Dig up the underground「プロダクト一機一会」by 松崎順一
今でも日本のリビングに似合うシックなたたずまいのコンポーネントステレオ「YAMAHA NATURAL SOUND COMPACT COMPONET SYSTEM AST-C20(TIFFANY)」
桜も既に散り、一年で一番気候の良い季節になってきた現在もこまめにいろいろな場所を回っている。やはり面白いものと出会うのは、インターネットの情報よりもどれだけ足を使ったかで決まると思っている。確かに情報はネットでも入手はできるが、リアルなもの、それも現在市販されていないものはネット社会の現代でも足で稼ぐしかないのである。そんな中で発掘したのが、1980年代後半にヤマハが発売した「AST-C20」というコンポーネントステレオだ。
ヤマハは過去にマリオ・ベリーニの「TC-800」というカセットデッキを紹介したことがある。こちらもデザイン性が大変高かった製品だが今回紹介するAST-C20もそれに劣らない、今見ても美しいたたずまい(という表現が似合う)のコンポーネントだ。そしてAST-C20は“TIFFANY”と呼ばれるシリーズの中堅機種になる。下位には「AST-C10」、上位機種には「AST-C30」がある。C30のスピーカーは特に秀悦なデザインで、当時スピーカーだけ欲しいと思った製品だった。後で分かったことだがデザインはGKデザイン*だった。GKデザインと言えばパイオニアの初期のラジカセRKシリーズの設計/デザインで知っていたがこちらも素晴らしい。
*GKデザイン:世界的に知られるインダストリアルデザイン会社。ヤマハでは楽器や家具、オートバイ、オーディオ製品のデザインを手掛けている。
では本体を見てみよう。基本はCD/Wカセット/チューナーの本体と、取り外しが可能なスピーカーの3ピースで構成されている。本当は専用リモコンもあるのだが今回は付いていなかった。
まず本体のカラーだが、当時家電で流行した梨地でしっくいのようなグレートーンはとても落ち着いていて、今見ても日本のリビングに溶け込む感じだ。
正面のパネルも整然とレイアウトされていて気持ち良い。
液晶はオレンジでこちらも当時流行った色だ。
本体上面中央はCDプレーヤー部分があり、その両脇は移動用のハンドルという構造になっている。
ポータブルではないので移動することはめったにないと思うが、重量はスピーカーを入れると13kgもあり、ずっしり重さを感じる。
スピーカーは単体で置くことも可能だが、専用金具で本体脇に装着することができる。
Wカセットは本体中央にトレーがあり、A/B共オートリバース仕様になっている。
背面にはアンテナ端子や入出力端子などがあり便利だ。そしてスピーカーは専用のコードで接続する仕様になっている。
実際にCDをかけて聞いてみると重低音も程よく広帯域でバランスのとれた音はナチュラルサウンドを体感できた。
「YAMAHA NATURAL SOUND COMPACT COMPONET SYSTEM AST-C20(TIFFANY)」
発売時期: 1989年
1989年に起きた主な出来事
- 「昭和」から「平成」に改元
- 任天堂「ゲームボーイ」発売
- 映画『魔女の宅急便』公開