子供が夢中になる工作から、大人もうなる精巧なメカに大型ロボットまでーーMaker Faire Tokyo 2023 初日レポート #mftokyo2023
2023/10/14 18:40
オライリー・ジャパンが主催する国内最大級のMakerイベント「Maker Faire Tokyo 2023」が、2022年10月14日と10月15日にわたって、東京ビッグサイト西4ホールにて開催中だ。
昨年から会場での展示が再開し、2023年は昨年にも増してユニークな作品が揃い、多くの来場者を楽しませた。初日の様子をレポートする。
(取材・撮影:淺野義弘、越智岳人)
取材チームが訪れたのは10月14日の午後2時前。入場列はないものの、一部のブースでは人だかりができ動きづらいほどであった。
例年、初日よりも2日目のほうが来場者が多い傾向があるので、明日参加する方は時間に余裕を持って来ることをおすすめしたい。
tomorrow56(E03-03)
『「100円ショップ」のガジェットを分解してみる!』の著者でもあるtomorrow56さんは、M5StickCとサーボモーターを使ったオープンソースのロボットを展示。慣れ親しんだ形のコントローラーで、直感的に四脚ロボットの動きを制御できる。「ファミコンのコントローラーは丈夫で便利。中古品も完動品が多く、そのまま使えて便利です」とのこと。
木の歯車工房(D02-01)
手書きの設計図と手作業による加工で、超絶技巧の木工作品を発表し続ける「木の歯車工房」は新作を多数出展。
fabcrossでの記事でも多くの読者を驚かせたメカニズムは現在も発展中。多くの来場が足を止め、精巧な作品の数々に興味を示していた。
MONO Creator's Lab(E03-06)
自動車メーカーの企業内部活動として、遊べるモビリティや卓上ロボットなどを制作するMONO Creator's Lab。
距離センサやカメラを活用して制作した「誰でもコインパーキングが始められる機械」は、既存装置の認識精度の問題などを解決し、一部の駐車場で実証実験を始めているという。複雑な料金形態の計算もシステム上で一括管理し、センシング精度も既存のシステムを上回る評価を得ているという。
fabcrossライターとしても活躍する小林竜太さんは、M5stackを活用したコントローラー付きの4脚ロボットなどを展示し、たくさんの来場者に親しまれていた。
蘭潭中学校 LANTAN MAKER CENTER(Y05-03)
会場では人が乗るサイズのモビリティも会場の各所に展示されている。こちらは台湾の中学生たちが制作した「巨獣V2」。
学校の壊れた机や椅子、ポンプ用モーターなどを組み合わせた乗り物だ。重量150kgほどの巨体が、大人一人を乗せながらゆっくりと前後に動く。設計から機械の構造、電力システムの構築まで経験した学生たちが、流ちょうな日本語でプロセスを紹介してくれた。
超小型ホバークラフト研究室(M02-08)
自宅の工房で一人乗りのホバークラフトを開発し続ける「超小型ホバークラフト研究室」の作品。試作8号機は4つの円盤が囲んだような形状が特徴で、前後2個ずつのエアクッションが膨らみ、空気の力で徐々に進んでいくという。
11台にも及ぶ歴代のホバークラフトの作り方は、なんとすべて独学。アイデアを実現するために学び、ものをつくり続ける、まさにMaker Faireらしさを体現したような作品だ。
T2(F02-02)
こちらのカラフルなマシーンは、家庭用ゲーム「スプラトゥーン3」に登場する乗り物「カニタンク」を再現したもの。
サーボ制御で17の関節を巧みに動かし、球体形状への変形や転がり移動も可能。インクの代わりに水も発射するなど、ゲーム内の機能がほぼ完全に再現されており、プレイ経験者なら興奮必至のクオリティだ。
からくりすと(D01-09)
3Dプリンターを使ったからくり時計の展示。同時に世界7都市の時刻を表示する球体型世界時計「GEARTH」や、巻き上げたおもりの自重だけでカウントが進む壁掛け時計など、複雑なからくりで構築された作品が並ぶ。
