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IoTハードの戦い方を知ろう——シャープがIoTベンチャー向けブートキャンプを始める理由

プログラムを実施するにあたって、事前にスタートアップを天理市に招きパイロット版のプログラムを実施している。そのうちの1社がスマートロックの開発を手掛けるtsumugのCEO牧田恵里氏も試作から量産に進めるにあたって大きな壁にぶち当たっていた。

「プロトタイプから量産に移るにあたって、スケジュールや金額を量産パートナーと交渉していたのですが、相手が求める情報を事前に出せてなかったり、ずっと手探りでやっていました。ちょうど、その頃にブートキャンプの話があって、自分が課題に感じていた部分を知ることができるとあってすぐに参加を決めました」(牧田氏)

ブートキャンプではNDA(秘密保持契約)を結んだ上で自分たちが開発している製品やビジネスプランをシャープ側に話し、量産にあたって何がボトルネックになりそうか、注意すべき点などを個別でサポートを受けることができた。それによって、工場との間にあった共通言語の無さが解消されていったという。

「できるだけ幅広い領域を押さえながら、量産の時につまずきやすいポイントなどを具体的な事例も含めてプログラムを組みました。手探りな部分もありましたが、教科書的なレクチャーではなく、この部分は肉厚が足りないとか、こういった形状はすぐに熱で駄目になるといった、シャープ社内に蓄積された過去の失敗事例も挙げながらレクチャーした点は参加者から反響がありました」(村上氏)

「1コマ90分なんですがスタートアップからの質疑応答が多すぎて、1コマ120分でも収まらなくて、それに対してシャープさんも質疑応答の時間を用意したり柔軟に対応してくれました」(牧田氏)

パイロット版ブートキャンププログラムの様子。(写真提供:シャープ) パイロット版ブートキャンププログラムの様子。(写真提供:シャープ)

オープンイノベーションをハードウェアで進めなければならない理由

いままでに無い新しい製品を日本から生み出したい。そして、世界に向けて展開したいという思いは大企業もスタートアップも変わらないし、試作や量産を担う工場も同じ思いだ。そうした立場の違う人達がボタンを掛け違えることなく、世界で戦える状況をIoT分野で作りたい。今回のプログラムにはそうした思いがこめられている。

「資金が潤沢で世界中にディストリビューションがありコモディティ化を守る力があった頃の日本の電機メーカーに、日本のネット企業をどんどん買収してほしかった。でも、当時はお互いに話を聞こうともしなくて、そういった環境も無かった。結果的にはgoogleのような海外企業がスタートアップを次々と買収しネット分野では日本は大敗しています。それを繰り返したくないという思いがあります。スタートアップは大手のノウハウをうまく取り込めばいいし、大手はスタートアップの中に光るものがあれば一緒にビジネスを展開するような形で、IoTはグローバルで戦える環境にしたいと思っています」(小笠原氏)

「スタートアップの製品に興味を持つ工場も一定数あって、あとは量産に向けて問題なくやり取りできれば、今スタートアップが抱えている問題だけじゃなく、工場側がスタートアップとの取引に感じるリスクも下げられると思います」(牧田氏)

「工場からすると、普段のやり取りから支払いに至るまで、スタートアップとの案件はリスクしかないのは事実です。現状、そのリスクを下げるために生産ラインに大きな影響が無いよう、工場側のスケジュールで調整したり、2回必要な工程を1回にするといったことをせざるを得ない。それに対してシャープが量産をサポートしているという信用力と、工場との共通言語を身につけることで、課題を解決していけたらと思います」(小笠原氏)

品質基準や安全管理は前例や基準が自分たちに無い分、スタートアップにとっては弱い点だが、シャープでは、その基準をどのように決めたかというプロセスから説くことで、単純な知識ではなくメーカーとして必要な考え方を見につけてほしいと考えている。

「このプログラムは知識ではなく考え方を知ることが大事で、例えば温度基準を知識として知るのではなく、なぜ温度基準というものがあるのか、それを具体例と併せて示すことで本当に必要なものが身についていく。シャープも単純に過去の事例を切り売りしているわけではなく、参加するスタートアップが個々の製品と照らし合わせて自分たちで品質や安全基準を考え、定められるように伝えています」(村上氏)

 パイロット版プログラムに参加したtsumugはプログラム終了後もシャープのサポートを受けながら、量産に向けた準備を進めている。シャープでは1回につき最大4社を受け入れ、年4回の実施を計画しており、第1回の応募締め切りは11月1日までとしている。

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