Fabbleの使い方
Fabbleを使ってゆるやかにファブをはじめる——ファブラボ平塚(神奈川大学)の取り組み
価値を作る行為
「作る意欲があるのに、作りたいものがない」という問題を構造的に考えるために、作るという行為を分類することにしました。分類といっても方法や道具で分類すると細かくなりすぎるため、“価値を作る”という視点でとらえ、現時点では“個人で何かしらの価値を作る行為”は表のような5つの要素の組み合わせで説明できるのではないかと考えています(まだまだ検討の余地はあり)。
再現と編集
この表に当てはめて考えると、レーザー加工機を使用して自分の名前や写真を彫刻するという行為は”投影“です。”投影“は普段の生活で見慣れている印刷や写真の現像という行為の機械と素材を置換しただけなので、アイデアとしては容易に出てくるものだと考えられます。
“投影”も十分に個人的価値が高く、商業的価値も高い行為ですが、創造性はあまり高くないと考えられます。“再現”は技術力を身につけることができますが、“投影”と同じく創造性は高くありません。思弁的な考えにはなってしまいますが、おそらく彼らの悩みを解消するには再現と編集を組み合わせた経験を重ねることが必要なのだと考えています。そこで、Fabbleを使って、ものづくりの入り口になるような「ゆるファブレシピ」を作り、再現と編集を組み合わさった経験を提供する取り組みをはじめました。(ゆるファブレシピは、ゆるいファブでなく、ゆるやかにファブの世界に入っていくためのレシピです)
ゆるファブ
普通のレシピでは作るプロセスの共有を目的としていますが、ゆるファブレシピはレシピを見て、応用し、発表する場としての意味合いが強く、
- 何かしらデジタルファブリケーションに触れる機会がある
- 自分なりにアレンジ(編集)する余地がある
- レシピを参考にして作った自分の作品を積極的に投稿するように促す
というレシピです。再現しながらスキルを身につけ、編集しながら考える力を養っています。製作プロセスの共有というより、レシピはあくまで教科書的な位置付けで、1つのレシピから生まれる結果の多様性を共有することに重きを置いています。この多様性が学習者の思考を柔軟にしてくれれます。
ゆるファブレシピの例
ゆるファブレシピには、MDFと3Dプリンタで作ったバキュームフォーマーを使って、プラスチック型を作るというレシピがあります。このレシピでは、まず「バキュームフォーマーを自分で作ったの??」という、初心者にとっては驚きとともに3Dプリンタやレーザー加工機の活用法に触れることができます。プラスチック型は手順に沿って作っていきますが、原型の作り方(3Dプリンタを使う、紙粘土を使うなど)や型をどのように利用するかは “編集”する余地が残っています。そして、型を使って作ったものを積極的に投稿してもらうことによって結果を共有します。投稿が増えるにつれて、新規の学習者には「もっと面白いことをしてやろう」「もっとすごいものを作ってやろう」という競争心も芽生え、どんどん考えるようになってきています。