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今さらきけない「ラズパイってなんですか?」

今さらきけない「ラズパイってなんですか?」 第1回 ラズパイってなんですか

皆さん初めまして。岩泉茂と申します。私が初めて出会ったRaspberry Pi(以下、ラズパイ)は「Raspberry Pi 2 Model B」で、登場したのは2015年でしたから、ラズパイ歴は今年で7年目を迎えます。ラズパイはその後も改良し続けられており、Raspberry Pi 2 Model Bに比べると、今販売されている「Raspberry Pi 4 Model B」は随分とパワフルになりました。Raspberry Pi 4 Model Bから派生したキーボード一体型の「Raspberry Pi 400」はWindowsに似たGUIのデスクトップでも使えますし、小型の「パソコン」と呼んでもいいほどの働きをします。

この連載では、ラズパイの基礎から始めて、ラズパイに用意されている「GPIO」を使い、いろいろな電子工作ができるようになることを目指します。その昔に電子工作をたしなんでいた人だけでなく、ラズパイって何となく面白そうだぞ、と思っている人でも楽しめる連載にしていきたいと考えています。そこでまず今回は、ラズパイについて総合的に知るための、「ラズパイの歴史」から見ていきたいと思います。

初登場は10年前

ご存じの通り、Raspberry Piはイギリスにある「ラズベリーパイ財団(Raspberry Pi Foundation)」が作り上げた、手のひらサイズのマイコンです。もともと教育に使用する目的で作られたこともあり、最新のRaspberry Pi 4 Model Bも35ドルからと、一般的なパソコンに比べれば、非常に価格を抑えた形で販売されています。

最初の「Raspberry Pi Model B」は2012年2月に発売され、大変な反響を呼びました。それ以来、細かい改良を加えて販売され続け、2021年5月までの累計販売台数は4000万台以上となっています。この種のマイコンボードとしては類を見ないヒット商品です。

左奥からRaspberry Pi 2 Model B、Raspberry Pi 3 Model B、Raspberry Pi 3 Model B+。左手前からRaspberry Pi 4 Model B、Raspberry Pi Zero W、Raspberry Pi Zero 2 左奥からRaspberry Pi 2 Model B、Raspberry Pi 3 Model B、Raspberry Pi 3 Model B+。左手前からRaspberry Pi 4 Model B、Raspberry Pi Zero W、Raspberry Pi Zero 2

低価格で販売されているRaspberry Piですが、安いからといって貧相な作りになっているようなことはありません。普通のパソコンと同じように、USBポートや有線LANポート、サウンド用の3.5mmジャックを備えるほか、最新のRaspberry Pi 4 Model Bでは1000BASE-Tの有線LANポート、USB 3.0ポートを備え、IEEE 802.11acとBluetooth 4.2による無線通信に対応しています。また、micro HDMIポートにディスプレイを接続すれば、WindowsやMacなどと同じようにGUIでデスクトップを操作することも可能です。

パソコンにない特徴がGPIOを持つこと、です。GPIOを使えば、簡単な回路とプログラムを作るだけで気温や気圧を読み込んで記録したり、ロボットを操ったり、テレビのリモコンを作ってみたりと、さまざまな機器を制御することができます。

マイコンとパソコンの違い

「Raspberry Piはマイコンである」と書きましたが、ここでの「マイコン」は「マイクロコントローラー」を指します。マイクロコントローラーとは、コンピューターの基本的な機能をひとつのチップに組み込んだものをいいますが、Raspberry Pi 4 Model Bでは「Broadcom BCM2711」という「SoC(System on a Chip)」が使われています。

SoCが一般的なパソコンで使われているCPUと違うのは、CPUコア以外に、メインメモリーや入出力関連の仕組みまで1つのチップに集約されていることです。このため、パソコンなどに使われているシステムと異なり、製品を作る際にも部品数が少なくて済むので、小型で低価格なラズパイを作ることができるわけです。

ちなみにパソコン普及の初期に登場した用語に「マイコン(マイクロコンピューター)」がありましたが、今では「マイコン」というと、マイクロコントローラーを意味することが多くなっています。

ラズパイの種類

これまで販売されてきたラズパイですが、登場年月順にまとめると以下のようになります。

  • Raspberry Pi Model B(2012年2月)
  • Raspberry Pi Model A(2013年2月)
  • Raspberry Pi Model B+(2014年7月)
  • Raspberry Pi Model A+(2014年11月)
  • Raspberry Pi 2 Model B(2015年2月)
  • Raspberry Pi Zero(2015年11月)
  • Raspberry Pi 3 Model B(2016年2月)
  • Raspberry Pi 2 Model B V1.2(2016年7月)
  • Raspberry Pi Zero W(2017年2月)
  • Raspberry Pi Zero WH(2018年1月)
  • Raspberry Pi 3 Model B+(2018年3月)
  • Raspberry Pi 3 Model A+(2018年11月)
  • Raspberry Pi 4 Model B(2019年6月)
  • Raspberry Pi Zero 2 W(2021年10月) 

ずらっと並べるといろいろな種類がありますね。ラズパイのネーミングで「無印」「2」「3」「4」となっているのは、数字が大きいほど新しいバージョンであることは分かりますが、このほかにも

