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アジアのMakers by 高須正和

深センの公板/公模 700円の粗悪アクションカメラに見るイノベーション

模倣品を生むエコシステム 公板(Gongban)公模(Gongmo)、そして中古部品

新しい製品を世の中に出す際には膨大な量の仕事が発生する。中身の設計/外装の設計/部品選び/外箱/マニュアル……そういった作業がプロジェクトをどんどん大きくし、失敗できないもの、スタートアップなどの小企業には手を出せないものにしていく。オンライン販売やクラウドファンディングなどで、生産数が1000個に満たない小ロット製品の売り方は生まれたのに、ハードウェアを製造するほうは対応できなかった。

製造業が集積している深センでは、公板(Gongban)公模(Gongmo)と呼ばれる形で小ロット生産を支える中間成果物が流通している。公板はリファレンスボードのような形で、アクションカメラやタブレットのようにほぼ完成形で流通していることもあれば、カメラモジュールやGPSモジュール+基板のような形でキット的に流通していることもある。

中国のECサイトアリババで「公板」で検索するとモジュール化された部品がたくさん見つかる。価格は人民元(2016年9月のレートで1元≒15円)。左上の、ホバーボードなどに42Vの電源を供給する基板(Bluetoothモジュール付き)は160円ほどで売られている。 中国のECサイトアリババで「公板」で検索するとモジュール化された部品がたくさん見つかる。価格は人民元(2016年9月のレートで1元≒15円)。左上の、ホバーボードなどに42Vの電源を供給する基板(Bluetoothモジュール付き)は160円ほどで売られている。

公模(Gongmo)の“模”はモールド(金型)という意味で、ガジェットの外装や電池ボックスなどに使えるものがそのまま売られている。こういうものを組み合わせると、たとえば「アクションカメラにGPSモジュールを内蔵し、外装はそのまま」みたいな製品を、手に入れた部品の数だけ作ることができる。

アリババで「公模」で検索した結果。MP3プレーヤの外装、車のキーレスエントリなどの部品がそのまま売られている。 アリババで「公模」で検索した結果。MP3プレーヤの外装、車のキーレスエントリなどの部品がそのまま売られている。

今回のニコ技深セン観察会としていっしょに深センを旅した鈴木涼太氏は深センの電気街で売られていた粗悪な700円のアクションカメラを後日分解し、多くの部品がワンチップにまとまっていてコスト削減に貢献している様子をレポートした。(レポート:深センで買った700円アクションカムをバラしてみる

左は「SJ5000」と呼ばれる各国で人気のアクションカメラ。価格は1万円ほど。右が深センの電気街で買った700円のもの。同じ風景を撮影していても、ダイナミックレンジからしてまったく違う。 左は「SJ5000」と呼ばれる各国で人気のアクションカメラ。価格は1万円ほど。右が深センの電気街で買った700円のもの。同じ風景を撮影していても、ダイナミックレンジからしてまったく違う。

箱も外見も立派で、防水ケース含めた付属品も付いている(箱やマニュアルも公模同様に流通している)が、そもそも640×480のMotion JPGの映像しか出力しない低性能カメラで、一見するだけで映像のクオリティは違う。

こういうものを安かろう悪かろうの二級品とみることもできるが、「他の場所では見つけづらい幅広い製品が、実際に製造されて流通している」のは事実だ。上記のアクションカムも、ドライブレコーダみたいな用途なら使えるだろうし、「写りは悪くて良いが、とにかく安いものが欲しい」というニーズは他にも想像できる。

模造品が発明の種に

「豊富に流通しているモジュール単位の部品を背景に、欲しい性能のものを、欲しい数だけ、高速に作れる」というのはfabcrossの読者のようなMakerにとってもメリットになる。

この連載でも何度か取り上げているSeeedは、まさに深センの環境を世界のMakersに対して提供することをビジネスにしている企業だ。(大量生産でもDIYでもない、仲間内で頒布される「同人」ハードウェアが起こすイノベーション)

あらゆるものを携帯電話にできるRePhone Kit。59ドルで販売されている。 あらゆるものを携帯電話にできるRePhone Kit。59ドルで販売されている。

fabcrossでも紹介している同社のRePhone Kitは、10ドル程度で携帯電話が販売されている深センの汎用部品をもとに、世界のMakers向けに「自分の携帯が作れる、自分の作ったものにIoT機能を付加できる」キットとして、すべてのハードウェアをオープンソース化してインターフェース部分も付けて販売している。深センまで来なくても、こうしたキットを使うことで間接的に深センのエコシステムを利用することができる。

インターネットを通じて、情報もお金も設計データもやりとりできることで、深センのエコシステムに国境を超えてジョインすることが可能になった。それ以前は多くの大メーカーが量産工場として中国を使っていたが、今はHAXのように「プロトタイプ段階は深セン」というかかわりかたもあり、国をまたいだMakerたちのエコシステムはますます拡大し、生物が突然変異を生むように、世界を進化させつつある。

告知

今回の内容を拡大した、深センとシリコンバレー他、国境をまたいだMakersのエコシステムについては、「メイカーズのエコシステム」(インプレスR&D刊)という書籍にまとまっています。

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