アジアのMakers by 高須正和
ロボティクス教育のための最後のピースを埋めるMakeblock
出世作の「mBot」をきっかけに、より子ども向けに
Makeblockは大学でロボティクスを学んだJasen Wangたち5人が起業した会社だ。Wangはいまも、なるべく長い時間オフィスにいて、新たなMakeblockの機構を考えている。主力製品のギヤと履帯がかみあう機構などは社長の彼が自らデザインしている。
ライントレースや超音波センサなどのセンサ類は豊富で、スマートフォンとBluetooth経由で接続でき、ビジュアルプログラミング言語のScratchをもとにした言語でプログラムできるなど、ソフトウェアから工夫できる部分は多いが、メカはこれまでのキットに比べてぐっとシンプルになっている。そして、このmBotはMakeblock最大のヒット商品となり、今はmBotにも派生製品がでてきた。
創業当時のMakeblockはソフトウェアを専門にするエンジニアがいなかった。当初のMakeblockも、赤外線で操作できたが、Bluetoothでスマートフォンをコントローラにしてラジコンのように動かせるのは、スマートフォンのアプリが書けるエンジニアが入社してきてからだ。
完全にコンシューマー向けのmBot
そして今年Makeblockは、さらにコンシューマ向けの製品として「CodeyBot」をリリースした。
この5月にちょうどクラウドファンディングが終わったばかりのこの製品は、アルミフレームで作られているこれまでのMakeblockとは見た目がまったく違う。PCとUSBでつないでファームウェアを書き込むのではなく、タブレットやスマートホンのアプリ上でプログラミングを行う。「これはMakeblockとは違う新しい製品ラインで、よりコンシューマー向けのものだ」と、オフィスを訪ねたときに社長のWangは語った。
CodeyBotはラジコンカーのように扱えるし、タブレットから顔の部分のLEDをデザインすることもできる。MP3を再生させて踊るスピーカーとしても使える。より「オモチャ」としての魅力もあり、これまでロボットにもプログラムにも無縁だった子どもへの最初の一歩を提供することを意図している。
高速でプロトタイピングする姿勢が進化を後押ししている
4月に僕が彼らのオフィスを訪ねたときは、社内ハッカソンの最中で、その場で週末に再訪して審査員に加わることになった。
休日にもかかわらず半数近くの社員が出社してきていて、子どもを連れてきている社員もいる。4~5人で1チームをつくり、チームごとにMakeblockを使ってロボットを作る。オフィスに転がる多くの部品や床に引かれたライントレース用のテープが、Makeblockが引き続きMakerたちの会社であることを物語る。
役員以外では初めての従業員Aliceは、いつも忙しそうに働いている。疲れていないか尋ねると、「この4年間で、アメリカにも日本にもヨーロッパにも行けたし、会社がみるみる大きくなって、自分たちの製品を使ってくれるファンにたくさん会えて、世界中に友達ができた。そういう経験はなかなかできない」と語ってくれた。
深センの市内を歩くと、Makeblockのコピー品が見つかる。深センは世界の製造業の中心であると同時に、劣化コピー品のメッカでもある。Aliceにコピー品について危惧していないか訪ねると、「Makeblockが深センに本拠を置く意味はいくつもあるけど、ここだととにかく作る、売る、試すの距離が最も短くなるのがいい。このエコシステムがあるからMakeblockはスピードを持って開発ができる。コピーする会社を見てもしょうがない。もっと速く新しい製品を作り続けることに意味がある」と一蹴された。
より家電に近いCodeyBotが、市場にどう受け入れられるかは分からない。Kickstarterは大成功しているけど、まだ子供が実際に使っている段階ではないし、Kickstarterで買っている人はたいてい大人で、自分で使うためだろう。
おそらくMakeblockは今年のMaker Faire Tokyoにもやってくるだろう。日本でCodeyBotに触れられるのはそのときが最初になるはずだ。新しい製品ラインをぜひ体験してみてもらいたい。