  • Model B
  • Model A
  • Zero

の3タイプがあります。

「Model B」は最初に発売されたRaspberry Pi Model Bから引き継がれているサイズで作られているラズパイです。「Model A」は、Model Bの3分の2程の大きさとなるラズパイで、有線LANポートが削除されているほか、USBポートも1ポートしかありません。「Zero」は、登場当初「5ドルマイコン」と呼ばれるほどの低価格で発売されたラズパイで、イギリスでは雑誌の付録になったこともありました。かなり小型のラズパイで、mini HDMIポートとMicro USBポートを備えており、Model Bよりもぎゅっと凝縮された作りになっています。

また上にあげたモデル以外にも、他の製品への組み込み向けとして作られている「Compute Module」や、さらに小型の「Raspberry Pi Pico」があります。

ラズパイに実装されているチップ類

ラズパイのプリント基板の両面には以下のようなチップが取り付けられています。Raspberry Pi 4 Model Bを例に挙げると以下のようになります。

・SoC

SoCとは「System on Chip」の略称で、CPUやGPU、USBコントローラーなど、主要なパーツがここに格納されています。Raspberry Pi 3 Model B+は「Broadcom BCM2837B0」を採用しており、CPUコアであるARM Cortex-A53は1.4GHzで動作するのに対して、最新のRaspberry Pi 4 Model BにはBroadcom BCM2711が採用されており、CPUコアである「ARM Cortex-A72」は1.5GHzで動作します。

・ディスプレイシリアルインターフェース(DSI)

DSIを持つ液晶ディスプレイなどを接続するポートです。基板上にも「DISPLAY」の文字が見えます。

・電源ポート

USB Type-Cの形状のポートが用意されており、電源にはUSB Type-C対応ケーブルを使います。電圧は5Vで、2~3Aを給電できるACアダプターを利用しましょう。

・micro HDMIポート

HDMI対応のテレビや液晶ディスプレイなど、外部ディスプレイと接続して利用します。2基あるので2つのディスプレイに表示可能です。1つだけ利用する際は、正面左のポートを使います。なおRaspberry Pi 4 Model Bよりも前のモデルではフルサイズのHDMIポートでした。

・カメラシリアルインターフェース(CSI)

ラズパイ専用のカメラモジュールが発売されており、これを接続するために使います。基板上にも「CAMERA」と書いてあります。

・コンポジット出力

アナログのコンポジットビデオ出力のほか、オーディオポートとしても使います。コンポジットビデオ出力として使う場合は、映像+左右音声の3分岐ケーブルが必要です。

・有線LANポート

有線LANのコネクターをここに差して使います。1000Base-Tに対応しています。

・USBポート

USBポートが4ポート実装されています。USB 2.0×2とUSB 3.0×2があります。青いポートがUSB 3.0対応ポートです。

・GPIO(General Purpose Input/Output)

デジタル信号の入出力を行える端子で、ここを利用してデバイスを接続します。

・LED

赤と緑のLEDが取り付けられており、ラズパイに電源が接続されていると赤いLEDが点灯し、動作しているときには緑色のLEDが点滅します。なおRaspberry Pi Zeroは緑のみです。

・MicroSDカードスロット

本体背面にMicroSDカードスロットが用意されています。OSなどのストレージとして利用します。

・無線用のアンテナ

無線LANおよびBluetoothで使うアンテナです。

・メモリー

Raspberry Piで利用するメモリーチップです。Raspberry Pi 4Model Bでは1GB、2GB、4GB、8GBと、搭載するメモリー量に合わせて4種類が発売されています。

・無線チップ

Raspberry Pi 4 Model Bでは無線LANおよびBluetoothに対応しています。

Raspberry Pi 4 Model Bの表側 Raspberry Pi 4 Model Bの表側

ラズパイを購入するには

ラズパイですが、秋葉原にある電子パーツ店やインターネットのECサイトなどで購入できます。Amazonでも入手可能です。ただし店舗によって価格にかなりばらつきがありますから、よく検討してから購入するようにしたいものです。

ラズパイをオンラインで購入できる代表的なECサイトを挙げておきます。

・Amazon
http://www.amazon.co.jp/

・RSコンポーネンツ
https://jp.rs-online.com/web/

・秋月電子通商
http://akizukidenshi.com/

・スイッチサイエンス
https://www.switch-science.com/

・せんごくネット通販
http://www.sengoku.co.jp/

・マルツオンライン
http://www.marutsu.co.jp/

・Raspberry Pi Shop(KSY)
https://raspberry-pi.ksyic.com/

ECサイト以外にも、秋月電子通商や千石電商、マルツといったお店では、リアルの店舗を訪ねて直接購入することも可能です。実店舗で購入するメリットは何と言っても製品をすぐに手にすることができる、というところでしょうか。ただしお店に行くまでの交通費や店舗販売価格を考えると、ECサイトの方が結果的に安かった、ということもままあります。

なお、新しいラズパイが発表されたときは、当初販売されるのは海外のネットショップのみなので、いち早く手に入れたいという場合は、Adafruitのようなショップ経由で購入することになります。

ただし無線LAN機能がある製品については、日本でその製品を動作させる際にはいわゆる「技術基準適合証明(技適)」が必要で、これを通ったものでないと利用できないことに注意しましょう。このためラズベリーパイ財団があるイギリスやアメリカで発売されても、日本ではかなり遅れて発売することになるのです。ただし今は「技適未取得機器を用いた実験等の特例制度(https://exp-sp.denpa.soumu.go.jp/public/)」があり、申請すると180日以内であれば技適を通っていない製品でも使うことができます。

ラズパイについての概要はお分かりいただけたでしょうか。次回はラズパイを動かすために必要なデバイスについて解説していきます。

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