2020年プログラミング必修化!「作る」ことで分かるSTEM教育
第1回 STEM教育とは何か?~それはコンピュータの歴史と共に始まった~
背景にある教育界の歴史
19世紀の産業革命以降、教育は近代国家に欠かせないものでした。労働の担い手を生み出し、市民社会を形成するために必要だったからです。そこでの教育技法は「教師が生徒に教え込む」つまり「教師から始まる」教育でした。
20世紀に入り、市民社会が成熟すると、違った教育技法が生まれました。「成長過程にある人間の自主性を認め、そこを起点とする」ものでした。いわば「生徒から始める」教育です。
市民社会がさらに高度化し、扱う情報が飛躍的に増大する中、後者の教育技法は常に不利な状況を強いられました。理由は時間。自ら学びとる手段を持たない生徒は必要な情報を手に入れるにも時間がかかりました。「知りたいときに知りたいことをすぐに知る」ことができる手段は、当時は存在していませんでした。
1950年代から60年代、第二次大戦を経て発展した情報処理技術は、コンピュータという新しい機械を生みだしました。
その頃は研究室に置かれ、一部の人間しかタッチできないものでしたが、1970年代、研究室を抜け出し、小型化。80年代から90年代にはパーソナルコンピュータ=パソコンとなって家庭に入り込み。さらにパソコン同士が繋がり、インターネットを生みました。
21世紀、「知りたいときに知りたいことをすぐに知る」時代がやってきました。「生徒から始める」教育を推進できる環境が整ったのです。
人は自らの強い興味・関心に基づいて動くとき、最も継続的にその意志を持続させ、努力を惜しまないものです。絞られた目標に向かって情報を切り取るとき、初めて学問の領域を飛び越えていきます。領域から選別された情報は、目標のために集約され、ひとつのものとして解釈されるからです。
「考えたことをコンピュータの力で具現化する21世紀のリテラシー」は自らを起点とすることでしか学べません。STEM教育が、「生徒から始まる」「自ら学びとる」教育にならざるをえない理由がそこにあります。単純化できるところはコンピュータに任せ、創造力を必要とするところに努力を傾注することで、従来と同じ時間を使って教育的な成果をあげられるようになったのです。