2020年プログラミング必修化!「作る」ことで分かるSTEM教育
第1回 STEM教育とは何か?~それはコンピュータの歴史と共に始まった~
2020年、小学校でプログラミング教育が必修化されます。コンピュータ抜きでは成り立たない日常生活、成長産業としてのIT分野への人材確保などが背景にあります。
「STEM」という言葉も聞かれるようになりました。コンピュータを介した新しい教育です。21世紀をコンピュータと共に生きる子どもたちは、何を学び、どう生きていかねばならないのでしょうか? キーワードは「Make=作る」です。
この短期連載では、プログラミング教育やSTEM教育の現状と未来を探ります。
(イラスト:フラグメンツ)
「STEM」の意味
STEMは「ステム」と読みます。「Science(科学)」、「Technology(技術)」、「Engineering(工学)」、「Mathematics(数学)」の頭文字をとったものです。教育における対象領域を端的に表しています。
例えていえば、次のように考えられるでしょう。19世紀、産業革命を人類にもたらした蒸気エンジンを例にとりましょう。
水を熱すれば蒸気になります。これはScience。どのくらいの水にどのくらいの熱を加えるとどのくらいの蒸気が発生し、蒸気圧として数値化できるかは、Mathematics。その蒸気圧をエネルギーとして取り出せるかどうかはTechnology。エネルギーとして取り出す具体的な装置として蒸気エンジンを作るのがEngineering。
蒸気エンジンひとつをとってみても、4領域が密接に関連していることが分かります。
しかし語源だけをとって単純に「4領域にまたがる教育がSTEM教育である」ととらえると本質を見誤ります。STEMを学ぶことで「コンピュータやIT技術に対応できるようになる」ことはその結果に過ぎません。
本質は「21世紀型の自ら学びとる人間を育てる」ことにあります。教育界が長年志向してきた「自ら学びとる」教育が、コンピュータの普及によって具体化できるようになりました。それがSTEM教育の本質です。
プログラミング教育とSTEM教育の間には言葉の混乱も見られます。いうまでもなく、コンピュータを動かすためには、プログラミングは重要です。E領域つまりエンジニアリングのスキルとして欠かせません。その意味でプログラミング教育はSTEM教育の核をなすもののひとつといえます。
また、STEMに「Art(芸術)」を加えて「STEAM(スチーム)」とする考え方もあります。いずれにせよ、「コンピュータを使って自ら学びとる教育」という本質に変わりはありません。