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STEM教育時代の学童保育を訪ねる

生きていくためのテクノロジーを教える—TECH PARKが考えるSTEM教育時代の学童保育のあり方

fabcrossでも幾度となく取り上げているSTEM教育。テクノロジーを主体とした教育モデルとして先進国を中心に大きな関心を集めている。日本でもプログラミングが義務教育に取り込まれるなど、その波は着実に来ている。
しかし、あなたは自分の子どもになぜテクノロジーを学ばなければいけないか説明できるだろうか。収入を増やすため? 良い学校に入るため? それとも、仕事の選択肢を増やすため?

福岡のITベンチャー「グルーヴノーツ」がテクノロジー教育を主体とした学童保育「TECH PARK」を始めると紹介したのは2016年4月だった。その時にお話を伺った、同社会長で発起人の佐々木久美子さんに訪ねるべく福岡に向かった。取材したのは8月。夏休み中で多くの子どもたちが、どのようにテクノロジーを学んでいるのか、運営開始から2年が経ち、どのような変化があったのかを取材した。

ベーシックコースの様子。教室前方に映し出された例を参考にして、課題に取り組む子どもたち ベーシックコースの様子。教室前方に映し出された例を参考にして、課題に取り組む子どもたち
低学年でもタイピングはローマ字入力。子どもたちはひらがなとローマ字の対照表を見ながらタイピングする。 低学年でもタイピングはローマ字入力。子どもたちはひらがなとローマ字の対照表を見ながらタイピングする。

夏休みの某日、福岡の中心街・天神にあるTECH PARKを訪ねた。子どもたちは3つのクラスに分かれて、それぞれのアクティビティをこなしている。小学校低学年中心のベーシックコースでは教室前方に映されたお題に沿って、簡易なグラフィックソフトを使って絵を描き、その絵の下に自分の名前をアルファベットで入力していた。一通りできるとおやつを食べ、教室を元気に駆け回る。モデリングを除けば、一般的な学童保育と変わらない。

一方、壁を隔てた隣の部屋ではアドバンスコースとして、ベーシックコースの内容を一通りこなした児童や、3、4年生以上の児童が集まっている。取材時にはWebブラウザーで操作できる3DモデリングツールTinkercadで与えられた課題をこなしていた。

Tinkercadでモデリングする子どもたち。大人がレクチャーするだけでなく、子ども同士で教え合うことも多いという Tinkercadでモデリングする子どもたち。大人がレクチャーするだけでなく、子ども同士で教え合うことも多いという

TECH PARKのサマースクールは2017年に開始した。2年目となる2018年は毎日40人の児童を受け入れる。スタッフは社員が担当し、毎日のアクティビティのアイデア出しから運営、レクチャーに至るまで全て内製だ。ただし、内製と一言に言っても、学童保育のプロフェッショナルばかりを採用しているわけでもない。
アクティビティの設計/開発には、運営会社であるグルーヴノーツでITエンジニアとして働くスタッフが関わるほか、同社のサービスデザインを手がけるチームが協力している。

こうしたTECH PARKのユニークなスタイルは教育に熱心な保護者からの注目度が高く、東京や海外から帰省を兼ねて子どもを通わせる保護者もいるという。

グルーヴノーツ代表取締役会長 佐々木久美子さん グルーヴノーツ代表取締役会長 佐々木久美子さん

「ここで子供たちがやっていることって親が分からないことばかりなんですね。プログラミングとかモデリングとか。家の中で一番コンピューターのことを分かってるのは自分だっていう自負が子どもの中にあって、自己肯定の大きな源になっています。親御さんも、子どもたちが家の外で、自分には分からないことを学びながら、どんどん新しい世界を拡げていく様子を見て、子育てしてきたことへの自信につながっていると思います。親だって叱るだけじゃなくて、褒めたいんですよね。本当は」

また今年のサマーコースでは、新しい取り組みとして、アドバンスコースよりもさらに難易度が高いアクティビティを望む子どもたちに向けて、新たなコースを立ち上げた。
その内容は、地元の製菓会社協力のもと、子どもたちで新たな商品を企画/開発するというもの。子どもたちは、グルーヴノーツのエンジニアたちと同じオフィスフロアの作業スペースで、Slackを使って関係者とやりとりをしながら、3Dプリンターを使ってお菓子の型を作り、自分たちが考えたお菓子の商品化を目指す。使っているツールも含め大人顔負けの内容だ。

教室の外には子どもたちの活動を報告する壁新聞があった。 教室の外には子どもたちの活動を報告する壁新聞があった。

こうしたプログラムの根底には、実社会の中で学ぶことで、社会課題を解決できる子どもを育てたいという佐々木さんの考え方がある。

「5年生になると売買損益を学校で教わるんですね。原価30円のリンゴを100個仕入れて、売価100円で売りました。でも25個余ったので3割引で売りました。さて、利益はいくらでしょうって教室で先生が話しても、子どもたちは『う~ん?』って首をかしげる(笑)

TECH PARKを始めてから、子供たちがこうした文章題に引っかかっていることに気づきました。ものを売った経験のない人が、ものを売った経験のない子どもたちにこういう問題の出し方をすることで、理解しづらい状況が生まれている。 じゃあものを実際に作って、それを販売している人と、その経験を共にすることができれば、子どもたちは実社会と直接関わりあいながら、課題を見極められます。またその解決手段を探ることで、根本的な理解が得られるのではないかと思ったんです」

教科書を開いて学ぶのではなく、実際に体験して学ぶTECH PARKでは、子どもたちは問題を解くためにテクノロジー学ぶのではなく、課題を解決するための考え方/手法としてテクノロジーを学ぶ。教えていることはテクノロジーの使い方だが、こうした考え方はSTEM教育の枠組みとは異なるように見える。生きていくためにテクノロジーを学んでほしいというのが佐々木さんの主張であり、教育に対するポリシーだ。

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