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Raspberry Pi財団創設者が来日、2017年には公式サイトの一部日本語化や「Raspberry Pi Zero」国内発売も

安価で丈夫、子どもたちがプログラミングで遊べるコンピュータを目指して作られたRaspberry Piは、2012年2月に発売されるや大きな注目を集め、いまやプログラミング教育分野はもちろんのこと、産業/学術分野でも使われるなど、その活躍の場を大きく広げている。Raspberry Piの開発者で英Raspberry Pi財団の創設者、エベン・アプトン氏が先ごろ来日し、Raspberry Piのこれまでの歩みと最新情報について話した。

Raspberry Pi発売までの経緯

Raspberry Piの端緒となったのは2006年、アプトン氏が英ケンブリッジ大学でコンピュータサイエンスを教えていたとき、コンピュータサイエンスを学ぼうという学生の数が以前よりも減り、さらにプログラミングのスキルもせいぜいHTMLのコードを書いたことがある程度という学生が増えていることに気付いた。1990年代にはもっと多くの学生がコンピュータサイエンスを志向し、アセンブリ言語でプログラミングできるくらいのスキルを持っていたというのにだ。

なぜ学生がコンピュータサイエンスを目指さなくなり、プログラミングスキルも下がってしまったのか、アプトン氏はその理由をこう考えた。

1980年代の子どもたちは「MSX」や「Commodore 64」「X68000」などの8ビット/16ビットコンピュータを使ってプログラミングして遊んでいたが、1990年代にはこうしたコンピュータがゲーム機などに取って代わられて、子どもたちのコンピュータサイエンスに対する興味やプログラミングスキルが失われてしまったのではないか。

そこで昔のように子どもが自由にプログラミングできるコンピュータを作ろうと考えたのだ。アプトン氏は以下の4つの必要条件を上げて準備にとりかかった。

  1. プログラミングできること
    かつての8ビットコンピュータは電源を入れればBASICインタプリタが立ち上がってすぐにプログラミングができた。
  2. 面白いものであること
    アプトン氏が1980年代に自分のコンピュータを買ったときは、プログラマになろうとしていたわけではなく、ゲームで遊びたかったという理由だった。それがとても面白かったのでプログラミングをやってみようと思った。
  3. 小さく丈夫なこと
    子どもが学校と自分のうちを何度も往復しても壊れないものにしたい。
  4. 安価なこと
    全ての子どもに1台ずつ持たせたいというビジョンのもと、英国の教科書の値段を参考に価格を25ドルに設定した。

2008年にRaspberry Pi財団を設立し、2011年に最初の試作品を作り上げて1万台を製造した。しかし、Raspberry Piを十分にユーザーに行き渡らせることができるのか、資本は十分なのか懸念し、2011年末頃に英RS Componentsとライセンス契約を結んで製造を委託することにした。最初のRaspberry Piは2012年2月29日に発売したが、1万台は2時間で売り尽くしたうえ初日だけで10万台もの発注があるという大人気だった。英RS Componentsとの契約は製造面においても、全世界的な販売という点においても幸運だったとアプトン氏は話している。

Raspberry Pi発売から現在までのトピック

2016年に日本での生産も開始したRaspberry Pi 3 Model B 2016年に日本での生産も開始したRaspberry Pi 3 Model B

Rsspberry Piはこれまでに「Raspberry Pi Model A」「Raspberry Pi Model B」「Raspberry Pi Model A+」「Raspberry Pi Model B+」「Raspberry Pi 2 Model B」「Raspberry Pi 3 Model B」、それに産業分野からの要望に応えた「Compute Module」「Raspberry Pi Zero」まで、処理能力や機能の異なる製品をリリースしてきた。現在までの累計販売台数は1100万台以上、日本では1カ月当たり1万台が売れている。直近の1年間(2015年10月末~2016年10月末)の内訳では、Raspberry Pi Model A+/Model B+を合わせて30万台、Raspberry Pi 2が100万台、Raspberry Pi 3(2016年2月末発売)は270万台で、合計400万台を販売している。なお、英国と米国で既発売のRaspberry Pi Zeroについては30万~40万台が売れているという。日本での販売も検討中で、2017年の前半に発売したいと話した。このほかRaspberry Piは教育用と産業用はおよそ半分ずつ利用されているとみているが、産業用途の割合は年々増加しているという。

