Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
Hello again パソコンをインテリア家電に変えたトランスルーセントPC 「Apple iMac G3 233MHz」
iMacは突然私たちの前にやってきた。時代は1990年代後半、もともとアップル好きだった筆者がまだデザイン会社勤務だった頃、マックはプラチナホワイトの筐体をもつ「Power Macintosh G3」がデザイン業界の標準ツールだった。デスクにはタワー型や横置きタイプのPower Macintosh G3に、トリニトロンやダイヤモンドトロンの大型ブラウン管ディスプレイが接続され、Adobe Illustrator、Adobe Photoshop、Vectorworks等のソフトが盛んに動いていた。そんな中、アップルから1998年突然「iMac」がアナウンスされた。衝撃だったのはそのデザインで、およそパソコンらしくない、想像を絶するスタイルと、トランスルーセントという半透明な筐体に誰もが驚いた。
そしてパソコン本体のみならず、マウスやキーボード、配線コードまでが統一されたデザインで、その完成度に感心したのだ。そんなiMac G3初代を今回友人から入手したので当時のこだわりを見てみよう。
本体はホワイトとボンダイブルーと呼ばれる半透明(トランスルーセント)の2つの素材を組み合わせて作られている。白と青のバランスが美しく、パソコンの内部が透けて見える構造は斬新だった。
本体を斜め上から見ると6色から単色になったアップルロゴがモニターの上部にある。さらにモニター周りの白い素材も後ろへ回り込んでいるのが分かる。
そして側面を見ると、白と青の部分が斜めに分けられている。後方部分はブラウン管の形状に合わせデザイン処理されている。
上面後方にはiMacを移動させるときに使うハンドルがある。iMacは重いブラウン管を内蔵しているためこのハンドルだけで持つとバランスが悪く、両手でバランスよく持つ必要がある。
ハンドルの下のお尻の部分にもさりげなくロゴがある。
本体の右面下部には入出力ポートがある。iMacからはADB(Apple Desktop Bus)ポートが廃止され、USBポートや、イーサーネット、マイク、スピーカーなどの入出力が並んでいる。そしてポートの周囲にはホログラフの素材が使われている。元来はこの部分にはふたもある。
モニターの下には24倍速のCD-ROMドライブが標準装備されている。中央の青いイジェクトボタンを押すと軽やかに半分程度が出てくる。
そしてその横にあるスピーカーにはヘッドフォンジャックがある。端子はなぜか2つあり、2人同時に使用できる設計になっている。内蔵スピーカーも小型だが臨場感のある音を再現するスピーカーが使われている。
そして付属品のキーボードは本体同様のカラーで、USBポートが両端にあり、写真では見えないが裏面にアップルロゴが配置されている。マウスも手にすっぽりと収まる円盤型のユニークなデザインだ。細かいがマウスボールも2色になっている。また写真はないが、電源ケーブルもトランスルーセント素材で、アップルのこだわりを感じさせる。
パソコンの新時代を築いたiMac G3は、パソコン界だけではなくあらゆるプロダクトに影響を与えた偉大なパソコンだった。
「Apple iMac G3 233MHz」
発売時期: 1998年
1998年に起きた主な出来事
- アントニオ猪木が東京ドームで引退試合
- CDバブル絶頂期(CD生産枚数が国内史上最高を記録)
- 映画『タイタニック』公開