作物もたくさん作らなくてはいけません。とはいえ、水の量を増やすことはできないので、水資源がネックになって食料自体が枯渇する可能性があります。そこで、土の中の水分量を計測して、水資源を無駄に利用しない精密な農業を可能にしたくてプロジェクトを立ち上げました」

クラウドファンディングでリターンを開始したスマート農業センサ。葉っぱの部分を触ると、右側の葉っぱにあるLEDが3色に光って土壌水分量の状態を表す。 クラウドファンディングでリターンを開始したスマート農業センサ。葉っぱの部分を触ると、右側の葉っぱにあるLEDが3色に光って土壌水分量の状態を表す。

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