2013年には5Mピクセルの「Pi Camera」モジュールをリリースし、2016年には8Mピクセルの第二世代Pi Cameraモジュールをリリースしている。Raspberry Piに搭載しているチップにはカメラ付き携帯電話向けの強力なイメージプロセッサを備えていることもあり、Pi Cameraは大きな成功を収めているという。

Compute Module Kit Compute Module Kit

Raspberry Piは当初子ども向けのコンピュータとして開発したため、多くの産業分野のユーザーが組み込みシステムに利用されることになったのはアプトン氏にとって驚きだったが、そうした産業ユーザー向けにRaspberry Piのコア部品を小型のSO-DIMMサイズの基板に収めて製品に組み込みやすくした「Compute Module」を2014年にリリースした。NECディスプレイソリューションズは、2017年以降に発売する全てのディスプレイにCompute Module(2017年発売予定の「Compute Module 3」を含む)が組み込めるようにすると発表している。

2015年には携帯性を求めるホビーユーザーや産業ユーザー向けに7インチ(800×480ピクセル)のタッチパネル内蔵ディスプレイを発表し、これも多方面で利用されている。

2016年10月には新しいデスクトップ環境として「PIXEL」を発表した。「Oracle Java VM」「Wolfram Mathematica」「Chromium」「Adobe Flash」などもバンドルしている。

また、Raspberry Piは2012年からRSコンポーネンツやソニーとの協力関係のもと、英国で製造してきたが、2016年10月に日本のソニー稲沢工場でもRaspberry Piを製造することになった。アプトン氏は「先進国でも非常に安価なマシンを作れるという非常に良い実例だ」としている。

教育分野での取り組みとアプトン氏が注目したプロジェクト

アプトン氏は、これまでに教育分野でRaspberry Pi財団が関わった興味深い取り組みを紹介した。

  • 2016年の初め、英国の宇宙飛行士ティム・ピーク氏が特別なケースに収めた2台のRaspberry Pi「Astro Pi」を国際宇宙ステーションに持ち込み、英国の小学生が作ったプログラムを宇宙で動かして実験を行ったこと。今後フランスの宇宙飛行士と同じような実験を行う予定。将来はNASAやJAXAとも協力したいとのこと。
  • 2015年に英国がコンピュータサイエンスのカリキュラムを改善したこと。子どもたちにビジネスソフトの使い方を教える時間を減らし、より多くの時間をScratchやPythonを学ぶ時間を増やした。ただ、教える側の教師へのトレーニングが不十分と認識しており、Raspberry Pi財団は2日間の教師トレーニングプログラム「Picademy」を提供し、英国と米国で1200人以上の教師をトレーニングしてきた。この取り組みを他の国々にも導入できればと考えている。

アプトン氏が1999年にケンブリッジ大学の学生だったとき、コンピュータサイエンスの科目の募集80に対して600人が申し込んでいたが、2008年になると希望者は200人まで減ってしまっていた。これが2015年になると800人にまで回復したとのことで、Raspberry Pi財団の取り組みが、こうした若者のコンピュータサイエンスへの興味の復活に対して役立っていると嬉しそうに話した。

最後に、2016年にアプトン氏が目にしたRaspberry Piを使ったプロジェクトから、3つを取り上げた。

  1. T.J.エムズリー氏が、望遠鏡にPi Cameraモジュールを接続するマウントを作り、それを使って撮影した月の写真を公開した。
  2. 元組み込み系SEで現在はキュウリ農家の小池誠氏が、Googleの機械学習ライブラリ「TensorFlow」とRaspberry Pi、Pi Cameraを組み合わせ、キュウリを12の等級に自動的に選別するシステムを構築したこと。
  3. 地震研究に使われる高価な地震計の替わりに、99ドルで実用的な地震計を作るKickstarterのプロジェクト「Raspberry Shake」。このプロジェクトは1カ月で10万ドル弱を集めることに成功して進行中だ。

3年ぶりの来日となったアプトン氏だが、日本に向けた言及は予想以上に多かった。日本での販売数を現在の2倍に当たる年間20万台程度まで引き上げたいと話したほか、このために、公式情報誌である「The MagPi Magazine」の一部を日本語でも提供することなど、公式Webサイトコンテンツの日本語化についても予定していることを明らかにした。

Raspberry Pi財団公式の製品ではないが、Indiegogoで資金調達に成功し製品化された、Raspberry Piをデスクトップ化する製品「pi-topCEED」。 Raspberry Pi財団公式の製品ではないが、Indiegogoで資金調達に成功し製品化された、Raspberry Piをデスクトップ化する製品「pi-topCEED」。

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