巻きバネなども含め、ほとんどのパーツが3Dプリントで作られており、その精度や形状をぜひ会場で見てほしい。
BirthT(SP06-03)
Maker Faireの会場は、どの会場でも3Dプリントした作品であふれているが、3Dプリンター自体を開発する企業も出展している。BirthTの「LeeePRO Mk-I」はベルトコンベア型の3Dプリンターで、連続造形や長尺のアイテムに適した機体だ。
2ヘッドの同時稼働や造形の安定性を高める金属製のプリントベッドの採用など、積極的なアップデートを重ねながら実用化を進めている。
いとうみずき(D02-08)
京都芸術大学情報デザイン学科のいとうみずきさんは市販のセラミック3Dプリンタで出力した陶磁器を出展。
3Dプリントで生じる積層痕を陶磁器らしいテクスチャに昇華させたアイテムには、思わず触りたくなるような魅力がある。素材を押し出すノズルを光造形方式の3Dプリンターで出力し、その形状の違いによってテクスチャを変化させるなど、新たな意匠の研究が進んでいた。
O'Baka Project(E05-06)
ボトルシップならぬ「ボトルサーキット」が目を引くこちらのブース。瓶の中で基板や部品、配線などをはんだ付けして組み立てるという。瓶に収めるための設計には時間がかかるものの、グリップを外して魔改造したはんだこてなど道具も工夫。組立作業は数時間で終わるというから驚きだ。
OKs(Y04-07)
こちらも同じくボトルの中で組み立てる3Dプリントのオブジェ。
畳んだ状態で瓶の口を通し、中に入れてから元の形に戻すなど、機構を巧みに使いこなして構成されている。専用のスタンドに置いてボタンを押せば磁力が伝わり、ボトルの口径よりも大きなオブジェが瓶の中で動き出す。
熊本大学 上瀧研究室(Y06-03)
陽気な音楽に引かれて目を向けた先には、なにやらメカメカしいサックスが。
指の代わりにロボットがキーを抑えてくれるため、プレイヤーはリズムに合わせて息を吹きさえすれば良い。音ゲーのように楽しめる演奏システムは、新しい楽器やセッションの楽しみ方を私たちにもたらす(かもしれない)。
ISGK Instruments(O01-08)
マイコンボードを駆使した自作シンセサイザーもMaker Faireではおなじみだ。
Ryo IshigakiさんはRaspberry Pi Picoとオーディオ用DAC基板を用いたシンセサイザーを出展。ソースコードは公開されており、誰でも改造できる。Ryo Ishigakiさんは電子楽器を制作し続けるMakerであり、『ラズベリー・パイPico/Pico W攻略本』にもシンセサイザー制作記事を寄稿している。
八幡浜の三瀬医院(D01-10)
fabcross で「Dr.片山の100均ロボット研究室」を連載中の片山均さん。100円ショップで集めた素材で、バリエーション豊かに動く作品群を展示していた。
卓上に収まらず、通路を闊歩する大型の作品も、動力は100均で買える毛玉取り器のみ。技術があれば、低予算でもここまで作れるのかと驚かされる。
PIEO(Project Input — Enhanced — Output)(S01-08)
こちらは葉っぱにワイヤークリップを取り付けてて、植物の持つ「植物生体電位」を計測しているところ。まだ謎の多い植物生体電位の研究は、効率的な光合成や生育条件を明らかにすることにつながるのだという。クラウド上での可視化や記録システムには、fabcross ライターの前嶋武さんも関わっている。
蕪木 孝(M02-03)
最後に紹介するのは、腹筋ローラーを電動化して前に進もうという取組。マシン部分が完成しても、己の腹筋を浮かせなければ成立しない身体負荷の高い発明だ。
「全自動ルービックキューブ」の開発者として知られる蕪木孝さんの新たな挑戦を、ぜひ会場で見届けてほしい。
例年以上の賑わいが感じられたMaker Faire Tokyo 2023。体験型のユニークな展示や、家族で楽しめる工作ワークショップなど、ここでは紹介しきれないほどのコンテンツが会場を埋め尽くしていた。
ぜひお気に入りの作品を見つけて、Makerたちとの交流を楽しんでほしい。