fabなび
さかわ発明ラボ(高知県佐川町)
日本全国のファブ施設を紹介する「fabなび」。今回は高知県佐川町の「さかわ発明ラボ」。JR高知駅から特急でおよそ30分、高知県佐川町の町役場そばにあるファブ施設だ。
人口およそ1万3000人、高知県中西部にある佐川町は、町長主導のもと町民自身による街づくりに取り組んできた。町民を巻き込んだまちづくり総合計画作成をきっかけに最新の技術とデザインで新しいものづくりを行う場所として2016年5月に設立されたのが「さかわ発明ラボ」だ。
総務省の「地域おこし協力隊」制度を利用して佐川町に移住したメンバーが中心となってラボを運営している。
「実はラボの立ち上げ時には細かなユーザーや利用場面の想定は行っていませんでした。佐川町ではもともと自宅に工房を持っている人が多いのですが、デジタル・ファブリケーションにはなじみが薄いので、まずはラボの存在を知ってもらうために、さまざまなワークショップを企画して地道に参加を呼びかけました」(森川さん)
認知度を上げるために実施したワークショップやイベントは、地域とのつながりを意識したものが多い。佐川町民の憩いの場である牧野公園に設置するベンチを作るワークショップには、普段から公園の手入れをしている人や口コミで知って参加した親子など、幅広い参加者が集まった。尾川小学校の6年生を対象としたプログラムでは、授業のカリキュラムとして1年にわたってロボット製作に取り組んだ。
なお、ワークショップ内で利用された木材は全て佐川町で伐採・加工されたものだ。佐川町では地域の森林を山の持ち主や地域住民ら自分たちの手で間伐し出荷する「自伐型林業」を推進しており、そこで間伐された丸太を町内の製材所で加工した、「顔の見える」木材が発明ラボで積極的に利用されている。
1年のプレオープン期間を経て、正式にオープンしたのは2017年の4月。毎週のように通って技術の向上を楽しむ高齢者や、隣町から作品制作に来るアーティストなど、個人の趣味・嗜好(しこう)に合わせてラボを利用するユーザーが増えてきたという。
また、デザインやエンジニアリングを専門とするメンバーをスタッフとして積極的に採用したことで、発明ラボが提供するコンテンツもより多様化している。
スタッフが各々の得意分野を活かして手掛ける「放課後発明クラブ」は、小学生を対象として毎週木曜日に実施してきたプログラム。電子工作やプログラミング・メカニズムなどを積極的に取り込んだ内容は、リピート希望者が出るほどの人気になっているという。
さらに、地域とのつながりをより強く意識した活動も増えている。
自伐型林業で得られる木材だけでなく、佐川町でとれる食材や植物など、さまざまな資源を用いながら、生産から加工・サービスまでを含んだ6次産業として新しい価値を生み出すことを目指しているという。地元の木材で作ったオブジェや食器と一緒に、地元の食材でできたプリンやカレーを食べるような取り組みは、まさに発明ラボが生み出した佐川町ならではの体験と言えるだろう。
発明ラボを中心に、様々な資源とデジタルマシン・デザイナーやアーティストがつながり、佐川町だからこそできる価値のある体験やプロダクトが生み出され始めている現在。発明ラボで作られたプロダクトの一部は、町内の観光案内所やissue+designのウェブサイトで購入することができる。そのような「発明品」の創出を目指しながらも、町民のための場所であるという根本の部分は揺らいでいない。
「今よりももっとたくさんの町民の方に来てほしいと思っています。ラボが建物の二階で分かりにくいという意見もいただくので、もっと直接目に触れやすい場所で何かできないか計画している最中です。せっかく町内で素材の調達から加工までできる環境が整っているので、佐川町で生まれて発明ラボで加工されたものが町全体に行き渡ってくれたらうれしいし、それができる場所だと感じています」(森川さん)
概要
所在地 |
〒789-1201 高知県佐川町甲1581 |
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営業時間 (オープンラボ) |
金曜日 14:00~21:00 |
URL | http://hatsumei-lab.org/ |
料金 |
会費 機材利用料金(1時間あたり) |