アジアのMakers by 高須正和
ロボティクス教育のための最後のピースを埋めるMakeblock
深センのShenzhen Maker Works Technologyは、誰でもロボティクスが学べるツール、21世紀の大人のためのレゴとして、Makeblockという製品を開発した。2012年に5人で創業した彼らは、2016年5月現在で社員200人を超える大手企業に急成長し、さらに子ども向けのロボティクス教育ツールを開発している。
ロボティクス教育のための最後のピース
下の画像は彼らが創業当時のプロモーションビデオにあるものだ。ロボティクス、ロボット技術を学ぶためには、プログラミングと電子回路(マイクロコントローラ)に加えて、メカニクスを学ぶ必要がある。
Arduinoのようなマイコンを使って、ラジコンカーを作ることを考えて見よう。まず、制御するソフトウェアを書く必要がある。例えば「前」のボタンを押したときラジコンカーが前に進むためには、そのようにソフトウェアがつくられていないとならない。
電子回路がないとソフトウェアで制御できるラジコンカーはできない。前に進むためにはモーターを回す必要がある。マイクロコントローラにソフトウェアを書いたとして、電子回路を通じてモーターに決められた電力を供給しなければならない。
最後のメカニクスは前に進む仕組みのことだ。ラジコンカーならモーターにタイヤをつければ前に進むかもしれない。では、歩くとしたら? どういう機構があれば右足と左足がかわるがわる前に出るんだろう? モノをつかむとしたら? 関節は何個必要で、強すぎも弱すぎもしない力でモノをつかむためにはどういう機構がいるんだろう?
Makeblockはこの機構の部分を学ぶためのツール、または楽しむためのオモチャだ。丁寧に面取りされたアルミ押し出し材で作られたパーツは堅牢で、簡単にはゆがまず、精度の高いものが作れる。等間隔に開いているネジ穴の他に中心部の溝にもネジ山が切ってあって、任意の位置に他のパーツを固定できる。基本のアルミパーツの他にジョイントやさまざまなモーターなど、機構を実現するパーツ類があり、さまざまなロボットを作ることができる。
さまざまなキット
パーツをバラバラに買うこともできるが、さまざまなロボットを実現するためのキットが何種類も販売されている。
キットの中心になるマイクロコントローラはどれも共通で、Arduino Unoと互換性がある。キットを想定通りに組みあげたら、キットごとに用意されている製品Wikiからソフトをダウンロードすれば、プログラミングができない人でもロボットを組み上げ、思い通りに動かす遊びが出来る。パーツの一つ一つは汎用のレールやギヤなので、そこでおぼえた知識は自分でロボットを思いつく発明のときに役立つ。キットの部材がアルミでできていて頑丈なこと、それぞれの部品はシンプルで何にでも使えるギヤやジョイントなどであることが応用範囲を大きく広げている。頑丈でないものでロボットキットを作ろうとすると、本体の部材があまり堅牢ではないため、多くの専用部品を使わなければならない。
例えば、この「XY Plotter Robot Kit」 の二次元(縦横)上で思い通りの位置に移動する仕組みと、「Ultimate Robot Kit-Blue」の何かをつかむ機構をクレーンでつり下げたら、UFOキャッチャーのようなものを作ることができる。作ったことがある機構、どうやって実現できるかの仕組みが作り手に蓄積されるたびにできることが広がっていく。
新しいキットを生み出すハッカソン
Makeblockでは、Makeblockを用いたハッカソンを頻繁に行っている。下の動画は連載の第一回で触れたSeeedのエンジニアと一緒に行ったハッカソンで、36時間で「実用的なもの(pragmatism)」を作るのがテーマだ。テーマは「アート」「楽器」などそのたびに変わる。
ハッカソンは審査員もいる真剣なものだ。僕は何度か審査員を務めたことがあるが、みな楽しみながらも本気でモノを作っていた。ギーク好みのガジェットが賞品になることも多い。Makeblockの社員の多くがエンジニアで、いつもオフィスは何かを作っている途中のMakeblockであふれている。
こうしたハッカソンから、新しいキットが派生することが多くある。この「Makeblock Music Robot Kit V2.0」はハッカソンからの派生だそうだ。