新しいものづくりがわかるメディア

RSS


2020年プログラミング必修化!「作る」ことで分かるSTEM教育

第6回 STEM教育には欠かせないコミュニティの存在とマイコンボード「micro:bit」が目指すもの

日本でも8月初旬のMaker Faire TokyoでローンチされたイギリスのSTEM教育用マイコンボード「micro:bit(マイクロビット)」。さらなる普及をめざし、世界各国でのローンチが続いています。運営の主体はmicro:bit財団。micro:bitの普及と新たなコミュニティ作りをめざすCEOのZach Shelby氏に話を聞きました。

micro:bit財団のCEO、Zach Shelby氏。 micro:bit財団のCEO、Zach Shelby氏。

環境を整えればユーザーは増える

——micro:bitの開発と財団立ち上げの経緯について教えてください。

micro:bitのプロジェクト発足時、私はARMのIoT部門にいて、開発のための技術的なサポートをするために参加しました。micro:bitにはARM Cortexマイクロコントローラーが使われ、mbedのシステムが採用されていたからです。2016年、イギリスのすべての7年生(日本の小学校5、6年生にあたる)約100万人にmicro:bitを渡してからは、世界中で使えるようにするため非営利団体で扱うことが決定されました。2016年10月のmicro:bit財団の立ち上げとともにCEOとして財団を率いていくすばらしい機会が私に与えられたのです。

micro:bit財団立ち上げ時のプレス発表会。 micro:bit財団立ち上げ時のプレス発表会。

——これまでにどんな活動を行ってきましたか?

私たちは、学校で使うフィジカルコンピューティングのためのデバイスを世界で最初に開発するという壮大なミッションに挑戦しています。財団を立ち上げから1年足らずで世界40カ国に普及させました。非営利団体として、このスピードでテクノロジーのスタートアップを築くということは、比較的珍しいと思います。私たちが重要だと考えていたのはきっかけづくりです。世界中でmicro:bitを楽しむためのグローバルエコシステム、ユーザーコミュニケーション、教育システム、そういったものの構築に努めました。環境が整いさえすれば、あとはmicro:bitというボードの魅力でユーザーが増えていくだろうと思ったのです。

現在のところ、すでに世界40カ国で使われています。2017年は北米、ヨーロッパ、アジアなどにさらに広がっていくでしょう。今後は東南アジアや、アフリカ、ラテンアメリカなどの開発途上国へも広げていきたいと考えています。

テクノロジーに触れる楽しみ

——micro:bitの魅力のひとつに加速度センサーや地磁気センサー、LEDやBLEなどがボードにオンされている点があると思います。なぜ、こういった仕様になったのでしょうか?

開発チームは、数学や科学、物理や芸術や音楽などを学ぶために学校でmicro:bitを使うときに最も役に立つセンサーやインターフェースを探していました。各種センサーやLEDなどは、その過程で採用されていきました。また、スマートファンアプリを使ってできるエキサイティングな体験を加えるため、通信機能は外せないと考え、BLEを付け加えました。プログラミングという観点では、JavaScript、Python、Scratchといったプログラミング言語をサポートする最先端テクノロジーがデザインされました。

——学校や家庭などで使用するとき、micro:bitにはどんな利点がありますか?

micro:bitの利点は、コンピュータの扱いに慣れていな子どもや大人(特に教師たち)にとって簡単にテクノロジーを使った何かを作れるようにデザインされている点です。ユーザーはシンプルなプログラミングソフトを使って目的とすべきことをボードに伝えることができます。最初の数分で素早く、実際に仕事を行うためのテクノロジーに触れるという楽しみを体験し「もっとできる」という自信を持つことができます。

私たちは、学校で、家庭で、塾で、micro:bitを使う世界中の子どもたちを見ています。教師は問題を解決したり、テクノロジーの使い方を教えたりする通常の授業の教材としてmicro:bitを使っています。そこには、micro:bit財団とそのコミュニティが、広い範囲の使用可能な教育カリキュラムを提供しています。イギリスではすでに、コンピューティングが教科となり、micro:bitはその大きな要素となっています。

世界各国の学校で教材としてmicro:bitが授業に使われている。 世界各国の学校で教材としてmicro:bitが授業に使われている。
家庭で簡単に使えるのもmicro:bitの魅力のひとつ。 家庭で簡単に使えるのもmicro:bitの魅力のひとつ。

——日本のマーケットに期待することを教えてください。

私は昔から日本の文化が大好きで、学生時代から何度も訪れています。その意味で、micro:bitを日本でローンチするということは、私にとって非常に特別なことです。2020年のプログラミング教育の小学校導入に伴い、マイクロソフト、ソフトバンク、スイッチエデュケーションを含む私たちのエコシステムと一緒に働くことに興奮を余儀なくされています。また日本での普及活動は、micro:bit使用のサポートの手助けをするイギリス政府とともに行われます。同時に、日本には、すでにmicro:bitの互換機(chibi:bit)を楽しみ始めた非常にエキサイティングでアクティブなMakerムーブメントがあり、これが次世代のMakerたちをサポートする私たちのコミュニティのさきがけとなることにも期待しています。

ニュース

編集部のおすすめ

連載・シリーズ

注目のキーワード

もっと見る