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アジアのMakers by 高須正和

コピーキングの異名を持つ中国の発明家「山寨王」の考える中華コピー対策

クラウドファンディングで発表された新製品が、実際に出荷される前に中国で安価にコピーされてしまうことはよくある。中国ではそれを指して「山寨死(Shānzhài sǐ)」と呼ぶ。コピーされるのがあたりまえの中国の発明家達に、彼らのコピー対策と、中国で発明を続ける生き残り戦略についてインタビューした。

4つのビジネスを手がける中国の山寨王

Maker友達の中国人で、山寨王と呼ばれる発明家がいる。名前は呉燁彬(イングリッシュネームRobin Wu。以下ウーと表記)。彼はAppleがiPadを発売したとき、わずか60日でIntel製CPUを積んだiPadのニセモノを市場に出して有名になり、以後「山寨王」と呼ばれるようになった。

山寨とは山岳要塞という意味で、転じて中央から遠いところにアジトを作って勝手にやるという意味で、品質の悪いコピー品を指す。たとえばiPhoneのニセモノは山寨スマートフォンとか山寨携帯と呼ばれる。

山寨王の人柄やビジネスについては、「現代中国経営者列伝」(高口康太著、講談社刊)に詳しい。混乱しつつ高度成長する中国では、こういう怪しくもスケールの大きい起業家がたくさん登場している。今回は高口さんの取材に同行する形で、山寨王から中国のコピー品について語ってもらった。

「山寨王」ことウーさん。彼の会社で、さまざまな発明品を手にしながら語ってもらった。 「山寨王」ことウーさん。彼の会社で、さまざまな発明品を手にしながら語ってもらった。

ウーさんは深セン大学でコンピュータサイエンスを学び、オリジナルの発明もいくつもしているアイデアあふれる人物で、自分の製造会社を経営しつつ、その製造スキルを中心にいくつもの事業を行っている。

一つ目はローリスク・ローリターンな製造受託のODMビジネスで、ソフトウェア会社の奇虎360(Hi360という検索ツールバーで有名。2016年に共同でノルウェーのOpera Softwareを部分買収したことでも知られる)がカーナビ事業を展開しようとしているのに対し、ハードウェア部分の設計製造を請け負っていて、すでに300万台以上の出荷をしている。

二つ目はハイリスク・ハイリターンな自分の発明品の開発で、ハードウェアスタートアップ企業のビジネスだ。山寨もここに入るが、別にコピー品ばかり作っているわけではなく、彼のブランドのセットトップボックスやスティックPCであるMeeGoPadは日本のAmazonでも販売されている。もともと Intelに勤めていた経歴とコネクションを生かして、Intelが新しいチップを作るときのテスト品(給水タイミングを教えてくれるIoTマグカップなど)を作ったり、個人的に興味のあるARグラスなどを設計開発している。

数ヶ月以内に発売予定のARグラス2つ。ウーさんは2014年頃から、IntelのRealSenceカメラや、中国ではほとんど無名なEPSONのMOVERIOシリーズなど、多くのAR/VRグラスを研究し、自社開発を計画してきた。 数ヶ月以内に発売予定のARグラス2つ。ウーさんは2014年頃から、IntelのRealSenceカメラや、中国ではほとんど無名なEPSONのMOVERIOシリーズなど、多くのAR/VRグラスを研究し、自社開発を計画してきた。

三つ目は、中国が多く投資しているエチオピアで、現地で2万人を雇用して靴などを製造しているパートナーと一緒に、電気製品の製造ビジネスを立ち上げた。アフリカでのビジネスは難しいことが多いが、一カ月80ドルほど、10年前の深センと同じコストで労働者を雇うことができ、深センでの過酷な競争を避けられる。アフリカは大きな市場になり得るので、アフリカ人好みのデザインのものを作りたいし、エチオピアで作ったものはEU圏内に関税なしで輸出できる。難易度は高いが得られるものも大きい、ミドルリスク・ミドルリターンと言える。

四つ目が最もハイリターンの夢物語のようなビジネスで、彼はエチオピア各所に太陽電池と映画やゲームなどのスマホ用コンテンツを備えたステーションを設置している。彼の作ったスマホアプリをインストールしている人は、そのステーションでスマホの充電やコンテンツのダウンロードができる。利用は無料だが、このステーションが広く利用されことにより、彼はエチオピアで彼のプラットホームを手に入れることができる。そのアプリをベースに電子決済をしたり、ネット通販をしたりすることで、「俺はエチオピアのアリババ、ジャック・マーを目指す」というスケールの大きい話だ。

深セン政府は1000人ほどの発明家にMaker支援金を交付しているが、彼もその1000人の一人で、コピー品ばかり作っているわけではない。

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