位置情報×IoTの最前線
物流パレットにGPSトラッカーを搭載して回収サービスを提供——日建リース工業
位置情報だけでなく温度や衝撃なども測定可能
レンタル品として提供するパレットのほとんどはプラスチック製で、GPSトラッカーの搭載にあたっては中央部分に格納スロットを設けた新たなパレットを作ることにした。プラスチック製パレットは基本的に一体成形であり、新たな金型を起こすには多大な費用がかかる。これまでにも既存のパレットにGPS搭載をオプションで提供している会社はあったが、専用のパレットを新たに開発した企業は日建リース工業が初めてだという。
パレット以上に苦労したのが、GPSトラッカー本体の開発だ。GPSによる測位と携帯電話回線による通信を行いつつ、津村氏は「最低でも半年は動作させたい」という目標を掲げた。
「最初は太陽光発電や振動発電などの方法でパレットに搭載した状態で充電できないかを検討したのですが、コストとの兼ね合いもあり、最終的には電池を使うしかないという結論に至りました。その上で消費電力を抑えるために、GPSモジュールと通信モジュールいずれについても、できるだけ省電力のものを使うようにしました」(津村氏)
バッテリーの形状も、当初は薄い板状のものを使用する予定だったが、容量に余裕を持たせるために円筒形のものに変更した。これにより、バッテリー交換もふたを開けるだけで簡単に出し入れしやすくなったという。パレットの貸出は数百~数千枚の規模で行うため、バッテリー交換の手間もかなりかかるため、少しでも交換しやすい形状にする必要がある。
パレットは重い荷物を載せた状態でフォークリフトで上げ下げされ、ときには落下して大きな衝撃を受けることもあるため、ケースはできるだけ丈夫なプラスチック製にして、繰り返し耐久テストを行ったという。また、屋外に出されたまま放置される場合も少なくないため、防水性と耐衝撃性のあるケースを採用した。
このほか、開発を進めるうち「温度センサー」と、衝撃を測定するための「速度センサー」、「RFID」の3つを追加した。
「GPSで位置情報を取得するだけでなく、パレット周囲の温度や受けた衝撃なども取得できるようにしたほうがいいと考えました。また、パレットにどのような荷物が載せられているかを管理できるように、RFIDで個々のパレットを識別できるようにもしました。これにより、どこの拠点にどのパレットが何枚移動したか、そこになにが載っているのかという情報を管理することができます」(津村氏)
これらの位置情報や温度、衝撃、RFIDなどの情報は、Webアプリ上で一元管理することが可能で、「回収サービス付きパレットレンタル」の利用者であれば無料で利用できる。パレットの位置を地図上に表示することが可能なほか、工場の敷地内などの特定範囲を指定して、そのエリア内に何枚パレットが存在するのかを集計したり、パレットの移動軌跡を地図に表示したりすることも可能だ。
「実際に利用されたお客さまからは、『パレットを紛失しても請求されないので、コストの面で良かった』という声をいただきました。また、『これまでパレットがどのような経路を移動して、どのようなところで紛失してしまうのかが分からなかったが、位置情報を確認することではっきりと分かった』という方もいました」(津村氏)